（……）ぼくは両親をいつも迫害者と感じてきました。一年前まではあるいは彼らに対して、世間全体に対してと同様、命のない物とおなじように無関心だったかもしれませんが、いまわかったように、それはただ抑圧された不安、心配、悲しみだったのです。両親というものは、ひとを自分の方に、ひとがほっとしてそこから抜け出したいと思う古い時代に、引きおろすことしか望みません。もちろん愛情からそれを望むのですが、それこそ恐ろしいことなのです。（……）
（マックス・ブロート編集／城山良彦訳『決定版カフカ全集 10 フェリーツェへの手紙（Ⅰ）』（新潮社、一九九二年）、97; 一九一二年一一月二一日）
七時台に目覚め。布団のしたでしばらく呼吸をつづけて、八時過ぎに身を起こしカーテンを開けた。きょうも雲の見えない晴れである。そのまますぐあおむけにもどって、Chromebookを持ち、Notionで一一月四日の記事を作成。カフカ書簡の文言も引いておき、ウェブをちょっと見まわると過去の日記を読みはじめた。一年前も八年前もとくに引くべきことはない。二〇一四年のほうはフルトヴェングラーなんて読んでいる。その後Guardianをいろいろと読んだ。TS Eliotの『荒地』が発表されてからちょうど一〇〇年ということで、今年はその界隈でたしょう盛り上がっているらしい。きのうかおとといも読んだが、Eliotやこの詩にまつわる伝記的方面を紹介する記事。ほか、アイルランドでは司祭が何人かの同性愛者である政治家を指して地獄に落ちるだろうと発言し、騒動を呼んだと。いっぽう、英国では国教会の司教が、教会は同性婚をみとめるべきだと表明し、みずからもふくめて教会がこれまでよりよい決断をくだせてこなかったこと、かんがえを変化させるのに時間がかかったことを謝罪したと。そのほかBob Woodwardが発表したドナルド・トランプへのインタビューについて。The Trump Tapesというやつで、なんでもaudiobookだという。かれが個人的にトランプにインタビューしたときの音声をそのまま発表したみたいなことのようだ。そこでトランプは、“I get people, they come up with ideas. But the ideas are mine, Bob. Want to know something? Everything is mine.”と言っているらしく、それにたいするWoodwardのコメントは、〈“The voice, almost whispering and intimate, is so revealing. I believe that is Trump’s view of the presidency. Everything is mine. The presidency is mine. It is still mine. The only view that matters is mine.〉というもの（https://www.theguardian.com/books/2022/oct/24/bob-woodward-donald-trump-interview-tapes(https://www.theguardian.com/books/2022/oct/24/bob-woodward-donald-trump-interview-tapes)）。絶対王政的ジャイアニズムを地で行っている。
ちょうど九時半に離床。水を飲み、用を足したり顔を洗ったりして、れいによって屈伸したり背伸びしたりその場歩きをちょっとしたりしてからだをほぐす。すぐに瞑想にはいらず、白湯もつくって、それを飲みつつ英文記事を整理したりする。そうしてたしか一〇時二〇分から椅子のうえであぐらになった。ちょうど二〇分座る。窓外ではいつものように子どもたちがわいわいにぎやかにしながら、公園かどこかに出発するところらしく、保育士の女性が整列をもとめたり、～～組さ～ん、と呼びかけて、は～あ～いと幼児らが応じたあとに、手をたたきながら動物のなまえをいうゲームをやったりしている。瞑想を終えると水切りケースのなかのプラスチックゴミを始末したり、ながしに放置してあったフライパンなどを洗ったり。食事はキャベツと豆腐のサラダに即席の味噌汁、あと冷凍のちいさな肉まん。藤田一照仏教塾のレポートを読みながら食して、すぐに皿をかたづけると白湯をつくって音読、とまったくいつもと変わりない生活のながれ。歯も磨いた。天気もわりとよくてレースのカーテンに陽射しのかけらが宿って影もうつっているし、湯を浴びるついでに洗濯をしようということに。袋にはいっていたものを洗濯機にうつし、着ていたジャージは脱いで椅子のうえにたたんでおいて、ひとまず上の下着だけ洗濯機にくわえると水が溜まるのを待つ。そうしてパンツも脱いで全裸になってから洗剤を投入すると、浴室へ。まず髭を剃った。顔を洗ってからシェービングフォームを塗りたくり、肌にこすりつけていく。その後Gilletteのカミソリでもみあげのあたりから剃っていくが、刃が劣化してきたのか、それかたんじゅんに無精髭を伸ばしすぎなのか、さいきん切れ味がわるい気がする。顔ぜんたいをすっきりさせるとカミソリをゆすいで、出水をシャワーのほうにうつして湯を吐かせ、調節して浴槽内にはいると顔を洗って泡を落とす。そうして湯浴み。済まして出るとからだを拭いて服をまとい、ドライヤーで短髪を乾かす。まもなく洗濯も終わったので、洗ったものをそれぞれ取り出してハンガーにとりつけ、窓のそとへ。バスタオルを棒につけようと手に持って窓から出すと、とたんにながれを受けてななめに押されてかたむくそのちからが手につたわってくる。とはいってもとりたてて風のつよい日ではない。空には雲のなじみもみられて陽は陰る時間もあるけれど、おおむね淡くあたたかな色がレースにともっている午後二時である。窓をあけたままにしていても穏和な空気だ。
＊
寝床にうつってちょっとまどろんだり、パウル・ツェランを読みすすめたり。やはり口に出さないとうまく読めない感じがある。天気は良いとおもっていたところがだんだんとひかりがうすくなってきて、空をみあげれば太陽は雲にとらわれて、その雲の縁は灰汁のような灰色に染まってもいるし、おもったよりも雲の出がおおくてちいさくひらいた水色が包囲されながら窒息を待つようなありさまで、その後かんぜんに曇って寥々としたような大気のいろになってきたので、こりゃ出しておいても駄目だなとおもって洗濯物を入れた。三時くらいだったとおもう。あまり乾いていない。四時ぐらいに床を立ったが、携帯をみるとSMSがはいっており、母親かなとおもったところが（……）さんで、いま家にいるか、炊き込みご飯をつくったから届けに行くとあったので、そいつはありがたいと来てもらうよう返信した。そのへんまで行こうかと言ったが、いいという。もう出るとあったので、そんなにかかるまいとおもい、取ったばかりの食事のあとかたづけをしたり（インスタントの味噌汁と、肉まんと、ソーセージのはさまったナン）、洗濯物をたたんだり（肌着とタオルはまあいいかなという具合で、ちいさなハンドタオルだけのこしておいた）、歯磨きをしたりしてからそとに出た。上下ジャージで靴下も履いていない。マスクはいちおうつけておき、アパートのまえに立ち尽くして左右を見たり、角をちょっと出てうかがったりしていたが、じきに建物縁の段に腰掛けて待った。目の前では保育園に迎えに来た保護者がこどもを自転車に乗せたりしている。ときおり車や自転車、また徒歩での通行人もみられる。そういえばそとに出る直前に階段をあがってくる音が聞こえて、こちらの部屋のまえあたりで止まったので（……）さんかなとおもったところがそうではなく、部屋を出て階段をおりていくと道からポストのあたりにむけて携帯をかまえて写真を撮ろうとしているらしきひとがいて、スーツすがただったのだがやや怪しい。こちらが道に出ても向かいの保育園前にたたずんでいたのだが、不動産屋かなにかだろうか。（……）さんはなかなか来なかった。そもそも勝手に車で来るものだとおもっていたのだが、まずもってそこが不明である。もしかして電車と徒歩で来るのかなとおもい、それだったらもうすこしかかるだろうとじきにおもって、部屋にもどることにした。ポストからチラシを取って自室に帰り、それをビニール袋に入れたあたりでしかし階段をのぼる音が聞こえ、インターフォンも鳴ったので、もうすこし待っていればちょうどよかったなとおもいつつ画面を確認した。戸口に行ってあいさつ。墓参りに来るようだったのでそのついでに、という感じだったようだ。炊き込みご飯のほかに（……）で唐揚げなどを買ってきてくれたので顔をほころばせて礼を言う。体調を問われるので、まあもうかなり良い、先月いっぱい休みをもらっていたが、来週から復帰したいと言ってある、とつたえた。うちもまえにも言ったけどギターをはじめて、ということで、（……）からみたら笑っちゃうようなもんだろうけど、こんどぜひみに来てくれと。（……）家にあったのはたしかストラトだったはずで、でも家にアンプないでしょ？ と聞いてみると、買ったのだという。中古屋で一〇〇〇円程度のちゃちなものだというが。でも家にあったやつはもう古くてなんか音が出ないから、すぐじゃあ買いに行こうっつって、（……）があの（……）も買った楽器屋あるでしょ、（……）楽器？ あそこに行って、中古だけどそこのブランドのエレキを買ってきたのよ、それで意外とけっこう弾けるようになってるけどね、とのこと。（……）ちゃんもやっているはずだが、ひとり一本ではなくて共用なのだろうか。なにしろ良いことだしちかぢか見に行きたいものだ。それで礼を言って別れて、窓辺からみているとどうも自転車で走り出したのが（……）さんだったようなので、チャリで来ていたらしい。
そのあと書抜きをちょっと。一箇所だけ。BGMにBenny Green Trio『Testifyin! Live at the Village Vanguard』をながす。#4 "Bu's March"の盛り上がり部分がむかしから好きだが今回も快楽をおぼえて打鍵を止めてしまった。その他藤田一照仏教塾の記事を読んだり、それで瞑想したり、その場歩きをしたり。それからここまで書いていまもう七時。唐揚げをもらったからには米といっしょに食いたいところだが、買い物に行くのも面倒くさいという気分。とりあえずごった煮の味噌汁だけでもつくるか？
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- 「ことば」: 31, 9, 24, 31 - 37
- 「読みかえし2」: 431 - 441
- 日記読み: 2021/11/4, Thu. / 2014/3/28, Fri.
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Tim Adams, “The Waste Land: A Biography of a Poem by Matthew Hollis – genesis of a masterpiece”（2022/10/9, Sun.）（https://www.theguardian.com/books/2022/oct/09/the-waste-land-a-biography-of-a-poem-by-matthew-hollis-ts-eliot-genesis-of-a-masterpiece(https://www.theguardian.com/books/2022/oct/09/the-waste-land-a-biography-of-a-poem-by-matthew-hollis-ts-eliot-genesis-of-a-masterpiece)）
Rory Carroll Ireland correspondent, “Uproar after Irish priest says Varadkar and other gay politicians will go to hell”（2022/11/3, Thu.）（https://www.theguardian.com/world/2022/nov/03/uproar-after-irish-priest-says-varadkar-and-other-gay-politicians-will-go-to-hell(https://www.theguardian.com/world/2022/nov/03/uproar-after-irish-priest-says-varadkar-and-other-gay-politicians-will-go-to-hell)）
Tobi Thomas, “Church of England should allow same-sex marriage, says Bishop of Oxford”（2022/11/3, Thu.）（https://www.theguardian.com/world/2022/nov/03/church-of-england-should-allow-same-sex-marriage-says-bishop-of-oxford-steven-croft(https://www.theguardian.com/world/2022/nov/03/church-of-england-should-allow-same-sex-marriage-says-bishop-of-oxford-steven-croft)）
Lloyd Green, “The Trump Tapes: Bob Woodward’s chilling warning for US democracy”（2022/10/30, Sun.）（https://www.theguardian.com/books/2022/oct/30/the-trump-tapes-bob-woodward-us-democracy(https://www.theguardian.com/books/2022/oct/30/the-trump-tapes-bob-woodward-us-democracy)）
Martin Pengelly in New York, “Bob Woodward to publish Trump interviews detailing his ‘effort to destroy democracy’”（2022/10/24, Mon.）（https://www.theguardian.com/books/2022/oct/24/bob-woodward-donald-trump-interview-tapes(https://www.theguardian.com/books/2022/oct/24/bob-woodward-donald-trump-interview-tapes)）
