五時過ぎでもう暮れきって宵に移行しつつある空の下、街道を行けば、車に引かれて前から滑ってくる風が肌に寒くて、服の内で背のほうに鳥肌が立っているのがわかった。裏路に入ると空気の流れが途端に収まる。乱れのない快晴の空だったらしいが、折々にすれ違う対向者の顔の造形は埋没し、視線がどこに向いているのかさえ見えない道の暗さである。
帰りの夜道で振り向くと、東の空の丘の近くに掛かった月の、満月を過ぎて右上がほんの僅かに欠けはじめていた。空はそれで明るく、変わらず雲もないようで、頭上に見える星の合間で飛行機が、赤と白の色味を辛うじて見分けられる小さな光をかわるがわるに点滅させる。こちらの歩みに添って流れていく左右の建物の、そのゆっくりとした移行に合わせて、星と星のなかを下っていく。