(……)――以前、ずっと前に、手紙が来なかったとき、ぼくは書きました、ぼくはもう手紙を期待しない、すべてはおわりだ、と。今日ぼくは言います、手紙を書くのは中断するとしても、ぼくらはお互いに非常に近しくして、手紙を書くのが不必要であるばかりでなく、あまりの近しさのため話し合うことさえ不可能なようにすべきだろう、と。
(マックス・ブロート編集/城山良彦訳『決定版カフカ全集 10 フェリーツェへの手紙(Ⅰ)』(新潮社、一九九二年)、184; 〔一九一二年一二月二四日〕)
いま二〇日の午後一一時二一分。この日のことはなにひとつ綴られていなかった。はなしにならん。もうやっつけで行くが、この日のできごとは医者に行ったくらいである。しかしそのまえに(……)さんのブログからの引用。したの夏目漱石の文章はだいぶすごいなとおもった。音調にしても意味の推移にしても、とにかくリズムが良い。セリフを終えて一段目の、「救世軍はこの時太鼓を敲いて市中を練り歩るいている。病院では腹膜炎で患者が虫の気息(いき)を引き取ろうとしている。露西亜では虚無党が爆裂弾を投げている。停車場(ステーション)では掏摸が捕(つら)まっている。火事がある。赤子が生れかかっている。練兵場で新兵が叱られている。身を投げている。人を殺している。藤尾の兄(あに)さんと宗近君は叡山に登っている」という列挙部分でさいご、「身を投げている。人を殺している」と主語が省略されているのがとくにすごいとおもった。これは真似できない。あと「死の底に滅(め)り込む春の影の上に」なんていう当て字とか、「脈々三千条の血管を越す、若き血潮の、寄せ来る心臓の扉は」なんていういいかたもできない。
「藤尾さん」
「何です」
呼んだ男と呼ばれた女は、面と向って対座している。六畳の座敷は緑り濃き植込に隔てられて、往来に鳴る車の響さえ幽かである。寂寞たる浮世のうちに、ただ二人のみ、生きている。茶縁(ちゃべり)の畳を境に、二尺を隔てて互に顔を見合した時、社会は彼らの傍(かたえ)を遠く立ち退いた。救世軍はこの時太鼓を敲いて市中を練り歩るいている。病院では腹膜炎で患者が虫の気息(いき)を引き取ろうとしている。露西亜では虚無党が爆裂弾を投げている。停車場(ステーション)では掏摸が捕(つら)まっている。火事がある。赤子が生れかかっている。練兵場で新兵が叱られている。身を投げている。人を殺している。藤尾の兄(あに)さんと宗近君は叡山に登っている。
花の香(か)さえ重きに過ぐる深き巷に、呼び交わしたる男と女の姿が、死の底に滅(め)り込む春の影の上に、明らかに躍りあがる。宇宙は二人の宇宙である。脈々三千条の血管を越す、若き血潮の、寄せ来る心臓の扉は、恋と開き恋と閉じて、動かざる男女(なんにょ)を、躍然と大空裏(たいくうり)に描き出している。二人の運命はこの危うき刹那に定まる。東か西か、微塵だに体(たい)を動かせばそれぎりである。呼ぶはただごとではない、呼ばれるのもただごとではない。生死以上の難関を互の間に控えて、羃然(べきぜん)たる爆発物が抛げ出されるか、抛げ出すか、動かざる二人の身体は二塊(ふたかたまり)の燄(ほのお)である。
(夏目漱石「虞美人草」)
したはさすがに笑う。
(……)またケッタをぶっ飛ばして大学まで戻る。北門の守衛に今日もらったばかりの許可証をみせるが、ものすごく偉そうな態度でQRコードを読み取れ! と指示される。この田舎のどん百姓が! 感染拡大の危機にあるいま、しょっぱい使命感に駆られて、まるで兵士長にでもなったかのように態度がクソでかくなっているのだ! こういうカスがでかい権力をたまたま手に入れた結果デジモンワープ進化してプーチンになるんだよな。南門の守衛を見習えといいたい。あのおっさんはこちらを完全顔パスで自由に出入りさせる。職務を完全に放棄しているのだ。
そのほか以下の言。
(……)(……)さんからも同様の質問があった。続けて、日本でもオンライン授業が行われているのかというので、コロナ発生当初はそうだったけどワクチンがいきわたってコロナの毒性が弱くなって以降はそうでもないと思う、学校も会社も通常通りになっているところがけっこう多くなっているはずと答える。都市封鎖はまだ一度も行われていないというと、中国はいつも都市を封鎖していますと不満気な絵文字を添えていう。だから外教がみんないなくなってしまうんだよなというと、先生はどうなんですかというので、大学の外に出れないことにかんしては別にどうでもいい、でも春ごろの上海みたいになったらさすがに帰国を考えるかもしれないというと、春ごろの上海? というまさかの反応。これなんだよな。「四月之声」すらもはやなかったことになっている、というか中国人の多くはマジでよその省(都市)はよその省(都市)、うちはうちという考え方が残酷なまでにインストールされていて、そのことをこちらはしょっちゅうおそろしく思う(しかしそんな学生たちはしばしば、「東京のひとは冷たいですか? 日本人は冷たいですか?」という質問をよこすので、こちらはそのたびにけっこう困ってしまうのだ)。(……)
道中のことも書きたかったのだけれどもう記憶もとおいし省略。電車は発車までじゅうぶん時間のある時点で乗れたので(一五分くらいあったのではないか)、そのあいだにcero『POLY LIFE MULTI SOUL』をBGMに静止してからだをおちつけたこともあってわるくなく、さいしょのうちは緊張があって喉奥から圧迫もたしょうないではなかったが、じきにOK。(……)で降りたころ、また帰路なんかは気分がけっこうわるくなかったというか、この日をさかいにすこしもちなおして、よい方向にむかっている感がある。まあまたあした(二一日)勤務だし、どうなるかわからんが。診察はたいしたはなしもないし、割愛するか。医院についたのは五時半くらいだったとおもうが、待合室にだれもひとがいなかった。それなのでこちらひとりソファに座って、それでも医師はなにか作業をやっているのか数分待ったが、ひとりだけならすぐ呼ばれるだろうから持ってきた本を読むまでもあるまいと、目を閉じて静止しながらからだを観察していた。(……)にもどったあとはスーパーに寄って帰宅。
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- 「ことば」: 31, 9, 24, 1 - 5
- 「読みかえし2」: 485 - 490, 491 - 500
- 日記読み: 2021/11/18, Thu. / 2014/4/8, Tue.
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Martin Belam, Guardian staff and agencies, “Russia-Ukraine war at a glance: what we know on day 268 of the invasion”(2022/11/18, Fri.)(https://www.theguardian.com/world/2022/nov/18/russia-ukraine-war-at-a-glance-what-we-know-on-day-268-of-the-invasion(https://www.theguardian.com/world/2022/nov/18/russia-ukraine-war-at-a-glance-what-we-know-on-day-268-of-the-invasion))
About 10 million people were without power, President Volodymyr Zelenskiy said in a Thursday evening video address. Authorities in some places had ordered forced emergency blackouts, he said.
A deal brokered by the UN and Turkey in July aimed at easing global food shortages was extended for four months on Thursday, though Russia said its own demands were yet to be fully addressed.
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The UK’s Ministry of Defence said the barrage of missiles that struck Ukraine on Tuesday was probably the largest number of strikes that Russia had conducted in a day since the first week of its invasion.
The US secretary of state Antony Blinken said the US had “seen nothing so far that contradicts” Poland’s preliminary assessment that Ukrainian air defences were to blame for Tuesday’s missile incident. US president Joe Biden disputed Ukrainian president Volodymyr Zelenskiy’s comment that the missiles that landed in Poland on Tuesday were not of Ukrainian origin, saying this is not what evidence suggested.
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Ukrainian forces control about 1% of territory in the eastern region of Luhansk, according to the Russian-installed head of the area. The Moscow-backed administrator, Leonid Pasechnik, was cited as saying that Ukraine controlled the village of Belogorovka and two other settlements in the region.
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The Turkish president, Recep Tayyip Erdoğan, said he believed neither Russia nor the US planned to use nuclear weapons. Erdoğan’s comments came after US central intelligence agency (CIA) director William Burns and Sergei Naryshkin, head of Russia’s SVR foreign intelligence service, met this week in Ankara in what was the first known high-level, face-to-face US-Russian contact since the war began in February.
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“The Guardian view on Cop27: this is no time for apathy or complacency”(2022/11/15, Tue.)(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/nov/15/the-guardian-view-on-cop27-this-is-no-time-for-apathy-or-complacency(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/nov/15/the-guardian-view-on-cop27-this-is-no-time-for-apathy-or-complacency))
Verna Yu, “Xi Jinping’s cordial tone at G20 does not herald softer foreign policy”(2022/11/16, Wed.)(https://www.theguardian.com/world/2022/nov/16/xi-jinpings-cordial-tone-at-g20-does-not-herald-softer-foreign-policy(https://www.theguardian.com/world/2022/nov/16/xi-jinpings-cordial-tone-at-g20-does-not-herald-softer-foreign-policy))
Cas Mudde, “Oh, how Donald Trump has fallen”(2022/11/16, Wed.)(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/nov/15/oh-how-donald-trump-has-fallen(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/nov/15/oh-how-donald-trump-has-fallen))
Anna Gromada and Krzysztof Zeniuk, “Why Poland may have most to gain from a Russian defeat in Ukraine”(2022/11/13, Sun.)(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/nov/13/poland-russia-defeat-ukraine-western-europe(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/nov/13/poland-russia-defeat-ukraine-western-europe))