2019/8/20, Tue.

 デメトリアーデは死んだが
 死ななくたって おんなじことだ
 唐がらしよりほかに
 あかいものを知らぬ愚直な国で
 両手いっぱい 裸の風を
 扼殺するようなかなしみは
 どのみちだれにも
 かかわりはないのだ
 (『石原吉郎詩集』思潮社(現代詩文庫26)、一九六九年、17~18; 「デメトリアーデは死んだが 一九五〇年ザバイカルの徒刑地で」; 『サンチョ・パンサの帰郷』)

     *

 そのとき 銃声がきこえ
 日まわりはふりかえって
 われらを見た
 ふりあげた鈍器の下のような
 不敵な静寂のなかで
 あまりにも唐突に
 世界が深くなったのだ
 見たものは 見たといえ
 われらがうずくまる
 まぎれもないそのあいだから
 火のような足あとが南へ奔[はし]り
 力つきたところに
 すでに他の男が立っている
 あざやかな悔恨のような
 ザバイカルの八月の砂地
 爪先のめりの郷愁は
 待伏せたように薙ぎたおされ
 沈黙は いきなり
 向きあわせた僧院のようだ
 (20; 「脱走 一九五〇年ザバイカルの徒刑地で」; 『サンチョ・パンサの帰郷』)


 色々と夢を見たあと、一一時過ぎに至ってようやく覚醒が確かなものとなった。眠い目を擦りながら身体を起こし、上階へ行く。父親は仕事、母親も着物リメイクの手伝いが一日あって既に不在である。書き置きに、ワカメのおにぎりが冷蔵庫のなかにあると記されてあった。それでまず洗面所に行き、顔を洗ってから冷蔵庫を開けておにぎりの二つ乗った皿を取り出し、電子レンジに突っこんだ。一分半、温めているあいだは卓で新聞を瞥見し、電子レンジがブザーを鳴らすと取りに行って、箸で千切りながらおにぎりを食った。新聞には、先日テレビのニュースでも取り上げられていたが、田島道治宮内庁初代長官が記した昭和天皇の発言に関する資料が一九日、公表されたとの報があった。それを読みながら海苔の貼られた米の塊を食べ、食べ終えると台所に移って皿をさっと洗い、それから風呂も洗った。そうして下階に戻ってくると、エアコンと扇風機を点けてコンピューターを起動させた。コンピューターの準備が整うのを待っているあいだ、手近の積み本の上に置かれていた空箱――Nさんに貰った「ひよ子のピィナンシェ」のものをずっと放置していたのだった――が目についたので、それを捨てに行くことにした。継ぎ目をひらいて平面に均しながら階段を上っていき、玄関の戸棚のなかの紙袋に折り畳んで収めておくと、戻ってきてTwitterを眺めた。それから前日の記事の記録を付け、この日の記事も作成して、早速日記を書きはじめた。音楽は流さず、窓外に広がる蟬の声を共連れとしている。
 一二時四二分まで前日の日記を作成した。それから読書。プリーモ・レーヴィ/竹山博英訳『これが人間か』。これが面白い。レーヴィはかなり真っ当なことを言っている。一時半まで。それから上階へ行って食事。豆腐やゆで卵。父親もカップラーメンの食事を取ったあとで、ソファに就いて休んでいた。こちらは食事を終えると下階に戻り、歯を磨く。歯を磨いているあいだはふたたびレーヴィの本を読む。そうして着替え。着替えてからも少々レーヴィの本を読み、そうして出発。
 便所で放尿してから玄関を抜けようとすると、父親が外から入ってきたので行ってくると告げて出発。今日も林から振る蟬の声が姦しい。しかし空は曖昧に曇っており、暑気はさほどでもなかったように思う。Nさんが庭で草取りか何かしていたが、挨拶はせずに通り過ぎた。木の間の坂道に入って上っていく。坂道の路面は前日の雨の水気が残っており、褐色の葉っぱが貼りついて帯を成している。
 駅に到着。ホームに渡って、ベンチには先客があったので先の方に行き、立ったまま手帳を取り出して眺める。林の向こうからは鴉の鳴き声が頻りに響く。電車が来ると乗り、手帳を眺め続け、青梅で降りると前日と同じようにベンチの前に立って乗り換える人々の流れをやり過ごす。そうして職場へ。
 一コマ目は(……)くん(中三・英語)、(……)さん(高三・英語)、(……)くん(中三・国語)。全体に特別問題はない。(……)くんは授業中、トイレに行くことが多いような気がするのだが、緊張しやすい性分なのだろうか。この日、トイレに行った際も、随分と焦っていたような気がした。授業中にはまたクッキーを配った。
 二コマ目は(……)くん(小四・国算)、(……)さん(小五・国算)、(……)くん(中三・英語)。(……)姉弟は相変わらずだが、この日は(……)の方が嫌いな漢字の問題をやり、僅か三つではあるけれど練習もしてくれたので良かった。しかし授業全体としてはちょっとミスしたと言うか、終了時間をちょっと過ぎてしまったし、そのわりに(……)くんのノートなど全然充実させることが出来なかった。
 それで退勤したのは六時過ぎ。この日のあとの時間は特段に印象に残っていることもないし、二一日の午後一一時前現在、やる気も全然なくて細かく書くのが面倒臭いので省略する。プリーモ・レーヴィ/竹山博英訳『これが人間か』を読み終わり、深更に至って栗原優『ナチズムとユダヤ人絶滅政策 ―ホロコーストの起源と実態―』を読みだしたということだけは記しておく。レーヴィの『これが人間か』は素晴らしい作品だった。皆が読むべきだ。


・作文
 11:53 - 12:42 = 49分
 23:06 - 24:22 = 1時間16分
 計: 2時間5分

・読書
 12:44 - 13:30 = 46分
 19:42 - 20:37 = 55分
 21:37 - 22:00 = 23分
 25:30 - ? = ?
 計: 2時間4分+?

・睡眠
 4:15 - 11:10 = 6時間55分

・音楽