この日は一日中、だらだらと不活性な状態で過ごした日で(今の自分はそもそも何をしていても精神そのものが不活性であるようにも思われるのだが)、特に印象深いことも残っていない。辛うじて行った活動としては、朝晩に一五分ずつの瞑想を行ったこと(自分に何らかの恩恵があるかどうか不明だが、ひとまず以前のように起床後と就床前の瞑想をふたたび習慣にしてみようかと考えている)、午後三時一五分から五時半まで金子薫『双子は驢馬に跨がって』を読んだこと、夜半に音楽を四〇分ほど聞いたこと、その程度である。音楽は例によってKeith Jarrett Trioの"All The Things You Are"(『Standards, Vol.1』)に、八九年録音のライブ盤である『Tribute』から、"Just In Time"、"Ballad Of The Sad Young Men"、"All The Things You Are"、"It's Easy To Remember"の四曲である。ヘッドフォンをつけて瞑目しているあいだ、瞼の裏の視界に靄のような淡い光のようなものが蠢くのが見えた。これは丹光と呼ばれるもので、以前瞑想を習慣的に行っていた時には毎度のように目にしており、これが出てきたというのは変性意識がある程度深まった証、要は何らかの脳内物質なり脳波なりが発生している証としてこちらは捉えていたのだが、今回これが見えたからといって、かつてのように意識が研ぎ澄まされるとか、液体的な心地良さが生まれるとかそういったことはなかった。脳内物質の分泌に異常がないのだとしても、受容体のほうがどうかなっているというそういう可能性はあるのかもしれない。