お前からぼくへの幾歳
再び お前の髪は波立つ、ぼくが泣くと。お前の目の青さで
お前は ぼくたちの愛のテーブルを覆う、夏と秋の間の寝台を。
ぼくたちは飲む、誰かが醸造したものを、それはぼくではなかった、お前でも、また他の者でも――
ぼくたちは 空っぽの そして 最後のものを 啜る。ぼくたちは 深海の鏡の中で 見つめ合い すばやく 食物を差し出し合う――
夜は 夜だ、夜は 朝で始まる、
夜は ぼくを お前のもとへ横たえる。
- 一年前。ニュースだがたいした内容ではなく、再掲したのは後鳥羽院の和歌を引いておきたかっただけ。
(……)新聞、共通テストの問題が流出した件で中継役の協力者がいたと。きのうの夕刊ですでにつたえられていたが。ふたりとも書類送検されたらしい。その他、ロシアとベラルーシが合同で軍事演習をはじめ、ウクライナも同様に演習をすると。双方とも二〇日までと言っている。ロシア軍はベラルーシ内に三万人ほどいるらしいが、ベラルーシの関係筋によれば二国で六万から八万の兵が参加するだろうとのこと。この情報は二面に載っていたもので、読売新聞は毎日長谷川櫂が二面で短歌俳句や詩を紹介しているが、きょうは後鳥羽院の歌で、それが良かった。「梅が枝はまだ春立たず雪の内ににおいばかりは風に知られて」というやつ。「においばかりは風に知られて」である。
- きのうは勤務を終えて帰宅したのが一〇時ごろで、いつもとはちがって休息を取らずにすぐに食事を取り、温野菜と、出かけるまえに米を炊いておいたので冷凍の唐揚げをおかずに白米を食ったりしたのだが、なんとかすこしだけでも文を書きたい、きょうの記事かあるいは八日をちょっとだけでも書きたいと望んでいたところが、やはり疲労に屈して果たせず。一一時四〇分くらいに寝床に移って身をやしなっていたのだがそのまま意識をうばわれてしまった。三時ごろ復活し、就寝。そのおかげで今朝は比較的はやく覚めることができたともいえるが。時刻を確認したのは八時で、そこからしばらく呼吸したりして八時半前に正式な覚醒。九時半ごろまでウェブをみたり一年前の日記を読んだり。きょうは二時半くらいには出なければならないのでふだんより猶予がすくなく、そうするとたしょうの焦りが身中あるのを感じる。そういうわけであまりだらだらせずに床を抜け、座布団を出そうとおもったところが、窓をあけるときのうの雪降りから一転して快晴なのだけれど、窓外柵の内側には濡れた跡がすこしのこっているし、柵のそとがわの宙にも左右おおくのばしょで上階からしずくがぽつぽつ落ちてくる。せっかく晴れてもこれでは洗濯物を干したら濡れてしまうなとおもって迷ったが、けっきょくのちほど洗った。陽が当たるようになれば止まるかもしれないし、乾く範囲のほうがひろいだろうし。しかし座布団は出さず布団をたたんで立ち上がり、腕振り体操をちょっとやったり瞑想したり。座っていた時間はみじかめ、一五分強だっただろう。そして一〇時前、食事に向かう。水切りケースのなかをかたづけてプラスチックゴミを始末し、袋がもうけっこういっぱいだったので縛ってしまい、あたらしい袋を戸棚のなか最前に用意しておき、洗濯をはじめたばかりの洗濯機のうえでれいによって温野菜を支度する。ウインナーはきのうで尽きた。レンジを回しているあいだはまな板包丁を洗ってかたづけ、また腕を振って血と酸素を全身にめぐらせる。その他即席の味噌汁も用意して飯を食い、二品をかたづけたあとに前夜と同様冷凍の唐揚げで米も食った。あとバナナ。兄夫婦がくれた炊飯器のおかげでまいにち米をバクバク食えるようになったから、体重が増えているのではないか? 五五キロくらいにはなっているのではないか。
- 食後は白湯を飲んだりウェブをみたり歯磨きしたり、そのあと床を少々掃き掃除したり、テープでペタペタやってくずを取ったり。便意が満ちたので排便。そうして都立高校入試国語過去問二〇二一年度の問題を予習しておく。去年もやってはいるのでけっこうおぼえているが。この年の大問5は駒井なんとかいうひとと蜂飼耳が鴨長明および『方丈記』について対談している文章で、たぶん去年も書いたとおもうが、日本古典を読みたくなる。『方丈記』はかなりむかし、もしかすると読み書きをはじめるいぜんだったかもしれないがいちど読んだことがあるはずで、それは角川ソフィア文庫の「ビギナーズ・クラシックス」(だっけ?)の版だったのだけれど、訳文のあとに訳者の説明というか感想みたいなものがいちいち記されていて、それがうるせえなとおもってあまりたのしめなかったのをおぼえている。おれが読みたいのは『方丈記』なのであって、べつにあなたの感想は欲していないと。そうおもったということは、内容もとくに啓発的ではなかったのだろう。ビギナーズ・クラシックスなので解説的な構成になっていたのはむしろとうぜんだが。
- その後湯浴み。出てくると米をまたあたらしく炊いておき、ここまで記して一二時四一分。そういえばきのうの朝の時点では気づかなかったが(そとの車の走行音から雨だとは聞いていたが、雪が降っているとはおもわなかったため)、日記によれば昨年の二月一〇日も雪が降っていた。そして明けた翌一一日が快晴になっているのもおなじ。
- いま帰宅後。午前二時もちかい。帰ってきたあと休んだのち、一一時過ぎくらいから夕食を取り、食後は一時間くらい休んで腹やからだがこなれるのを待たないと文を書く気にならないので待っていたのだが、なんとなく詩でも書こうかなという気になった。詩片だったらひっきりなしにゆびをうごかすわけでないのでからだにさわりがない。さいきんは短歌も詩片も気が乗らないから、いぜんはまいにちの日記の下部におもいつきのをうつしていたのがコピペをさぼってしまいがちで、二月一日の記事から取ってきた。それで最下部の、いつだったかすこしまえになんかおもいついた一連をみるとそのつづきが出てきて、そのままけっこう書いてしまいこの時間。ポップスの歌詞みたいになっている。もともとさいしょの一連がそういう感じで、おもいついたときにイメージとして、小沢健二の”今夜はブギー・バック”みたいな、あれくらいのテンポでゆるいシャッフルの16ビートがバックに鳴っているようなぐあいだったのだけれど、タイトルはそれでいいかとおもって、つまりテンポ指定をタイトルにすればいいやとおもい、ウェブ上のメトロノームで調べたら94くらいがイメージにちかそうだった。したがって「BPM 94」という題に。
- きのうの勤務は一時限できょうは二時限だから身体的な疲労度でいったらきょうのほうがあきらかに高いはずなのだが、ところが夜半から詩を書けたしこうして文も書けている。腕振り体操のおかげだろう。深呼吸と腕振り体操の組み合わせがよいのかもしれない。めぐりをよくしたうえで体操するとからだぜんたいがよくほぐれる。
- この日の往路は車の通行量の多い(……)通りを行ったが、とくだんの印象は蘇ってこない。というかおもいだされることがあっても記憶の質感がうすまっていて、ささやかなことが余計にささやかでかぼそいものとなってしまっているから、書こうという気にならない。勤務(……)
- (……)
- (……)
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- 日記読み: 2022/2/11, Fri.