2018/1/30, Tue.

 一度覚めると、一時四五分頃だった。例によって心身には覚醒感、不安な感じがあった。薬を服用しながらも、三時頃まで眠れなかったが、その後、一応寝付いたようで、五時頃に一度目を覚まし、さらに眠って七時半が最終的な目覚めとなった。八時頃まで腰をもぞもぞと動かしながら寝床に留まって、それから上階に行く。
 上がって行き、母親に挨拶をする。食事は、前夜の鯖の残りや汁物である。前日から始めたヴィパッサナー瞑想の行動の実況中継が、早くも根付いてきたようで、鯖を皿に取り分けて、電子レンジのなかに入れ、加熱のボタンを押すあいだなども、いちいち自分の動作を追っていた。食事を取り、食器を洗うと白湯を持って下階に戻った。
 コンピューターを点け、今日の記事を作成すると、早々と読書に入った。ベッドの上に乗り、窓から射しこんでくる陽光を浴びながら、『後藤明生コレクション 4 後期』を音読する。この日は、無声音ではなくて、小さく声を出して読んでみることにした。そうして最後まで読み終えたのだが、この時、何か爽やかな気分になっていたので、実際音読というのは脳に良い効果があるのではないかと思う。ありがたいことに、もっと本を読もうという意欲的な気持ちになっていたので、次の本として、トリスタン・グーリー/屋代通子訳『日常を探検に変える ナチュラル・エクスプローラーのすすめ』を選んだ。そうしてさらに音読を続けて、正午前に至り、この本も早くも六〇頁ほどまで読み進めることができた。この日は既に、三時間弱も読書をすることができたわけである。
 落着いた気分は続いていた。そのままtofubeatsの音楽を流して運動に入る。運動のあいだもやはり、「伸ばしている、伸ばしている」とか、「呼吸、呼吸」、「船のポーズ、船のポーズ」といった具合で、自分が今行っている動作や姿勢を実況中継し、一方で歌を口ずさんだりもしていた。二〇分少々で身体をほぐし終えると、そのままちょっと歌を歌う。このあいだもやはり、歌っているということを自覚したり、喉の感覚に意識を寄せたりと、現在に集中するようにした。そうしていると、確かに不安とか余計な思考というものは、ほとんど出てこないようである。
 そうして、一時前から書き物に入った。文を綴りながら折々に呼吸を意識していたところ、以前と概ね同じような感覚で日記を書くことができたと思う。書いているあいだ、時間の流れ方もゆったりとした感じに思われ、一時間半で現在時点まで追いつけることができた。今は、二時二三分になっている。
 それで上階に上がり、ゆで卵などを食べてエネルギーを補給した。食事を終えると三時に至っており、思いのほかにもう時間がなかったのだが、アイロン掛けをすることにして、自分のシャツとハンカチを何枚か、皺を伸ばした(エプロンは、時間がなくて扱うことができなかった)。そうして下階に戻ると歯磨きをして服を着替え、出勤に向かう。老人のようだが、貼りつけられるタイプのホットカイロを背中に貼って、マスクを一枚持って出発である。母親は外出していたが、居間のカーテンは閉めなかった。五時頃には帰ってくるという話だったので、もう今の時期ならば五時でもそこまで暗くはならないだろうと判断したのだ。
 時間が遅くなってしまったため、徒歩ではなく最寄り駅から電車に乗ることにした。坂へ向かっていると、ちょうどその坂から小学生の女児が下りて来て、こちらとすれ違いながら公営住宅のほうへ入っていく。坂を上るあいだは、妙に呼吸が苦しいような感じがした。街道に出ると、何やら道路工事を行っている。交通整理員の人に目配せをすると、こちらから、と横断歩道の位置よりも少し離れたほうに誘導されたので、はい、と受けて通りを渡った。ホームに入り、西から来る陽射しを受けながら電車を待つ。
 先頭の車両の一番手前側に乗ると、近くの席にちょうど(……)が座っていた。到着すると横に来て、挨拶を掛けてきたので返し、降車する。彼は一人ですたすたと先に行く。そのあとからゆっくりと階段を下りて行く(……)。
 勤務である。勤務中もヴィパッサナー瞑想の実況中継を意識したところ、余計な思考はわりあいに抑えられて、概ね集中して取り組むことができたようである。(……)
 電車内では席に就き、瞑目して到着を待つ。降りるとホームを辿って駅を抜けるが、帰路の道中の記憶はこれといって残っていない。帰り着くとストーブの前で身体を温めてから手を洗い、下階に下りた。服を着替え、シャツにつけていたホットカイロを肌着につけかえて背に保持し、そうして上階に行き、食事である。夕食のおかずは肉料理、ほか、醤油風味の野菜の汁物や、トマトやキャベツやベビーリーフの混ざったサラダである。
 夕食後、風呂に入ったのが一一時頃ではなかったか。身体の隅から隅まで、丹念に束子で肌を擦り、出てくると、湯たんぽを用意した。その間、母親が録画した『マツコの知らない世界』を見ていたので、こちらもちょっと目を向けた。紙袋収集家の人が出ており、袋の口を鼻に寄せてぱたぱたやりながら匂いを嗅いだりしているのを見て、少々笑った。切りの良いところで自室に帰り、湯たんぽを布団のなかに仕込んでおくと、歯磨きをして、眠る前の読書を始めた。トリスタン・グーリー/屋代通子訳『日常を探検に変える ナチュラル・エクスプローラーのすすめ』である。日付の変わる前から一時間弱読んで、就床した。