夜よりもしめやかな昼間のなかで
夢よりもおぼろげな現のなかへ
あれがくると 女の歌うたい
きみの声がでなくなる
ひよめきほどに頼りない喉や
風と髪とにいつも甘える耳 それら
そっくりそのままで 女の歌うたい
きみの声がでなくなる
海にむかって歌ってはいけない
空にむかってはなおさらいいけない
ぼくらとかけはなれたスピードで
土や木や水に独裁がくると ぼくら
そのかたちをみて身ぶるいして
そのかたちを見きわめて狙い定めよう
ただ独裁 あれがくると 女の歌うたい
きみの声がでなくなる。
(『岩田宏詩集成』書肆山田、二〇一四年、42~43; 「独裁」; 『独裁』)*
夜は戦争よりも長いんだ
政府もあなたも徹底的に一人で
朝ほど痛い時間はほかに絶対ないんだ
そのことを百回あるいは
千回思って絶望しなさい
あなたは睡眠薬を二百錠飲むつもりだが
薬より口あたりのわるいことばを
あなたの穴という穴に詰めこむのが
ぼくのほんとうの望みなんだ
(57; 「むすめに」; 『いやな唄』)*
あなたは夜の道路のまんなかで
いたずらにぼくの名を呼び
ほほえみながら揺れていた
あなたを揺するほど丈夫な
綱のようなものを
ぼくは見たい
(78; 「やさしい酔いどれ」; 『いやな唄』)
一二時半まで糞のような寝坊。起きて上階へ。母親は健康診断で不在。冷蔵庫を覗くと赤飯と茄子の炒め物があったので、赤飯をまず電子レンジへ。温めているあいだにトイレに行って用を足す。出てくると続いて茄子も温め、電子レンジの前で両手を天に向けて伸ばし上げて、背中の筋を和らげながら待つ。加熱が終わると卓へ。今日は新聞は休みである。黙々とものを食い、抗鬱剤を服用したあと食器を洗って、そのまま風呂も洗う。雨で増水した沢の響きが風呂場にいても居間にいても空間の外縁についてくる。風呂を洗ったあとは居間に戻って、アイロン掛け。時鳥の鳴き声が遠くから響いてくる。自分のシャツとハンカチを一枚掛けると、アイロン台を元の場所に戻して居間をあとにした。下階に下りて自室に入り、コンピューターを点ける。まもなく母親が帰ってきた気配が上階に生まれたが、顔を見せには行かず、Evernoteで前日の記事の記録を付ける。Twitterにアクセスすると、インターフェイスが変更されていて、どうも以前のものと比べて使いづらいような感じだ。しかし旧来版に戻すことはどうやら出来ないらしい。一時二〇分から日記を書きはじめた。流した音楽はいつもの通り、FISHMANS『Oh! Mountain』。前日の記事はもう前日のうちに大方書いてあったのですぐに仕上がり、この日の記事もここまで書くと一時三六分。今日は労働が長い。面倒臭い。
前日の記事をインターネットに発表したあと、Mさんのブログを二日分。それからさらに、「記憶」記事音読。そうすると二時半。そろそろ出かける準備をしなければならないが、三時まで三〇分間、寝床で休みながら本を読むことに。小原雅博『東大白熱ゼミ 国際政治の授業』である。三〇分間読み、三時ちょうどになったところで中断して、上階へ。食事を取る。母親がパンを買ってきてくれていたので、そのなかからクリームパンを頂くことに。そのほか、サラダの残りやゆで卵。さっさと食って下階に戻ると仕事着に着替え、歯磨きをして支度は完了。上に上がっていくと、母親が送っていこうかと言う。雨のなか歩くのも面倒臭かったので言葉に甘えることに。三時半に出ると。現在は三時二五分。テレビは何やらサスペンス的なドラマらしきものを流していて、母親はそれをソファに就いて見ていた。そうして三時半を迎えてそろそろ行くことに。傘を差して家の外に出、母親が駐車場から出した車の助手席に入る。
道路工事が各所で盛んに行われている。東へ走り、青梅駅前に入って、細道に入ったところで下ろしてもらう。そうして職場へ。傘をちょっとばさばさやってから職場に入ると、室長が、有難う、申し訳ない、というようなニュアンスの表情で頷いてみせるので笑った。今日は三時限である。座席表を見てから奥のスペースに行ってロッカーに荷物を入れ、準備を始めた。準備はおおよそ、高校生の現代文の文章を読んでおくことに費やされた。この予習の時間は現在、すべては給料には含まれておらず、一〇分間だけ事務給として貰っているのだが、実際にはもっと長く予習しているわけで、その分も事務給として貰えないかどうか交渉しようかと考えている。現代文のワークには、桑原武夫や大岡信の文章が取り上げられていた。
そうして一時限目。相手は小学生三人。(……)に(……)の姉弟と、今日初めて当たった(……)さん。(……)姉弟は相変わらず、あまり進みが良くないので難しい。如何に進めさせるかが難しいが、基本的にこちらはあまりうるさいことは言わずに相手のペースに合わせてしまうので、今日の授業もあまり進まなかった。中学生を相手にするよりもそのあたり、やりづらいところである。(……)さんは対照的に、自主的に進めていってくれるタイプの生徒だったので、わりあいにやりやすかったと思う。こちらが手伝ったのは、国語で漢字や言葉がわからなかった時くらい。(……)姉弟はノートを書かせるのも難しい。これが九〇分間、一つの科目だったらまだやりやすいと思うのだが、国語と算数が半々なのでそれもまた難しくなっている要素だ。四五分など、わりあいにすぐに経ってしまうのだ。
二時限目は、(……)さん(中三・国語)、(……)くん(小六・国語)、(……)くん(中三・英語)。(……)さんがあまり捗らなかったほかは特段の問題はなかったと思う。彼女は最初の例題からじっくり解説していった方が良いだろう。(……)くんは相変わらず意欲的。今日扱ったのは進行形。時間に余裕があったので、さらに復習もほんの少しだけ扱った。
三時限目は、(……)(高三・現代文)、(……)くん(中三・国語)、(……)くん(中三・国語)。(……)に対しては、予習しておいたこともあってわりと綿密な指導が出来たように思う。ノートには桑原武夫の文章の要約を書いてもらった。(……)くんは優秀で、読んだ文章を口頭で要約させてみてもうまくまとめるし、筆者の意見、結論部分も捉えられている。ノートには口頭で確認したそれらの要約や意見を記してもらった。(……)くんはと言えば、彼もわりあいにやりやすい生徒である。ノートも充実させることが出来た。
そうして授業終了。いくらか余裕を持って終わることが出来、従って終わったあとは入り口の近くで生徒の見送りもしっかり出来た。それから片付けて、いつもだったら(……)さんに記録をチェックしてもらうのだが、今日は三時限で多かったし、特に問題のある生徒もいなかったので良いかと払って、退勤することに。それでバッグを持って歩き出すと、(……)先生が前にいて、お疲れ様ですと交わし合う。それから散髪した髪の毛について触れられた。素敵ですと言われるので、有難うございますと頬を綻ばせる。そうして入口の方へ行き、靴を履いたところで、バッグのなかで携帯が震えたので見れば、母親からで、迎えに行くから歩いていなと言う。了解と送って退勤し、駅前から表通りに出て西へ歩く。途中、通りを渡って自販機に寄り、一六〇円のコカ・コーラ・ゼロを買ってバッグに入れた。それからもう一度通りを北側に渡り直して歩いていき、元市民会館の横で母親と合流した。助手席に乗車。母親はパジャマ姿で顔にはマスクをつけていた。パジャマで外に出たらちょうど誰か人がいて、見られるのが嫌だった、などと話す。西へ走って帰宅。途中、ふたたび携帯が震えたので見ると、教室からで、翌日は三時限から二時限に減らす代わりに翌々日に一時限入ってくれないかというものだったので、了承した。三時限は長くて疲れるので、正直避けたかったのだ。しかし来週以降は三時限を担当する日も増えてくるだろう……。
帰宅。家のなかに入ると父親がおり、雨は降っているのかと訊くのでもう降っていないと答えた。ワイシャツを脱いで洗面所の籠に丸めて入れておき、下階へ。着替えて上階へ。食事。小松菜の肉巻きやジャガイモの煮物などをおかずにして米を食べる。肉巻きは、小松菜が茹でる時間が足りなくて固くなってしまったと聞いていた通り、なかなか噛み切れないものだった。小松菜を前歯で噛んで、巻き付いている肉のあいだから引っ張り出し、そちらを先にもしゃもしゃよく咀嚼して食べてしまい、それから肉を食べる。コーラを飲みながらの食事。テレビはスポーツニュース。その後、『クローズアップ現代+』で昨年の今頃にあったオウム真理教の団員一三人の死刑執行の裏側で何があったのか、というような特集が流されはじめたが、父親がほかに回していいよと言ったのを受けて母親が番組を変えてしまった。変えられた先の番組はしかし、『ガイアの夜明け』である。メルカリが中高年に普及しはじめている、会社側もそのために色々な施策を試みているという話だった。食後、薬を飲んで皿を洗うと、下着を持ってソファに就き、休みながら番組を少々眺めた。メルカリはヤマト運輸と提携して、中高年層をターゲットにメルカリ教室というものをひらいているらしい。また、ヤマトには家事代行サービスと言うか、家を掃除するサービスがあるらしいのだが、それを担当する従業員にもメルカリの使い方を教え、現場に行った際に、その家の不用品をメルカリに出すようアドバイスするようなサービスも新たに始めて、さらなる顧客の拡大を狙っているようだった。
その後、入浴。上がってくると自室へ。一一時から書抜き、柴崎聰編『石原吉郎セレクション』。いくつかTwitterにも投稿。その後、インターネット記事。星浩「火だるま行革に突き進んだ橋本政権の成果と挫折 平成政治の興亡 私が見た権力者たち(8)」(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019011800002.html)と結城剛志「最低賃金2000円以上が可能な経済学的な理由<ゼロから始める経済学・第4回>」(https://hbol.jp/190204)の二つを読んで零時を越える。零時半からベッドに移って読書。小原雅博『東大白熱ゼミ 国際政治の授業』。あまり記憶がよく残っていないが、最後の方は多分自ずと眠っていたのだと思う。読書時間の終了の記録は三時三四分となっている。そうして就床した。
・作文
13:19 - 13:36 = 17分
・読書
13:55 - 14:09 = 14分
14:09 - 14:26 = 17分
14:30 - 15:00 = 30分
23:05 - 23:37 = 32分
23:40 - 24:12 = 32分
24:32 - 27:34 = (1時間引いて)2時間2分
計: 4時間7分
- 「わたしたちが塩の柱になるとき」: 2019-07-11「保健所の番犬となる一生に一度は愛を知りたいだけだ」; 2019-07-12「異国語の辞典をめくる今日までの日々を名づける一語が欲しい」
- 「記憶」: 6 - 11
- 小原雅博『東大白熱ゼミ 国際政治の授業』: 86 - 190
- 柴崎聰編『石原吉郎セレクション』岩波現代文庫、二〇一六年、書抜き
- 星浩「火だるま行革に突き進んだ橋本政権の成果と挫折 平成政治の興亡 私が見た権力者たち(8)」(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019011800002.html)
- 結城剛志「最低賃金2000円以上が可能な経済学的な理由<ゼロから始める経済学・第4回>」(https://hbol.jp/190204)
・睡眠
? - 12:30 = ?
・音楽
- FISHMANS『Oh! Mountain』
- Frank Amsallem『Out A Day』