2020/3/2, Mon.

 今、ドイツ人はどうすれば救われるか。どうすれば失業を逃れられるか。私は一四年間言い続けてきたが、何度でも繰り返し言おう。経済計画や産業への信用供与や国庫補助金はすべてナンセンスだ。失業から逃れられる方法はふたつしかない。ひとつ目はどんな価格でもいいから、何としても輸出を増やすこと、ふたつ目は大規模な移住政策をとることだ。これはドイツ国民の生存圏の拡大を前提条件とする。私が提案するのは二番目の方法だ。五〇年から六〇年で、まったく新しい健全な国家ができあがるだろう。しかしこれらの計画は、必要な前提条件が整ってはじめて実行に移すことができる。前提条件とは国の強化だ。ひとはもはや世界の市民であってはならない。民主主義や平和主義などありえない。民主主義がお話にならないことは誰もが知っている。民主主義は経済においても有害だ。労使協議会は兵士の協議会と同じくらい無意味だ。なぜ民主主義がこの国で可能だなどと考えられるのか。[……]ゆえに政権を掌握し、徹底的に破壊分子の考えを抑圧し、道徳的規準に沿って民衆を教育することがわれわれの仕事だ。反逆を試みる者がいれば、死刑をもって冷酷に罰しなければならない。あらゆる方法でマルクス主義を抑圧することが私の目標だ。
 (リチャード・ベッセル/大山晶訳『ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い』中公新書、二〇一五年、50~51; 一九三三年二月三日、ヒトラーの演説)



  • 一一時過ぎに目をひらいた。窓外は一面均一で真っ白な空が、なだらかに切れ目なくどこまでも繋がっている。
  • 米国の民主党の大統領候補者選びでは、バイデンがサンダースを追い上げているらしい。
  • 今日は自室に戻らず、下階からコンピューターを持ってきて緑茶を用意し、居間に留まった。郵便局からの荷物が一二時から二時のあいだに再配達されてくるということで、それを受け取らなければならなかったのだ。荷物は(……)から送られてくる『読書の日記』である。そのうちにインターフォンが鳴ったので席を立って受話器を取り、有難うございますと礼で受けておいてから玄関に出た。簡易印鑑を取ってサンダルを履き、扉を開けると、雨合羽を身につけた眼鏡の局員が立っている。受領印欄に印鑑を押しつけておき、礼を言って荷物を受け取るとなかに戻った。
  • 夕食にはエリンギに椎茸、豚のヒレ肉の炒め物を拵えた。
  • 夕刊によると新型コロナウイルスの感染者は中国国内のみで八万人を超過し、死者は全世界で三〇〇〇人を越えたと言う。そうした報を読みながら食事を取っている最中、父親が、バンドはライブとかやるのか、と訊いてきた。「(……)」の活動をしていることについて、母親から多少の話を聞いているらしい――「活動」と言ったって、こちらはただほかの皆が作った音源を聞いて偉そうなことを適当に言うだけの役割なのだが。ライブはまだわからない、とりあえず曲を作って、そのうちYoutubeにでも上げるのではないかと答えると、じゃあそれがヒットしてたくさん儲かるかな、と世俗的でくだらぬ冗談を言うので、こちらは、いやいや、と冷淡に返した。
  • 自室に帰ったあとはふたたびだらだらと、溶けるような怠惰のなかに過ごした。ここ最近の怠慢ぶりはとてつもない。日記があまりにも溜まりすぎているので、かえってやる気にならないのだ。しかしそろそろきちんと書くべきものを書かないとさすがにやばいだろうというわけで、一時一八分からこの日のことを実に簡単にメモ書きし、そのまま二〇日の記事にも取りかかって、大した内容もないくせにゆっくり綴って一時間ほどで仕事を終えた。