2020/7/15, Wed.

 だが、開戦から二年後、一九一六年半ばから戦局が悪化すると、国内の高揚したムードに翳りが見えはじめる。食料不足・耐乏生活・大量死といった予想外の状況に国民の不満は蓄積していく。反ユダヤ主義者たちはその不満を見逃さなかった。彼らはこの機をとらえて「後方におけるユダヤ人の影響力増大」を訴える。ユダヤ人を戦時利得者であると強調し、ユダヤ人は祖国のために戦っていないと非難する。
 (芝健介『ホロコースト中公新書、二〇〇八年、9~10)


 一二時四三分まで寝ふけってしまう。天気は今日もまた曇天。雨も降っていたかもしれない。明瞭な空の青さをもうずいぶん長く見ていない。夢で高校時代の三年A組の連中と一緒に移動したり何だりということがあったのだが、詳細は忘れた。こちらは三年B組で、この隣のクラスの男子たちはおおかた、高校時代のこちらのことをいけすかない野郎だと思っていたようだ。クールぶっていると思われていたのだと思う。ただ体調が良くなくて、陰鬱だっただけなのだが。

 上へ。うがいをする。食事はチキンや昨日の味噌汁。新聞一面を読む。テレビは録画で、『深夜食堂』なるもの。ストリッパーの女性が主人公。毎回変わるのかもしれないが。若いストリッパーが、伝説のストリッパーだという年嵩の女性とやりとりする。母親が、りりィって知ってる、この人、死んじゃったんだよねと言って、全然知らなかったのだが、こちらはその「りりィ」という名は語感からし若い女性のほうのことだと思っていたところ、いま検索してみると、年嵩女性のほうだったことが判明した。「長男は、ロックバンド・FUZZY CONTROLのJUON。DREAMS COME TRUE吉田美和は義娘にあたる」と言う。FUZZY CONTROLなどというバンドの名前をものすさまじく久しぶりに思い出したが、高校時代に数曲だけ聞いたときのうっすらとした記憶では、ちょっと変なファンクと言うか、けっこう面白い音楽だった覚えがある。また聞いてみたい。りりィに関しては、「その人柄と広い活動ゆえ、訃報に際してはDREAMS COME TRUE中村正人[11]、シンガーソングライターの泉谷しげる[12]、映画監督の青山真治[13]、アニメ監督の山崎理[14]など、多くの著名人から追悼のコメントが出されている」ともWikipediaにある。
 ドラマ中に掛かった音楽についてまた母親は、あがた森魚の曲だと言う。この名前ももちろんこちらは初耳である。"赤色エレジー"って知ってる、と言うがむろん知らない。ただ、『赤灯えれじい』という漫画があるのは知っており、これはたぶんこの"赤色エレジー"から取ったのだなと思った。

 母親の分もまとめて皿洗い。風呂洗い後、ミシンを元祖父母の部屋に運ぶ。居間を散らかしたくないのでそちらでやるとのこと。

 緑茶持って帰室。(……)さんから返信。了解を返す。

 (……)

 Mr. Children『Q』とともにここまでメモ書き。二時一二分。三時には出る必要があるので猶予がない。今日は労働して帰りはたぶん八時半頃になるし、一〇時からWoolf会があるのでけっこう忙しい。

 二時一五分から一五分だけ「英語」を読む。そうして運動。六分しかやらなかったが、それだけでもかなり変わる。

 歯磨きしつつ(……)さんのブログ。二〇二〇年四月一〇日。「ランプレドット」と「トリッパ」。モツ煮込みはほぼ食ったことがない。
 言語は停まらない。植物みたいなもの。言語の乱れとか、仕方ないと言うか、非難しても無益と言うか、植物に非を唱えるようなものでは? 「自然化」かもしれないが。

 便所。糞を垂れつつ、二〇一八年の夏の便秘を思い出す。

 送っていこうかと言われるが断る。久しぶりに歩くつもりだったので。移動のために車に乗ることほど退屈なこともこの世には少ない。車は要約的・縮約的に過ぎる。時空を。狭いし。装飾がない。音楽と風と窓くらい。電車はほかの人がいるし、揺れと音が音楽的なので。アヴァンギャルド方面のジャズみたいに。

 "ファスナー"とともに着替え。ほぼ三時。


 
 坂。(……)さんの宅の前あたり。ガクアジサイ。茶色くなっている。箒の毛のような色。その先、草の膨れ上がり。毛虫を思わせるような部品。花が咲くのか?

 サルスベリ。ピンク。塀の上と足もとに散らばり。のちには白も。枝先に湧き、生じはじめている。

 自動車整備工の斜向いの一軒のアジサイ。巨大。淡い黄緑。あれはアジサイなのか?

 道の果てに白い傘いくつか。下校中の中学生か高校生。こちらもよほど歩くのが遅いと自覚しているが、彼ら彼女らもかなり遅い。こちらの速度で距離が縮まって見えなかった姿が見えるようになったくらいだから。

 白猫はいない。去年はよく遭遇したが。日記にも出てくる。

 (……)越える。女子高生二人。よくわからないが、黒いものがあって、黴かと思ったが動いていて、みたいな話。アルバイト先でのことか? ときおりびしゃっと水が頭上から落ちてくる。電線からだろうが、鳥が止まって揺れたりしているのだろうか? (……)そばの一軒で人夫が作業。何か側溝みたいなものを作っていた気がする。ここは先般(と言って、もう結構前だったか?)取り壊されていたはずだが、真新しい家屋がもう建っていた。

 駅前に出るところ。燕一匹。地面すれすれまで下降して、また湾曲して飛び上がって過ぎていく。

 職場着。裏口から鍵で。

 (……)

 (……)

 (……)

 (……)

 駅へ。入車。発車間近。手帳にすこしだけメモ。ひとつの事柄につき、一語か二語程度で。メモの仕方も、とりあえず中核をメモしておくやり方が良さそう。やっぱり物事には構造があるんだなあと。中心(核) - 周縁(装飾)の。なんかすべての物事って、空間化されてしまうのでは? 人間の思考はそこから逃れられないのでは? ベルクソンが時間も空間化されているということを言ったらしいが、空間化されない思考のあり方なんてないのでは?

 最寄り。階段通路。水の流れる音。屋根の上らしい。どうやって排出しているんだろうというのが見えない。雨樋らしきものもないし。階段の終わりあたりに、配管があった。そこを流れる水音か。ぴちゃぴちゃという感じ。

 駅出て坂。沢音、増幅している。途中、落ち葉。六、七枚ほどまとまって枝についたまま落ちており、まだ真新しく、表面の緑色はつやつやと濃密。

 平ら道。風、前から。雨が寄せてくる。傘の端から、白い粒も垂れ落ちる。こぼれる。

 帰宅。手洗ったり着替えたりして食事。チキンと米。キュウリの和え物。ごま油、醤油など。ニンジンの和え物。マヨネーズなど。大根と竹輪の煮物。シーチキンとアサリ入り。テレビ、『家、ついていってイイですか?』。三菱重工だかなんだかで働いていた男性。妻の話。心電図。人生や過去があったというだけでちょっと涙を感じるところがある。ナイーヴで愚かだが。新聞はまだ朝刊。

 食後、皿洗い。急須と湯呑持ってくる。母親、もう出たよう。それでストレッチしてから入浴。父親の車。束子。

 メロン。食うと一〇時。Woolf会へ。
 進め方がだんだん固まってきたよう。固有名詞はコメントページにメモ。チャットも活用する。丁寧な説明や言動をおのおの心がけること。
 (……)さんという人と、(……)さん。(……)さん一一時半頃退出。ぜんぜん喋っていなかったが、次回も来ると。(……)くんがみんなを紹介する。こちらはまた、狂気的と言われた。このまま行けば世界一長い日記を書く人になると。伝説的な人物になるだろうとも。ありがたい。
 自由間接話法。
 二次会。
 階級性。
 小説の二種類。構造的なものと、絶頂的なもの。
 神学。真実作用としての男性的権威。
 (……)さん。好きじゃなかった。イライラしていたらしい。読みにくくて。芸術至上主義的な姿勢に?
 (……)
 政治性。
 内面描写をするための文体。
 難解さが忌避される風潮。
 (……)さん。簡単なものに難しい深みを見ることもできるし、難しいものの単純さを見ることもできる。
 こちらとしては、どちらもやれば良い。『ONE PIECE』とマラルメ。あるいはCarpentersDerek Bailey

 終了後、Bonnie Mannを紹介。LINEに。ギターをすこしだけ弾く。静かに。

 (……)くんにChris Lebronを紹介しようと思った。あと、コメントページに説明も書いておこうと。