2021/6/9, Wed.

 (……)いったい、いつから、その法が法となったかを、ひとびとが忘れはててしまうことによって、法はまさに法となる( [『法律』] 七九八b)。――法は、ふるまいを二分して、正しい行為と不法な行為との境界を設定する。法の創設は、切断する暴力である。もっともひろい意味での法が、倫理の源泉であるならば、いっさいの倫理は暴力的に開始される。法は、それを制定した起源の暴力が忘却されることで法となるのだ。(……)
 (熊野純彦『西洋哲学史 古代から中世へ』(岩波書店、二〇〇六年)、96)



  • 一一時四四分の離床になってしまったので、出勤までの猶予がすくなかった。この日のことを書くこともできず、書見を多少したくらい。暑いので電車。三時まえに出てゆっくりと道をいく。陽射しが厚く、重量的で、公営住宅に接してある見捨てられたような公園では、区画の端にならんでいる木が濃緑の葉を豊富に茂らせてまとっており、それで隙間があまりなく、なかのようすがうまく見えないくらい。
  • 最寄り駅で手帳にメモ。勤務があった日の夜はやはりからだを休めながら読み物をしたほうがいいだろうという認識にたちもどっている。書き物をがんばってやろうとせず、心身をいたわってととのえることを優先したほうがたぶん長期的には良いだろうという予感。ベッドでごろごろしながらずっと文を読んでいれば良いのだ。読み物に飽きたらコンピューターで娯楽的な動画など見ていたって良い。労働後にがんばろうとしてもどうしてもからだがこごってつかれてかたいので、集中できずうまくいかない。
  • きょうはすぐに職場にいった。(……)
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  • 退勤は一〇時。駅へ。電車を待っていると(……)があらわれる。ともに乗って、そのあとの帰路もともづれて、やつの家まで。ゴールデンウィークに千葉の蘇我であったなんとかいう音楽の野外イベントに行ったはなしや、家の横のほそい隙間で植物をそだてているといういつもの話題など。そだてているものを見せてもらい、そのあと家のまえの台にならんですわり、多少雑談して別れ。やつは植物をそだてるのみに飽き足らず、鳥小屋を設置して鳥が来るようにしようとおもっていると言うので、おまえ趣味が完全に老人のものじゃないかと笑いながらも、こちらもどちらかといえばそういう性分なので肯定したが、仕事で疲れるから家でゆっくりおちついてやるようなそういう趣味しかできないとのこと。自転車はたまに乗っているらしいが、あまり長い距離はもう走らないようだ。ずっと乗ってなくて、たまにいきなり乗って、それでからだ大丈夫なの、ときくと、やはりむかし乗り慣れていたので、意外と行けるとのこと。ガチの連中だと一日で三〇〇キロ走るようなひともいるというので、三〇〇キロってどれくらいなんだときけば、静岡まで行ってもどってくるくらいじゃないかな、と。(……)だったら二日以上かかるが、つわものたちはそれを一日で走破するらしい。ずっと走ってるわけでしょ? 彼らはそのあいだどういう気持ちなんだよ、とたずねると、走ってるとけっこうあたまが冴えるから、意外とかんがえごとしたり、あとは風景を見るのもおもしろいから、車だと風景見ようっつってもぜんぜん見れないから、とのことだった。まあこちらが歩いているときとそんなに変わらないのではないか。
  • 帰宅後、夕食前の休息中に、"The Arab world in seven charts: Are Arabs turning their backs on religion?"(2019/6/24)(https://www.bbc.com/news/world-middle-east-48703377(https://www.bbc.com/news/world-middle-east-48703377))をよみだした。いま一時で、風呂から帰ってきてまた読んでいる。表題には宗教心の件が触れられているが、ほかたとえば、A woman president or prime minister is acceptable / Husband should have the final say in all family decisionsの項目などがある。前者の割合がいちばんおおいのはレバノンで、七五パーセントに達しているが、そのレバノンでも後者にかんしてはほぼ五〇パーセントが賛同している。記事中の記述によればレバノンは地域内で比較的リベラルな国だと評価されているらしいのだけれど、homosexualityを許容できるとこたえたひとの割合は六パーセントにすぎない。同性愛のグラフとならべてHonour killings、すなわちいわゆる名誉殺人がacceptableかという問いのグラフもあるのだが、それはアルジェリアが二七パーセントでいちばんたかい。そのアルジェリアは同性愛の許容度でもトップで、二六パーセントがacceptableとこたえたらしい。この二種類の問いの数字はほぼどの国でもだいたいおなじ程度になっていて、そこにおおきな差があるのはヨルダンの、名誉殺人二一パーセント、同性愛七パーセントだけである。
  • どの国がthe greatest threatか、という問いにたいしては、総合的に見て、イスラエル、米国、イランの順位になっている。レバノンでは八割がイスラエルで、パレスチナでも六三パーセントであり、それはとうぜんだろう(パレスチナでは二四パーセントがアメリカを回答してもいる)。イエメンとイラクではイランがもっとも高くて、それぞれ三割以上を占めている(イエメンではサウジアラビアが一四パーセントをかぞえているのがほかと比べた特筆事であり、イラクでは米国も三〇パーセントの地位をあたえられている)。
  • 食事は鶏肉のソテー。うまい。丼の米に乗せて食った。
  • やはり疲労感がつよくて、横になっても書見すらなかなかできず、瞑目のうちにふくらはぎをほぐすばかり。それでもいくらか読んだ。さいごのほうは意識がけっこうあいまいだったようで、何時に寝たのかおぼえていないのだが、三時三〇分を見た記憶はあるので、四五分くらいだったと推測。しかし明かりを落とした記憶がないのだが。
  • 夕食時に、『家、ついて行ってイイですか?』をながめて、おもうところかんじるところがいくらかあったのだが、記すのが面倒臭いので省く。