2022/9/23, Fri.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)

●52~53(「エロディヤード」; Ⅰ 序曲)
 そしてすぐにその紅色の薄暮
 後ずさりする肉体の蠟を貫くだろう!
 薄暮ではなく紅の日の出だ
 すべてを終らせる最後の日の出だ。
 人々はもうその時刻をも覚えないほど(end52)
 この予言者時代の黎明は悲しくもがいて
 眼を羽にかくす一羽の白鳥のように
 自分の貴い心の中へ追放された少女のために泣く
 彼女は老いた白鳥が眼を入れる羽のような
 その羽の苦悩からのがれ、彼女の希望の
 永遠の並木道へと去った、死にかけてもう
 光らない一つの星に選ばれた金剛石を見るために。




 九時台に覚醒。腹を揉みほぐし、カーテンの端をめくって窓ガラスの白さを目に取り入れることでまぶたのひらきをさだかにする。一〇時ごろにいちど床を離れて、ルーティンをこなしてからまた臥位に。日記を読むのではなくてウェブをてきとうに見回ってしまう。どうもやはり腹の感じがあまりよくなくて、そのためにストレスを感じたり(逆にストレスがむしろ原因なのか、結果と原因が循環するのでよくわからないが)、からだが安心してまとまらずにやる気が出ないようだった。一一時過ぎに起き上がって瞑想。二〇分ほど。おとといの勤務中からはじまったものだが、喉のつかえというか、喉の奥になにかが詰まっているようなひっかかりがまだある。精神的なものでもあるのかもしれないが、ふつうに胃の問題であるようにもおもえる。ここでもやはり神経的な領域と器質的な領域が癒着しほぼ融合しているので、どちらがさきとかどちらが根源だとかがわからない。いずれにしてもからだがあまりよくはない。臍とみぞおちのあいだを中心に腹をよく揉んでやわらかくしておくとたしょう楽なようだが。ともかくも食事だが、そういう不調をはらんだからだをおもんぱかって、サラダはキャベツと豆腐とリーフレタス(つかいきった)のみですくなめにした。とはいえ勤務に行くなら炭水化物も食っておいたほうがよいだろうということで、きのうスーパーで買ったさつまいもの混ざったパウンドケーキも食べることにしたが、これも慎重に、半分だけにしておいた。それでもやはり食後の腹から胸や喉にかけてがすっきりせず、詰まりの感覚がのこってはいるので、これで電車に乗って職場ではたらくのはけっこうたいへんそうだなと気後れし、おもいきって今日明日休ませてもらうかと決断した。きょうはふつうに授業があり(授業前に生徒面談も一件)、あしたは授業はなくて生徒面談の手伝いだけだったので、きょうはがんばって行ってあした休ませてもらおうかなとさいしょはおもっていたのだけれど、大事を取って二日間の休息をもらうことに。当日なので調整がたいへんだろうから申し訳ないが、まあ職場にはけっこう貢献しているつもりだし、たまには休ませてもらってもよいだろうと。それで正午を越えたあたりで(……)さんに電話し、じつは体調があんまり良くなくてということを伝え、今日明日休ませてもらうことになった。月曜日から復帰予定。そのときにはちょっとした礼をわたそうとおもう。さてそうして今日と明日勤務に行かなくてもよいと決まればやはりきもちが楽になるのだろう、からだの感じもいくらかやわらいだ気がしたし、時間がたくさん生まれたから精神的にも余裕ができて、日記は溜まっているけれどすぐにとりかからず、腹を揉みながらウェブをみたり音読をしたりした。体調が万全でなくとも、なにげに文はたくさん読むんだよな。「読みかえし1」ノートを、きょうはいまのところ、531番から547番まで読んでいる。二時ごろ切ってシャワーを浴びた。せっかく二日間の休みができたのでこのあいだに日記をかたづけたいというもくろみはもちろんあるし、部屋の掃除もしたいところなのだが、そうかんがえてしまうのがこちらの意外とワーカホリックな性分なのかもしれず、むしろもっとなにもせずだらだらして心身を弛緩させたほうがよいのかもしれない。じぶんはある意味で典型的な仕事人間なのかもしれず、ただじぶんのばあいその「仕事」と労働が一致していないというだけで、読んだり書いたり音楽を聞いたりが封じられてしまったときになにをすればよいのかわからず立ち迷うような気がするというのは、世の仕事人間が余暇になにをやったらいいのかわからないというのとだいたいおなじなのではないか。三時ごろから寝床にころがってChromebookを持ち、またウェブをみたり一年前の日記を読んだりしつつ脚をほぐした。2021/9/23, Thu.からは冒頭の熊野純彦の『レヴィナス』を再掲する。かなりよくわかるな、というはなし。身体が主体におけるみずからとの絶え間ないずれなのだという点はほんとうによくわかるし、「目に見える私の身体は、私にとっては、だがほとんど可視的ではなく、身体は圧倒的に他者のまなざしにたいして曝されている。私の身体の表面を他者がまなざし、他者がかかわってくる(me regarder)(148/177)。他者たちの視線こそが、まなざすというしかたで私の身体を所有 [﹅2] している。――凝視されることはときに不安であり、また恍惚でもありえよう。不安とはここでは、他者にまなざされる場にあり、他者の視線に圧迫 [﹅2] される雰囲気のうちにあるとき私がおぼえる、押しつけられた存在の気分である。それは、身体 [﹅2] 感覚としては、身がちぢむ収縮 [﹅2] 感覚であり、からだごとゆらめく揺動 [﹅2] 感覚であり、あるいはじぶんが身体からずれてゆく離脱 [﹅2] 感覚であろう」というあたりを読んでみても、パニック障害の再発によってひとのいる電車内で緊張や圧迫を絶えず感じている現在のじぶんにとっては、まさしく体感的に理解できる記述だ。しかもそこでは他者の「まなざし」が問題であるわけですらない。他者がじっさいにこちらをまなざしているか否かは不問で、他者がそこにいることじたい、他者の「存在」そのものこそが、圧迫の来たるもとである(もちろん、そこにいる他人がじっさいにこちらを見ているか、こちらに関心を持っているかとはかかわりなく、こちらじしんが不安を原因として内面においてそのような視線を仮構しているととらえることもできるはずで、つまり他者の「存在」そのものが自動的に「まなざし」に変換して受け止められる、他者がそこにいることと他者がこちらを見ることとはほぼおなじことがらなのだとかんがえることも可能なはずだ。ここで拙速に文学的レトリックにながれるなら、他者の存在そのものがこちらを見ている、ということになる。そしてこのことは、じぶんがいままでなんどか記してきた、ひとはひとを真に無視することはできないということがらとほぼおなじ意味だろうとおもう)。あと重要なポイントはレヴィナスのいう〈近さ〉というワードだとおもわれ、近いということはつまり一致していないということ、残余としての距離がいつまでもあいだに生じつづけるということなのだという発想は(たしかそういうはなしだったとおもうのだが)すばらしいとおもう。

 1 身体であることにおいて、主体は皮膚的な界面の内部 [﹅2] に閉ざされているかに見える。だが、身体は外部 [﹅2] からの不断の侵襲に曝されている以上、この内部は内部たりえていない。あるいは内部であることがただちに外部に反転することを意味している [﹅6] 。主体が身体であることをめぐる、ことのこの消息が、一方では世界のただなかで主体がみずからの存在から離脱することを可能にし、あるいは余儀なくさせている。他方ではまた、身体としての主体がみずからと不断に断裂していることが、〈語ること〉の、意味することの基底なのであった。身体はたえずみずからとずれ [﹅2] てゆく。この隔絶によって記号が、すなわち、あるもののかわり [﹅3] になるあるものがなりたつ。他からの圧迫によって息切れ、息切れが声 [﹅] となるとき、私は全身を記号 [﹅2] と化している。つまり他者との〈近さ〉のなかで意味しはじめている。この〈近さ〉が問題なのであった。
 「四囲 [﹅2] 」はたしかに「気圧 [﹅2] 」(atmosphère)として私に「押しつけられ」る。身体をたずさえた私は、他なるもの、外部性に曝され、喘ぎ、「捻じれ」「ひび割れ」て、むしろ身体としての自己を喪失する(三・1・3)。烈風によって私は「からだから吹き飛ばされそうに」なり、あるいは大気の熱と体温とが溶け合うことで、大気そのものと身体とが融(end240)解する。身体であるという内部 [﹅2] が、四囲の外部 [﹅2] に転じてしまう。――このことは、だがとりあえず匿名の外部性との関係で生起している。ここで〈他なるもの〉とはいまだ他者 [﹅2] ではないようにおもわれる。この他なるものはすぐれて他者でもありうるのだろうか。〈近さ〉の問題にすすむに先だって、なお考えておく必要がある。
 皮膚の表面はつねに四囲に曝され、気圧は私の身体を圧し、変形させ、身体の内部に入りこむ。そのことで身体の内部は外部へと捻じれ [﹅3] てしまう。しかし、身体の表皮は同時に他者によって見られるおもて [﹅3] でもあり、四囲は雰囲気 [﹅3] (atmosphère)でもありうる。目に見える私の身体は、私にとっては、だがほとんど可視的ではなく、身体は圧倒的に他者のまなざしにたいして曝されている。私の身体の表面を他者がまなざし、他者がかかわってくる(me regarder)(148/177)。他者たちの視線こそが、まなざすというしかたで私の身体を所有 [﹅2] している。――凝視されることはときに不安であり、また恍惚でもありえよう。不安とはここでは、他者にまなざされる場にあり、他者の視線に圧迫 [﹅2] される雰囲気のうちにあるとき私がおぼえる、押しつけられた存在の気分である。それは、身体 [﹅2] 感覚としては、身がちぢむ収縮 [﹅2] 感覚であり、からだごとゆらめく揺動 [﹅2] 感覚であり、あるいはじぶんが身体からずれてゆく離脱 [﹅2] 感覚であろう。恍惚もまた方向と意味が逆転した剝離の感覚にほかならない。身体のこのずれ [﹅2] あるいはぶれ [﹅2] はすべて、〈他者との関係〉がひきおこす身体の変容の経験なのであって、身体がそのおもて [﹅2] で〈他なるもの〉として(end241)の他者に曝され、あるいは身体の内部 [﹅2] に他者という外部性 [﹅3] を孕んでしまっている経験であるとおもわれる。
 ここでも、身体である主体はじぶんの存在から離脱すること [﹅6] を余儀なくされ、不断にみずからと断裂している。「皮膚の内側にある」とは「じぶんの皮膚の内側に他者をもつこと」にほかならない(181/212)。他者に強迫され、他者の視線に侵襲されつづけていることが身体であることの意味だからである。主体性とは、かくてこの場面でこそ、すぐれて「〈同〉のなかの他 [﹅6] 」(l'autre dans le Mêeme)であり、「〈他〉によってかきたてられた〈同〉の動揺」である(46 f./59)。身体である主体とは、「自己の外部への自己の追放」なのである。つまり、主体はすでに「他者とおきかわって」(substitution à l'autre)いる(175/205)。
 そもそも「自己は自己のイニシアティヴによって生じたものではなく」、〈同〉はあらかじめ〈他〉を「懐胎 [﹅2] 」している(166 f./196)。私が身体の輪郭を劃定し、皮膚的界面の内部に閉じこもるためにすら、私は他者とのかかわりを必要とする。その意味で「〈私〉はじぶんの身体に結びつけられるに先だって、他者たちに結びあわされている」(123/148)。他を「懐胎」することに着目するなら、身体であることの原型とは「母性」(maternité)である(121/147, cf. 109/133, 111/135)。ただし子宮のうちに安らう母性ではなく、他を孕むことで傷を負い、他者に曝されつづけ、みずからと不断にことなりつづけ差異化しつ(end242)づける母性、つまり綻びてゆく主体性 [﹅8] としての母性なのである。母性という主体性のこの規定が、主体の自己差異化と、それをもたらす他者との〈近さ〉の比喩となっているようにおもわれる。
 (熊野純彦レヴィナス――移ろいゆくものへの視線』(岩波現代文庫、二〇一七年)、240~243; 第Ⅱ部、第三章「主体の綻び/反転する時間」)

 四時過ぎになると起き上がり、きょうは雨降りではないようだが湿り気のふんだんにのこったような薄暗い曇天で、部屋がすでにけっこう暗かったので明かりをともした。そうして便所に行って放尿し、黒いマグカップに注いだ水をパソコンの左脇に置いて、ときおりそれを飲みながらここまできょうのことを記述した。そうしていまはちょうど五時。腹が減ってきている。あとそういえば、二時ごろに携帯をみると(……)さん((……)さん、すなわち叔母=母親の妹)からSMSが来ており、きょうしごと? とあったので、きょうあしたしごとだったが体調があまり良くないので休みにしてもらったとこたえると、もし可能なら今夜夕食を食べに来ないかという。(……)の食事会をことわってしまったので、それで顔合わせの機会をもうけるつもりだったのかもしれない。こちらとしても、(……)家の飯はいつもうまいし、遊びに行くにやぶさかではないのだが(あるいて四〇分か四五分くらいだろうからふらっと行ける)、あいにく胃が悪くていやな感じなのでと今回は遠慮した。体調が全体的に良くなってきたらふらっと遊びに行きたいとつたえておく。


     *


 腹が減ったのでそろそろ二度目の食事を取ろうかなとおもったのだが、そのまえに電子レンジの場所を移動することにした。まえまえから本格的に料理をするならいま電子レンジによって半分以上占拠されている冷蔵庫のうえのスペースをあける必要があるとおもっていたのだ。そこから右方、洗濯機や流しやコンロを越えて、扉のすぐ脇にある靴箱のうえにうつせばよいだろうとかんがえていた。そちらにはいま電気ケトルや、割り箸や歯ブラシを入れた紙コップ、それにガラス製のマグカップなどが置かれてある。それらをデスクのうえや床にどかして、電子レンジのうえに乗せていた醤油とかラップとかもべつのところに置いておき、雑巾でレンジ表面や配線などをちょっとぬぐうと移動した。しかしいざ置いてみると靴箱のうえは前後の幅がそうひろくないから、レンジを置くと壁についている電源が隠れてしまい、コンセントを挿しづらい。無理やり挿せないこともないが、レンジ本体と電源とのあいだで圧迫を受けてケーブルがかなり消耗するだろう。電源タップは一個未使用のものがあるにはあるのだけれど、それは冷蔵庫や洗濯機をつないでいる場所につかうつもりだったし(そうおもいながら買って以来ながく放置してまだ導入していないのだが)、レンジのためだけにそちらのほうに電源タップを置くのもなんだし、扉のそばには良い置き場所もいまいちない。それでどうしたものか、冷蔵庫のうえはやはり空けたいし、その脇の床に置くしかないかとかんがえながら扉のほうにどこかほかにコンセントがないかと見ると、いままで気づかなかったというか、たぶんさいしょに見ていらいずっとわすれていたのだが、靴箱の上部、天井からいくらか下がって上限となっている面の端に挿し込み口が存在した。ここに挿せばよいではないか、というわけである。その電源のすぐ脇は換気扇がなかにある囲いの部分になっており、垂れ下がる換気扇のケーブルは、いまレンジで隠れてしまった電源のほうに挿してあり、ちなみに洗濯機のアース線もそこにつながっている。そういうわけで電子レンジの移動は解決し、ひろくなった冷蔵庫の上面に木製皿とかクレラップとかをもどしておき、ついでにながしに置いてあった紙パックを始末することにした。先日なんとなくメロンのジュースとかあったら飲みたいなとおもってスーパーの飲み物コーナーを見ていたところ、メロンだけではなく四種混ざっているが味はメロン風味だというTropicanaがあったので買って、それをきのうだか飲み干していたのだ。鋏でパックの口をひらいてゆすぎ、水切りケースに入れておいた。床の掃き掃除もすることに。パソコンからアンプにつながるケーブルをはずし、FISHMANSの"バックビートに乗っかって"をBGMとしてながしだして、入り口のほうから埃や髪の毛をあつめていく。ちょっとあつめると蓋をはずしたゴミ箱の袋のなかにすぐ捨て、箒の先端に絡まった髪の毛や付着した埃もその都度取ることをくりかえした。椅子のしたも、きょうは保護シートをめくらないのでぜんぜん不完全だがやり、さらに机のしたのコットンラグのうえも。ここの食べ滓とかがいちばん気になっていたのでできてよかった。しゃがみこんだり膝をついたりしつつ箒とちりとりを持ってひたすら掃いていると、腰がかなり疲れて大変だ。あきらかにやはり電動クリーナーのたぐいを買ったほうがほんとうはよいのだろう。コットンラグも布地の繊維があるからそれで埃がまとまって、掃けば掃くだけ埃が生まれでてくるような、RPGのマップ上で無限にポップアップするモンスターのようにして灰色のちいさなかたまりが無数に出現するのだが、まあ完璧にやる必要もないだろうと、"WALKING IN THE RHYTHM"が終わるのを機に掃除も終えた。日々このようにしてすこしの時間でもたびたび掃除できるのがいちばんよいのだが、そうはおもってもなかなかじっさいにできないのがにんげんである。そのあとだったかそれとも掃除のまえだったかおぼえていないが、引っ越してきてさいしょのうちに二本買って飲んでいらい靴箱のうえにずっと放置していた飲むヨーグルトの空パックを、ここでようやく始末する気になった。Tropicanaのおかげである(ちなみに飲むヨーグルトも先日一本買って、いま飲んでいる)。カッターで切りひらき、口のほうにあたる部分はあきらかに紙ではなくてプラスチックなので、ここにもカッターをまわしてとりのぞいておく。Tropicanaのほうも注ぎ口をとりのぞかなければならないが、それはまだやっていない。さらにデスクの向こう、部屋の壁際にやはり置きっぱなしになっている雑紙類も、nojimaの袋がもういっぱいになっているのでいくらかは始末しておくかという気になって、役所でもらったゴミ捨てハンドブックをひらいた。雑紙やチラシの類は紐で縛るか紙袋に入れるかである。紐はあるのでやれないこともないが、サイズも質感もちがう紙類をいろいろあわせて縛るのもめんどうなので、紙袋を入手するまではとりあえずいくらかべつのビニール袋にうつしておくかと、nojimaの真っ青な袋から中身をとりあげてある程度移動させた。紙パックはまたべつなので、それはそれでビニール袋に入れておく。二五日に地元の美容室に行くときに菓子を買っていくつもりなので、そこで紙袋をひとつ入手できるはず。というかよくかんがえたら引っ越しのときにつかったものが何枚か、収納スペースの奥にあるのだった。それをつかえばよいではないか。
 そういう感じでそこそこ部屋の整理ができたが、段ボールなどは放置のままだし、冷蔵庫の脇や裏も掃除できていないし、きれいな状態にはまだまだほどとおい。しかしともあれ腰がつかれたので寝床に逃げて、Chromebookでウェブを見ながら座布団にからだの背面をもぞもぞこすりつけた。掃除をしたので、窓は開けて外気をとりいれておいた。いつからか雨が降っており、そとの空気はおおいに濡れていた。そうして休んだのがたぶん七時くらいまでか。食事へ。キャベツに豆腐、セロリに大根にタマネギのサラダをこしらえる。大根がそろそろ皮がしなびた感触になってきているので、さっさとつかってしまわないと。そのほか昼間に食ったパウンドケーキののこりと、それを食ってもいけそうだったので、ウインナーのはさまったチーズナンもひとつ食べた。食欲はわりと感じて、それらを食べてもまだなにか食べたいような気もしたのだが、特にちょうどよいものもないし、胃や食道をおもんぱかる。みぞおちのあたり、臍からうえにのぼっていって左右の肋骨の接合点にあたるそのへんを押すとたしょう痛みがあるので、胃だか食道だかわからないがなにかしら悪くなっているのはまちがいがない。喉のつかえめいた違和感も、軽くはなったが抜けてはいない。食後は皿洗いをすぐに済ませ、ウェブを見てなまけたあと、ユーディット・シャランスキー/細井直子訳『失われたいくつかの物の目録』(河出書房新社、二〇二〇年)を読みはじめた。きのう図書館で借りた三冊のうちのひとつである。おもしろい。「はじめに」と「緒言」しかまだ読めていないが、「はじめに」はこの本が執筆される間にこの世から消え去ったものたちと反対に見つけ出されたものたちを列挙する二段落になっており、じぶんはさまざまなものの列挙という手法に基本的に惹かれてしまう性質をもっている。「緒言」も人類による死のとらえかたとか、記憶や保存とかそういうテーマの、いろいろな固有名詞や歴史やエピソードを織り交ぜたエッセイ的文章になっており、冒頭の、町の中心にマルクト広場ではなく墓所があるというデンマークのある島のはなしからして魅力的で、この「緒言」は11から25まであってけっこうながいのだけれど、おおかたの部分を書きぬこうという気になった。この本は地元の図書館の新着図書ではじめて見たときから、これはたぶんおもしろい本、良い本だろうなと直感していたのだけれど、予想通りである。そもそもタイトルからして、「失われた」「物」「目録」とあきらかにじぶん好みのテーマがそろっている。だから不思議なことではないといえばそうだ。九時くらいまで読んで「緒言」の終わりにいたり、それからきょうのことを書き足して、ここまでで九時三七分。


     *


 いまもうまさに日付が変わるところ。九時三七分のあとは一九日の日記にとりかかり、勤務時のおぼえていることをある程度書き足してしまいとした。それでだいぶ疲れたので、寝床に避難する。頭蓋骨や後頭部が硬かったり、また首すじもこごっている感じが顕著で、Chromebookをとりながらもたびたび置いて胎児のポーズを取ったり、あおむけで静止したりしてからだを休め、ゆるくする。雨降りだが窓をひらいており、目を閉じてそうして休んでいるあいだは雨音がひだりのちかくから聞こえつづけていて、どこを垂れるのかあるいはながれるのか、降るというよりは水がびしゃびしゃとながれている感じの響きだったり、どこかにカチカチカンカンと当たる音だったりが混ざって、どのタイミングを切り取ってもひどく似通っていて判別がつかなそうではあるがしかしそのじつ無法則に無限の多様性をはらんでひたすらに持続をひろげるその音響は、耳にふれているとかなりおちつく。風というほどのものはないけれど、そとの涼しさが網戸からしずしずと来て肌にふれるのもきもちがよい。「雨もまた隷属を知りすべもなく降り継ぐことに賭けているのだ」「神々も砂になるほど熱い日に歴史は変わるさうつくしさ抜きで」という二首をつくった。起き上がると一九日分をブログやnoteに投稿し、短歌も191番から200番に達したのでnoteに投稿、それから二〇日のことを記述し、てきとうに済ませてこれも投稿。これできょうのことはもう完成も同然だし、二一日と二二日のことはあしたでいいかなとおもっている。


     *


 「読みかえし1」ノートより。なんどでも引いておかなければならない。

Matthew Hill, David Campanale and Joel Gunter, "'Their goal is to destroy everyone': Uighur camp detainees allege systematic rape"(2021/2/2)(https://www.bbc.com/news/world-asia-china-55794071(https://www.bbc.com/news/world-asia-china-55794071))

557

Then sometime in May 2018 - "I don't remember the exact date, because you don't remember the dates inside there" - Ziawudun and a cellmate, a woman in her twenties, were taken out at night and presented to a Chinese man in a mask, she said. Her cellmate was taken into a separate room.

"As soon as she went inside she started screaming," Ziawudun said. "I don't know how to explain to you, I thought they were torturing her. I never thought about them raping."

The woman who had brought them from the cells told the men about Ziawudun's recent bleeding.

"After the woman spoke about my condition, the Chinese man swore at her. The man with the mask said 'Take her to the dark room'.

"The woman took me to the room next to where the other girl had been taken in. They had an electric stick, I didn't know what it was, and it was pushed inside my genital tract, torturing me with an electric shock."



559

Another teacher forced to work in the camps, Sayragul Sauytbay, told the BBC that "rape was common" and the guards "picked the girls and young women they wanted and took them away".

She described witnessing a harrowing public gang rape of a woman of just 20 or 21, who was brought before about 100 other detainees to make a forced confession.

"After that, in front of everyone, the police took turns to rape her," Sauytbay said.

"While carrying out this test, they watched people closely and picked out anyone who resisted, clenched their fists, closed their eyes, or looked away, and took them for punishment."



560

Detainees had food withheld for infractions such as failing to accurately memorise passages from books about Xi Jinping, according to a former camp guard who spoke to the BBC via video link from a country outside China.

"Once we were taking the people arrested into the concentration camp, and I saw everyone being forced to memorise those books. They sit for hours trying to memorise the text, everyone had a book in their hands," he said.

Those who failed tests were forced to wear three different colours of clothing based on whether they had failed one, two, or three times, he said, and subjected to different levels of punishment accordingly, including food deprivation and beatings.

"I entered those camps. I took detainees into those camps," he said. "I saw those sick, miserable people. They definitely experienced various types of torture. I am sure about that."

It was not possible to independently verify the guard's testimony but he provided documents that appeared to corroborate a period of employment at a known camp. He agreed to speak on condition of anonymity.

The guard said he did not know anything about rape in the cell areas. Asked if the camp guards used electrocution, he said: "Yes. They do. They use those electrocuting instruments." After being tortured, detainees were forced to make confessions to a variety of perceived offences, according to the guard. "I have those confessions in my heart," he said.


     *


 うえまで記したあとは特段のこともなく、また「読みかえし」ノートを読んだり、ウェブを見回ってだらだらしたりして、二時半か三時前に就床した。


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  • 「ことば」: 1 - 5
  • 「読みかえし1」: 531 - 535, 536 - 547, 548 - 564
  • 日記読み: 2021/9/23, Thu.


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Maya Yang, Léonie Chao-Fong, Martin Belam and Michael Coulter, “Russia-Ukraine war latest: what we know on day 212 of the invasion”(2022/9/23, Fri.)(https://www.theguardian.com/world/2022/sep/23/russia-ukraine-war-latest-what-we-know-on-day-212-of-the-invasion(https://www.theguardian.com/world/2022/sep/23/russia-ukraine-war-latest-what-we-know-on-day-212-of-the-invasion))

Pro-Russian authorities in four regions of occupied Ukraine – Luhansk, Donetsk, Kherson and Zaporizhzhia – have been conducting widely-condemned “referendums” on whether the regions desire to be annexed by the Russian Federation.

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The governor of the Kharkiv region Oleh Synyehubov has said 436 bodies have been exhumed from a mass burial site in the eastern city of Izium. Thirty of the bodies bore visible signs of torture in the burial site in Kharkiv, a region held largely by Russian forces before a Ukrainian counteroffensive this month, Synyehubov told reporters alongside the region’s police chief.

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Long lines of vehicles continue to form at Russia’s border crossings on the second day full day of Vladimir Putin’s military mobilisation, with some men waiting over 24 hours as western leaders disagree over whether Europe should welcome those fleeing the call-up to fight in Ukraine. The Russian president’s decision to announce the first mobilisation since the second world war has led to a rush among men of military age to leave the country.

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The Hungarian prime minister, Viktor Orban, wants European Union sanctions on Russia lifted by the end of the year, a pro-government daily newspaper said. Orban, a Putin ally, has frequently railed against the sanctions imposed on Russia over its invasion of Ukraine.

Many of the Ukrainians exchanged in the largest prisoner swap with Russia since the beginning of the invasion show signs of violent torture, the head of Ukraine’s military intelligence said on Thursday. On Wednesday, Ukraine announced the exchange of a record-high 215 imprisoned soldiers with Russia, including fighters who led the defence of Mariupol’s Azovstal steelworks that became an icon of Ukrainian resistance.