2018/1/7, Sun.

 まだ明けていない深夜に一度目を覚ましたのだが、その時携帯電話を見ると、三時三八分だったような覚えがある。数日前のように、脚の先のほうがひどく冷えているという感覚があった。横向きになって脚を折り、上体のほうに引き寄せつつ、身体を抱くようにしたり、また、冷えを我慢しながら仰向けにひらいて、白隠禅師に倣って軟酥の法=ボディスキャン(そしておそらく、ヨガの「死者のポーズ」もこれと大方同じものではないか)を試みるのだが、今度は一向に冷えが解体されていかないので、仕方ないと薬を飲むことにした。スルピリドロラゼパムをそれぞれ一錠ずつ飲むと、すぐに寝付くことができたようである。
 それまでにも覚めたような覚えがあるのだが、最終的な起床は一〇時四〇分頃だったと思われる(睡眠は一一時間ほどになったはずだが、これほど眠ったのは相当に久しぶりのことである)。窓を叩く音がして、覚醒したのだ。意識を取り戻してからも、すぐに動けずに伏したままでいると、ふたたび窓ガラスが叩かれたので、カーテンをひらいた。上体を起こすと、外に父親が笑って立っており(こちらからはやや見下ろす形になる)、開けてくれと言うので、寝惚けた頭で窓をひらくと、玄関を開けてくれと言い直された。おそらく自治会の役でどこかそのあたりに出かけていたのだろうが、鍵を持っていくのを忘れたらしかった。そういうことかと正気付いて布団を抜け出し、上階に行って玄関の鍵を解除した。頭がぼさぼさだったので、そのまま洗面所に入って水を使って少々撫でつけておく。
 すぐに食事に入ったのだったと思う。ものを食べながら新聞をひらきはしたが、記事の見出しを追うだけで、ここではまだ読む気にならなかったのではないか。食器を片付けて風呂も洗うと、白湯を持って自室に戻った。それからコンピューターを立ち上げて、調べ物に入った。調べるのは勿論、ここ最近のこちらが苦しめられた件についてで、まず念頭にあったこととしては、前夜、食事を取っている時や風呂に入っている途中などに、身体をじっと静止させていると心拍が上がって身の奥から不安が滲み出てきて、身体のなかの諸部分に広がってざわめきはじめる、ということが観察されていたのだ。精神のみならず、肉体までも自分はじっとしていられずに動きすぎてしまうのか、などと思ったのだが、しかし今回の件が起こるまでは、むしろじっと静止しているのは得意だったはずである(瞑想だって習慣的にやっていたのだから)。身体を静止させていると、パニック発作のトラウマに脅かされるのだろうかとこの時は思ったのだが、統合失調症の治療薬(こちらの服用しているスルピリド統合失調症にも用いられる)の副作用として、「アカシジア」という静座不能症状があるということなので、これの軽度のものなのかもしれない。
 また、自分が結局のところ統合失調症になりかけているのか、それとも今回の件はパニック障害の再発なのかという点も気になるところである。検索して出てきたサイトによると、統合失調症の初期症状として、次のものが紹介されていた。

1、 自分の意思によらずに、体験そのものが勝手に生じてくると感じられる。その中に、自生思考(とりとめもない考えが次々と浮かんできて、まとまらなくなる。考えが自然に出てくる。連想がつながっていく)、自生視覚(明瞭な視覚的イメージが自然に浮かんでくる)、自生記憶想起(忘れてしまった些細な体験が次々と思い出される)、自生内言(心の中に度々ハッキリした言葉がフッと浮かんでくる)等により、「集中できない」「邪魔される」と感じられる。
2、 自分が注意を向けている事以外の、様々な些細な音や、人の動きや風景、自分の身体感覚や身体の動き等を、意図しないのに気付いてしまう。そのことで容易に注意がそがれてしまう。「どうしてこんなことが気になるのか」と困惑していたものが、「気が散る」「集中できない」と感じる。
3、 どことなくまわりから見られている感じがする。この体験は人込みの中で感じられることもあるが、自室に一人でいる場合でも生じる。気配を感じることもある。
4、 何かが差し迫っているようで緊張してしまうが、何故そんな気分になるのか分からなくて戸惑ってしまう。緊迫が勝手に起こり、それに対して困惑するような症状。
 (第7回 「統合失調症の初期症状」 http://www.oe-hospital.or.jp/column/column7.html

 このうち一番の「自生思考」および「自生内言」は、完全にこちらが持ち合わせている症状である。また、二番の症状も不安にやられきっていた数日前にはあったと思う。三番はないが、四番は不安障害患者の常態である。統合失調症の付随症状としてパニック発作があるとも言うので、結局のところどちらが主なのかは決定できず、自分の場合、両方が結びついていると考えるべきなのではないか。少なくとも、完全な「統合失調症」とは言えないにしても、こちらの精神が統合失調的なものになってしまっているのは確かでないか。

 何故このような症状が起こるのか、完全には分かっていませんが、理解しやすい仮説をお話ししましょう。私達は周囲の雑踏の中から、相手の声を聞き分ける事が出来ます(カクテルパーティー現象といいます)が、その際の現象を例にとって説明します。相手の話を聞こうという集中力が適度であれば良いのですが、集中し過ぎると、他の様々な音にも注意が向いてしまい(注意集中力が高まり過ぎている状態を過覚醒といいます)、何を聞いて良いのか優先順位が分からなくなり、かえって聞き分けは困難になります。これは脳内のドーパミンという物質を介して働く神経が、過覚醒になっているからです。また雑踏の他の音にフィルターをかけて意識しない様にし、相手の声を聞き分けられる様になっていますが、このフィルターが失調していると他のいろんな音が入って来てしまい集中できなくなります。このように急性期の統合失調症の症状は、ドーパミン仮説やフィルター理論で説明されます。
 (第9回 「急性期治療のポイント」 http://www.oe-hospital.or.jp/column/column9.html

 「過覚醒」というのは、こちらが体験した

 以上はこの当日に記したもので、コンピューターの画面を目の前にしているとやはり神経・精神が乱れる感じがあったので、しばらくなるべくコンピューターから離れることにして、このあとのことは紙のノートに記したのだった。以下にそれを引用する。

  • ドーパミン過剰→ヨガ及び瞑想の深呼吸のためか。
  • 1時頃上へ。父親ソファ。洗濯物入れる。タオルたたみ、アイロンかけ。ラジオ、爆笑問題
  • 昼食。煮物残り。豆腐。卵。この時、新聞、阪大の入試ミス。途中まで。
  • ギター。
  • 書き抜き。
  • 運動。肉体をもう少したくましく。
  • 日記("水星"反復されて集中できない)。五時前、上へ。料理。小沢健二。野菜スープ。ゴボウ。エノキダケ。玉ねぎ。人参。ダイコン細い。(……)音楽とめているあいだに、炒め、煮こむ。一方でマーボー豆腐も。六時前、仕上がる。
  • 戻って日記。今日の分。統合失調症について書いているとまた不安に。一度、頭がぐらりと来た。どうも不安が高いので、薬を追加。それでベッドでボディスキャン。
  • 食事へ。大河ドラマ。なんとなく頭が落ちつかない、乱れているような。飯は美味いが。入浴。入浴中、髪洗う。シャワーの音。イメージ連想。頭や身体をこする音も耳につく。これは本当に、そのうち幻覚が見えるかもしれないと思う。
  • 言語が自走しようが、多少の幻覚、幻聴があろうが、それに適応できれば良いのだが、今は不安がついてくる。
  • 室へ。モニターの前に来ると(見ると)、やはり妙な感じ。調べると、ブルーライトドーパミンを増やすとか。一旦使わないことに。ブルーライト用のメガネを入手したい。
  • 思えば、このような症状はパニック障害の最初期にもあった(休学中)。あの頃に戻ったようだ。
  • それでPCから離れる。しばらくパソコンに触れない生活をしてみることに。そのあいだの日記は紙のノートを使う。
  • 日記を書いたあと、古井由吉『白髪の唄』を読みだしたが、そのうちに眠っていた。11時半。あきらめて就床。