2020/4/25, Sat.

 (……)両眼に繃帯した人に向って、繃帯を通して眼をじっとこらすようにといくら元気づけたところで、その人はけっして何かを見ることはできませんからね。(……)
 (辻瑆・原田義人訳『世界文學大系 58 カフカ筑摩書房、一九六〇年、253; 『城』)



  • 八時頃に一度、現実世界に浮上したのだけれど、昨夜から始まった頭痛が左のこめかみの辺りに痼[しこ]りつづけていたので、ふたたび寝入った。そうして一〇時に再度覚醒。この時頭痛はほとんど消え去っていたが、正午直前の今は復活しつつある。天気は晴れ晴れしく、乾いて摩擦の強い陽光をしばらく顔に浴びて肌に染みこませる。
  • 筍をまた採ったと言うので、先日同様天麩羅を揚げた。
  • 読売新聞では芥川喜好という美術担当編集委員の人が「時の余白に」という小文を月に一回連載していたのだが、それがここで終了するとのことだった。四〇年続いたと言う。三二歳の時に始めて、現在七二歳に至っている。凄いものだ。最後の記事では秋山祐徳太子という美術家の名が取り上げられていた。つい先頃、四月三日に亡くなった人で、七〇年代に石原慎太郎美濃部亮吉保革両陣営に挟まれて都知事選に出馬したことがあるらしい。
  • その右側には永田和宏のインタビューが載っていたが、この人が歌人であるだけでなく細胞生物学者でもあることをそこで初めて知った。
  • シェイクスピア/野島秀勝訳『ハムレット』(岩波文庫、二〇〇二年)を読み進め、その後、相変わらず頭が痛かったので眠ることにした。三時半から一時間休んだところ、頭痛は一応解消された。目がひらいたあと、臥位のまま窓を見上げて眺めた空は無垢で無差異な一面の淡蒼穹で、例えば永劫などという概念の充分な形象化じみている。その茫洋との間に挟まった窓ガラスには昆虫の糞みたいな黒い点状の汚れや、そうでなければ黴か粘菌のような鈍い曇りが上から下までびっしりと顕在化して目に際立って、窓外の宙を截って駆ける鳥の影や、ぱらぱら浮かび漂う虫の姿もくっきり明晰に現れる。
  • Jan Erik Kongshaugが昨年の一一月五日に亡くなっていたことを知る。と言うか当時ももしかしたら訃報を目にしていたかもしれないが、どうもよく覚えていない。
  • John Scofieldが初めてECMから作品を出すらしい。『Swallow Tales』というタイトルが表しているようにSteve Swallowの音楽を主に取り上げたようで、編成も彼とBill Stewartとの馴染みのトリオである。
  • Norah Jonesも『Pick Me Up Off The Floor』という新譜を発表する。WilcoのJeff Tweedyとの共作が二曲あるとか。細かいメンバーは不明だが、John PatitucciとNate Smithが参加しているようなのでちょっと気にはなる。歌詞対訳は川上未映子が手掛けたらしい。
  • Norah Jonesは熱心に聞いてきたわけでなく、せいぜい『Come Away With Me』を多少耳に入れたくらいでその動向もまったく追っていなかったけれど、二〇一六年の『Day Breaks』の情報を見るとVicente ArcherとかBrian BladeとかChris Thomasとか、Jon CowherdとかJohn Patitucciとか、Karriem RigginsとかDaniel Sadownickとか、さらにはさすがにビビるのだけれどWayne ShorterとかLonnie Smithとか、錚々たるつわものたちが勢揃いしていて、ちょっとやばくない?
  • Kandace Springs『Women Who Raised Me』には、Christian McBride、Avishai Cohen(トランペットの方)、Chris Potterなどが客演。
  • Pat Methenyも二月に『From This Place』という新譜を出していたのだ。Linda Oh、Antonio Sanchez、Gregoire Maret、Luis Conte、Me'Shell NdegeOcello参加。紐入りでアレンジはGil GoldsteinやAlan Broadbent。Gwilym Simcockという人がピアノを弾いており、多分Methenyが新しく見つけてきた人と思われて、こちらは全然知らなかったのだが、どうもイギリスでは名の通った若手らしい。Bill Brufordのバンドにいたことがあるとか。
  • Kurt Rosenwinkelもトリオで『Angels Around』というやつを今月リリースしていた。Dario Deidda(d)という人とGregory Hutchinsonが相手。
  • 日本人だと北川潔が片倉真由子と石若駿を集めたトリオの作品を出している。
  • 上記の新譜情報は大方、disk unionのサイトに載っていたニュースを閲覧して集めたわけだが、そのなかに一つ、『ハリー・スミスは語る 音楽/映画/人類学/魔術』という書籍の発売告知があって、知らない名だがタイトルからして面白そうだなと思った。検索してみるとHarry Everett Smithという人で、Everettというミドルネームに何となく覚えがあるので、前にもどこかで目にしたことはあるのかもしれない。映像作家であり、ボヘミアンであり、神秘主義者であり、独学の文化人類学者であるという具合に、多彩で独特な人物のようだ。音楽の方面ではAnthology of American Folk Musicという音源を編集したことで有名らしく、いわゆるビート・ジェネレーションの一員ともされており、アレン・ギンズバーグと仲が良かった様子。
  • ほか、トランペットのJason Palmerがライブ盤を出すとのこと(『Concert, 12 Musings For Isabella』)。Mark Turner(ts)、Joel Ross(vib)、Edward Perez(b)、Kendrick Scott(ds)という顔ぶれ。Chase Bairdというサックスの『Life Between』には、Brad MehldauとNir FelderとAntonio Sanchezが参加。そして、Enrico Pieranunziの新録『Common View』では、何とJorge Rossyが叩いている。マジか!
  • Clementine『Continent Bleu』を流す。Jimmy Woode(b)、Niels-Henning Ørsted Pedersen(b)、Ben Riley(ds)、Bobby Durham(ds)、Patrice Galas(p / key)、Johnny Griffin(ts)。冒頭からPedersen以外の何者でもないサウンドと動き。三曲目の"Line For Lyons"――この曲をボーカルで取り上げるのも珍しい気がするが――でPedersenは短めのソロを弾いているが、いつもながらやたらと速いし、高速で細密なフレージングでも音程が本当に正確なので、やはり凄いなと思った。
  • 最近は文章をけっこう頑張って精査しながら書いているつもりなのだが、そうすると助詞の「の」など、かなり鬱陶しいと言うか、いかにも邪魔臭く感じるようになってきた。例えば、「居間の南窓の横の壁にゴキブリが這っていて……」みたいな感じで連続したときなど勿論そうだし、重ならずに一つだけで出てきても何だか野暮ったいような気がして煩わしく思うことが多い。


・作文
 11:50 - 12:41 = 51分(25日; 24日)
 19:32 - 20:06 = 34分(25日; 5日)
 24:15 - 24:41 = 26分(5日)
 26:42 - 27:59 = 1時間17分(6日)
 計: 3時間8分

・読書
 11:28 - 11:41 = 13分(シェイクスピア; 144 - 150)
 12:42 - 13:45 = 1時間3分(シェイクスピア; 132 - 182)
 14:33 - 15:30 = 57分(シェイクスピア; 182 - 216)
 21:25 - 21:48 = 23分(英語)
 21:48 - 22:28 = 40分(記憶)
 24:46 - 26:26 = 1時間40分(シェイクスピア; 216 - 287)
 計: 4時間56分

・音楽