2020/3/11, Wed.

 (……)ヒトラーは政府における地位を確立するや、差別的な方法でユダヤ人を狙い撃ちにした。一九三三年四月初めにユダヤ人の事業に対するボイコットを行ったのち、反ユダヤの法律によりユダヤ人の雇用を制限した。一九三三年四月七日には職業官吏再建法を成立させ、「非アーリア人の公務員を退職させる」ことを取り決めた(大統領ヒンデンブルクの強い要望で、第一次世界大戦で軍務に服した者は除外された)。一九三三年秋には、ユダヤ人が舞台芸術の分野やマスメディアで働くことを禁じた。一九三四年の夏以降、ユダヤ人はもはや法的資格の取得も許されなくなった。一九三五年五月に徴兵制が導入されても、ユダヤ人はドイツ軍に所属することを禁じられた。
 さらに一九三五年の党大会のさなか、九月一五日にニュルンベルクで国会が招集され、いわゆるニュルンベルク諸法が可決された。この法、すなわちユダヤ人と非ユダヤ人の結婚および婚外性交渉を禁じた「ドイツ人の血と名誉を保護するための法」と、ユダヤ人からドイツの公民権を奪う「ドイツ国民法」は、ドイツにわずかに残されていた自由主義的で啓蒙主義的な基盤を事実上破壊した。ドイツ領域内の人々はすべて平等だとするそれまでの基本原理は、これによって廃棄された。紛れもない人種主義国家となったナチ・ドイツの法と公民権の基盤にあるのは、「ドイツ人の血の純粋性」についての似非生物学的原理と永遠の人種闘争だった。
 (リチャード・ベッセル/大山晶訳『ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い』中公新書、二〇一五年、100~101)



  • ロシアの下院で憲法改正の関連法案が審議されているところだが、そのなかで、改憲を機に現職大統領の通算任期をゼロとするという趣旨の追加提案がなされたと言う。このいかにも唐突で、プーチン大統領の強権体制をさらに強化して堅固に持続させる以外の目的を推察できない案を提出したのは、世界初の女性宇宙飛行士だったワレンチナ・テレシコワという議員であるらしい。プーチン氏は二〇〇〇年から二〇〇八年まで連続で二期を務め、その後四年を置いて二〇一二年からふたたび大統領に返り咲き、現在の大統領任期は六年なので二〇一八年から通算で四期目に入っており、二〇二四年に退陣する予定だったわけだが、そこからさらにプラスして一二年、二〇三六年まで職に留まる可能性が出てきたということだ。
  • 中国では習近平武漢に入って視察を行ったと言うが、都市の閉鎖と外出禁止が引き続く武漢住民のストレスは当然ながらかなり高くなっているようで、習近平の訪問の直前には、やはり視察で訪れた副首相だったかに向けて集合住宅地の住民が「すべて嘘だ!」というような言葉を叫んだという出来事があったらしい。