2023/2/24, Fri.

 時代をくだり、前一六〇〇年頃になると、このギリシア語を話す人たちはギリシア本土の諸地方に城塞を築きはじめた。そのうちでもっとも有名なものが、アガメムノンの悲劇で知られるミュケーナイ城である。
 ミュケーナイ文明は、一九世紀に、常識に逆らって『イリアス』と『オデュセイア』の歴史的真実性を確信して発掘に生涯を捧げたシュリーマン(一八二二~九〇)により、その内容を明らかにした。この文明は、ミュケーナイ城の遺跡からの出土品を通して明らかなように、(end3)築城、武具、陶芸、装飾などにおいて高度の文明であり、また文字も所有していて財産目録や行政記録をも保存していた。しかし、だいたいは先進諸文明と質的に異なるところのない、いまだギリシア人に固有の特質をあらわしてはいない段階にある。この文明は約四〇〇年つづき、前一二〇〇~一一〇〇年にかけて消滅した。それから約四〇〇年間ははげしい民族移動の時代で、文化的には暗黒時代がつづく。
 (岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』(岩波ジュニア新書、二〇〇三年)、3~4)




  • 一年前より。『ドゥイノの悲歌』では第九歌がいちばん好きだ。

 何故だ。もしも命の残りを月桂樹 [ダフネー] のように、ほかの緑よりはいくらか暗く繁り、葉の端端を風の笑みのように顫わせ、そのようにして過ごすこともなるものなら、何故、人として生きなくてはならないのか、そして運命を避けながら、運命を追い求めるのか。

 近づく亡失を性急に引き受けて、先取りの境地を幸いとする故ではないのだ。知れぬものをあながちに知ろうとする故でもなく、あるいは心の覚悟の為でもない。心なら月桂樹の内にも残るだろう。

 そうではなくて、この世にあるということは多大のことであり、しかも、この世にあるものはすべて、どうやらわれわれを必要としているが故にだ。この消え行く定めのものが、奇妙にも、われわれに掛かる。もっともはかなく消えて行くこのわれわれに。すべて(end220)のものはたった一度、一度限りだ。一度限りで、それきり還らない。われわれも一度限り、二度とはない。しかし一度限りであっても、その一度であったということ、この世のものであったということは、撤回の出来ぬことであると見える。

 それ故にわれわれは身を励まして、一度限りを果たそうとする。これをつましい素手の内に、さらに溢れんばかりの眼の内に、物言わぬ心の内に、保とうとする。一度限りに、成ろうとする。誰にこれを渡すのか。すべてを永遠に留めるのはいかにも望ましいところだが、しかし彼岸の、異なった関連の中へ、哀しいかな、何を持ち越せるというのか。この世のさまざまをおもむろに学び取った観察も、この世で起った出来事も、何ひとつとして持ち越せはしない。それではもろもろの苦をか。何よりも、憂いの人生をか。愛をめぐる長い体験をか。つまりは言葉によってはまったく語れぬものをか。しかし後になり、星々の間に至って、それが何になる。星たちのほうがすぐれて、言葉によっては語れぬ者たちなのだ。たとえば旅人も山の稜線の斜面から一摑みの土を、これも万人にとって言葉によっては語れぬものであっても、谷へ持って降りはしない。記念に携えるのは摘み取った言葉、無垢の言葉、青や黄の龍胆 [りんどう] ではないか。われわれがこの世にあるのは、おそらく、言葉によって語る為だ。家があった、橋があった、泉があった、門が、壺が、果樹(end221)が、窓があったと。せいぜいが、石柱があった、塔があった、と。しかし心得てほしい。われわれの語るところは、物たち自身が内々、おのれのことをそう思っているだろうところとは、けっして同じではないのだ。恋人たちの心に迫って、その情感の中で何もかもがこの世ならぬ恍惚の相をあらわすように仕向けるのも、滅多には語らぬ現世の、ひそかなたくらみではないのか。敷居はある。たとえ恋人たちがそれぞれ昔からある自家 [いえ] の戸口の敷居をいささか、踰えることによって擦り減らしたところで、二人にとって何ほどのことになる。以前の大勢の恋人たちに後 [おく] れて、以後の恋人たちに先立って、自身も痕跡を遺すだけのことではないのか、かすかに。

 ここは、この世は言葉によって語れるものの時であり、その古里なのだ。とは言え、心の秘密を打明けてみるがよい。常にもまして事柄が、体験に掛かる事柄が、落ちて行くではないか。事柄を追いやりそれに取って代わるのは、表象を受けつけぬ、行為であるのだ。外殻を下から突きあげる行為であり、内で行動がひとり立ちに育って別の輪郭を取るやいなや、外殻はわれから粉々に飛び散る。鎚と鎚との間にあって、われわれの心は存続する。同様に、舌は歯と歯の間にあってそれでも、それでもなお賞賛しつづける者であるのだ。

 (古井由吉『詩への小路 ドゥイノの悲歌』(講談社文芸文庫、二〇二〇年)、220~222; 「24 ドゥイノ・エレギー訳文 9」)

  • ロシアがウクライナに侵攻をはじめたという報を受けて、いろいろ情報をあつめている。
  • 上階へ行き、着替えて食事。米も豚汁ものこりすくなかったのでぜんぶ払う。おかずはゴーヤ炒めのあまり。両親は買い物で不在。新聞の一面からロシアにたいする各国の制裁のうごきをつたえた記事をみた。日本はロシア国債のあつかいを禁止したほか、親露派地域に関連する人間へのビザ発給を停止するなどだったはず。EUは防衛関連の人間や団体、また独立国承認に賛同した下院議員三五〇名ほど(全会一致だったわけだから、下院議員の全員だとおもうが)にたいして資産を凍結したり、EU領内への渡航を禁じたり。
  • 食事を終えたあたりで両親が帰宅。食器を洗い、風呂も。浴槽の蓋がまたちょっとぬるぬるしてきていたので、ここでこすっておいた。自室にかえるとウェブを見て、その後二二日の記事を完成。投稿するさいにまたはてなのトップページでロシアが空爆をはじめたもようというしたの記事をみかけ、読んだ。もうひとつしたの記事はそのなかにリンクされていたもの。以下に転載したのはどちらも全文。

 ウクライナメディアによると同国内の複数の都市で24日未明、激しい爆発音が聞かれた。ロシア軍の空爆が始まった可能性がある。また、内務省当局者は国境警備隊の情報として、ロシア軍が北東部ハリコフ州の国境を越え、黒海港湾都市である南部オデッサにも上陸を開始したと明かした。
 爆発音が響いたのは東部クラマトルスクや南部オデッサなど。
 首都キエフでも午前5時過ぎから朝日新聞記者が断続的に爆発音が響くのを聞いた。爆発音は30分以上にわたって続いている。
 内務省当局者は、北東部の中心都市ハリコフの軍事施設とキエフの軍指令施設が巡航ミサイルの攻撃を受けたことを確認した。
 ウクライナのウニアン通信によると、ロシアの航空当局は同国南部のウクライナ国境周辺の空域の飛行禁止を命じた。ウクライナ当局もロシアのプーチン大統領が軍事作戦開始を表明する前の24日未明に北東部ハリコフからロシア国境沿いの空域で飛行禁止を命じた。(キエフ=喜田尚)

 ロシアのプーチン大統領は24日、テレビで演説し、ウクライナ東部での「特別な軍事作戦」の実施を決めたと発表した。実際に作戦を始めれば、ロシア軍がウクライナで本格的に展開するのは、同国南部のクリミア半島を占領した2014年以来となる。
 また、ウクライナメディアによると、同国内の複数の都市で24日未明、激しい爆発音が聞かれた。ロシア軍の空爆が始まった可能性がある。爆発音が響いたのは東部クラマトルスク黒海に面した南部オデッサなど。首都キエフでも午前5時過ぎから朝日新聞記者が断続的に爆発音が響くのを聞いた。
 ロシアは21年からウクライナ東部や南部の国境近くに10万人規模の兵力を集め、欧米が侵攻を警戒していた。今年に入ると推定3万人の軍隊をベラルーシに移動させ、2月10日からはウクライナとの国境付近を含むベラルーシ全土で同国軍との大規模な合同軍事演習を本格的に実施した。米国はロシアの兵力が最大19万人規模に増強されたとみていた。
 こうしたなか、プーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を一方的に承認し、ロシア軍の進駐を指示。本格的な侵攻が近いとの見方が強まっていた。
 これをうけ、米政府は欧州や日本などと連携して本格的な対ロシア経済制裁を発動し、ロシアの出方次第では追加制裁もあると牽制していた。ロシアを厳しく非難しつつ、対話による解決も模索していた。
 だが、ロシアが北大西洋条約機構NATO)の東欧への拡大停止などを強く求めたのに対し、欧米はこれを拒否し、双方の立場は平行線をたどっていた。
 ウクライナでは14年2月、親ロシア政権が崩壊して親欧米政権が誕生した。これを「憲法違反のクーデターだ」と批判するロシアは同年3月、クリミア半島に侵攻し、一方的に併合した。
 ウクライナ東部でも、ロシアを後ろ盾とする親ロシア派の武装勢力が一部地域を占拠して独立を宣言。ウクライナ軍との戦闘で市民を含めて1万4千人以上が死亡したが、いまも対立が続いている。
 ドイツとフランスが仲介役となり、15年2月にロシアとウクライナとの4カ国で「ミンスク合意」と呼ばれる停戦合意を結んだ。しかし、東部への自治権付与などをめぐりウクライナ政府と親ロシア派勢力の対立が続き、合意の履行は停滞。ロシアが親ロ派支配地域の独立を承認したことで、合意は事実上破棄された。
 ロシアは昨年春にも10万人規模の兵力をウクライナ国境付近に集結させた。6月のバイデン米大統領との首脳会談をにらんで、いったんは撤収の動きを見せたが、秋ごろから再び兵力を増やしていた。
 こうした動きの背景には、冷戦崩壊後の1990年代以降に進んだNATO拡大への不満がある。ロシアは、東欧諸国の加盟でNATOがロシア国境に迫り、ロシアの安全保障が脅かされていると訴えており、ウクライナNATO加盟も絶対に認められないとの立場だ。
 ウクライナはまた、ロシアにとって欧州との間の「緩衝地帯」以上の意味もある。中世の大国「キエフ・ルーシ公国」を源流とする「兄弟国」の意識が強く、プーチン氏は昨年発表した論文で、「(両国の)精神的、人間的、文化的な絆は同じ起源にさかのぼる」と主張していた。(モスクワ=中川仁樹)


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  • 午後七時。Gurdianでウクライナ情勢の最新情報をみた。

Vladimir Putin launched a broad Russian military offensive targeting Ukraine at about 5am local time (3am GMT) on Thursday morning after broadcasting a speech announcing a “special military operation” to “demilitarise” and “denazify” Ukraine.

Ukrainian officials from the border guard service and elsewhere were also reporting an armoured incursion from Belarus through the Senkivka border crossing in the north of the country backed by Belarusian troops.

There were also reports of Russian troops crossing the border to the east of Kharkiv and Russian armour moving into Ukraine from Crimea suggesting a three-pronged attack from north, south and east, with Reuters releasing video of Russian tanks in Mariupol.

In the immediate aftermath of the first wave of strikes, Ukraine’s president, Volodymyr Zelenskiy, announced martial law had been declared across the country.

Russian forces have unleashed an attack of Ukraine on the orders of Vladimir Putin, who announced a “special military operation” at dawn, amid warnings from world leaders that it could spark the biggest war in Europe since 1945.

Within minutes of Putin’s short televised address, at about 5am Ukrainian time, explosions were heard near major Ukrainian cities, including the capital, Kyiv.

The scope of the Russian attack appears to be massive. Ukraine’s interior ministry reported that the country was under attack from cruise and ballistic missiles, with Russia appearing to target infrastructure near major cities such as Kyiv, Kharkiv, Mariupol and Dnipro.

Explosions from artillery rockets lit up the night sky as shelling began near Mariupol, video showed. A senior adviser to Ukraine’s interior ministry said that it appeared Russian troops may soon move on Kharkiv, which is about 20 miles from the border. Locals in Kyiv sought safety in bomb shelters as explosions were heard outside the city.

Air raid sirens sounded over the capital and residents of Kharkiv sheltered in the city’s metro, scenes that haven’t been seen in those cities since 1941.

  • うえの箇条書きの記事で、プーチンが”denatify”(非ナチ化)などということばをもちいていたのには、ほんとうに、あたまが狂ったのかというような印象をもたざるをえなかったが、そのあたりはしたのぶぶんでもうすこしふれられている。プーチンはまた、世界大戦も辞さない、と言うかのようなつよいニュアンスの脅しを述べている。

In a bid to justify the attack, Putin claimed “A hostile anti-Russia is being created on our historic lands.”

“We have taken the decision to conduct a special military operation,” he said, in what amounted to a declaration of war. He claimed it was for the “demilitarisation and denazification” of Ukraine, echoing a theme of Kremlin propaganda, the false claim that the Kyiv government is controlled by the far right.

“We do not intend to occupy Ukraine,” he said, and he had a chilling warning for other nations.

“To anyone who would consider interfering from the outside: if you do, you will face consequences greater than any you have faced in history. All relevant decisions have been taken. I hope you hear me,” he said.

Russian media reported that the declaration of war may have been pre-recorded. The Russian president was wearing the same tie and seated at the same desk when he announced his recognition of the Russian-controlled territories on Monday.

  • ほか、目をひく情報。

The stage for the offensive was set on Wednesday night, after the leaders of the two Russian-controlled territories in east Ukraine sent an official request to Moscow for military aid to “help repel the aggression of the Ukrainian armed forces in order to avoid civilian casualties and a humanitarian catastrophe in the Donbas”.

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Military analysts said they expected Putin to send his forces in order to capture or surround Kyiv. There were reports in Russian state media that airborne troops had captured the airport in Boryspil near Kyiv.

The Russian military claimed that all of Ukraine’s aviation bases were disabled in the barrage of missiles that began the Russian invasion.

Smoke has been seen rising from near major airfields outside of Kharkiv and other cities in the east. But Russia also appears to have hit airfields in Kherson and as far west as Ivano-Frankivsk, which is nearer to the border with Poland.

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Thursday’s attack was preceded by a massive, continuous cyber-attack that targeted Ukraine’s ministries and banks, a form of hybrid warfare to sow confusion.

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The Russian military claimed it was not targeting population centres. “High-precision weapons are disabling the military infrastructure, air defence facilities, military airfields and aviation of the Ukrainian army,” the Russian defence ministry said in a statement carried by Ria Novosti.

But military analysts questioned whether Russia could sustain the bombardment and believed a ground invasion was likely.

“Russia has a very effective aerial, naval and ground fires capability but it lacks large stockpiles of precision-guided munitions, which is why a ground offensive appears to have begun soon after the first strikes. Russia has every incentive to move as fast as possible,” wrote Rob Lee, a senior fellow in the Foreign Policy Research Institute’s Eurasia Program.

  • とんでもないとしかいいようのない事態にたちいたっているが、まだドナルド・トランプの在任中にこれが起こらなかっただけ、かろうじてそれが一抹のすくいだといえるのかもしれない。

The secretary general, Antonio Guterres, was the first to speak, and at that time Putin’s intentions were not entirely clear. But Guterres pointed to the reports of troops moving into position, and did something notable and rare for a UN secretary general: he publicly called out the head of a security council permanent member.

“If indeed an operation is being prepared, I have only one thing to say, from the bottom of my heart,” Guterres said. “President Putin: stop your troops from attacking Ukraine. Give peace a chance. Too many people have already died.”

By the time it was the turn of the Russian representative, Vasily Nebenzya, to speak, Putin had given his address, and there was no more mystery. Peace was not to be given a chance after all. Nebenzya, who had spent weeks deriding western states for their “hysterical” warnings of impending invasion, pivoted to argue it was not actually a war that was getting under way, but a “special military operation” to protect the people of the Donbass.

The Ukrainian ambassador, Sergiy Kyslytsya, had been waiting for his turn to speak while receiving constant updates from Kyiv. When his time came, he had to dispense with his prepared speech because, he said, “most of it is already useless”. Instead he held up a copy of the UN charter and read the clause that said UN membership was open to all peace-loving states that accepted the obligations contained in the small sky-blue booklet.

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Kyslytsya himself was trembling with emotion. He stared at Nebenzya and demanded the Russian relinquish his duties as chair of the council.

“There is no purgatory for war criminals,” he warned him. “They go straight to hell.”

At that point, Nebenzya quickly closed the meeting, claiming that Russia’s aggression was not directed at the Ukrainian people, but against what he called “the junta that is in power in Kiev”. Then he adjourned and left. A security council that had begun, just about, in peacetime, had broken up in a time of war, and perhaps at the start of a major conflict.

  • いま零時直前。Simon Jenkins, ”Who can prevail on Putin now war in Ukraine has started? Peace depends on it”(2022/2/24; 10:10 GMT)(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/feb/24/putin-war-russia-ukraine-china-xi-jinping(https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/feb/24/putin-war-russia-ukraine-china-xi-jinping))も読んだ。タイトルのしたに内容が〈The Russian leader listens to China’s Xi Jinping and a circle of rich cronies. Only they may be able to prevent huge bloodshed〉と要約されているとおり。制裁はじっさい、そんなに有効とはおもえない。だが、NATOウクライナを軍事的にまもる義務はないし(ウクライナNATOに加盟していたら、その義務が発生していた)、かりに米国やNATOウクライナに兵を送ってロシアとの戦闘にはいれば、被害や破壊、それに情勢の泥沼化ははかりしれないものとなり、それこそ世界大戦の再来にすらいたりかねないだろう。だからそれはできない(〈We should also remember that the west and Nato have a dreadful recent record of such interventions, of an inability to judge their worth and when and how to end them.〉という一節には、そのあとに挙げられているキューバアフガニスタン、シリアのみならず、おそらくユーゴスラヴィアの記憶が反映されているのではないか)。そして、プーチンはもはやアメリカや欧州のいうことには耳をかさないだろうし、かれをゆいいつ説得できるとすれば、その可能性があるのは習近平だけ、というわけだ。この筆者も、それは”obscene”なことだと苦々しげに述べているが、たしかに現実、そうなっているようにおもえる。そして、かりに習近平プーチンの説得に成功すれば、多大なる流血の惨事を回避させた中国の威信は世界的にひじょうにたかまりウクライナアメリカとヨーロッパは中国にきわめておおきな借りをつくることになる。とてつもない世界だ。ヤクザがマフィアに強引な地上げをやめさせたことで英雄化され、救世主とあがめられる、みたいなことだろう。さいごの、〈That is the true failure of European diplomacy over the past 30 years.〉という一文にうなずかざるをえない。また、この件でバイデンの支持率が下がり、バイデンおよび民主党は弱腰で無能だという世論が米国内でたかまれば、ドナルド・トランプ再選の芽も出てくる。ちなみにきょう(二五日)の読売新聞朝刊でみたが、月刊Hanadaがドナルド・トランプにインタビューをしたらしく(読売新聞はページ下部にHanadaとかWILLとか櫻井よしことかワック出版の本とか、そのへんの攻撃的な右派出版物の広告をよく載せており、その記事タイトルとかでたしょうそちらのひとびとがなにをかんがえているのかをうかがうことができる)、そこでトランプは、バイデンは無能すぎる、じぶんが大統領だったらウクライナ侵攻は起こっていない、と豪語しているらしい。

This is not yet a critical moment in relations between Russia, or at least its leader, and the west. It is critical in relations between Russia and a Ukraine with which it has had a long and historically turbulent relationship. There is, or was, a way out: the Minsk agreement of 2015 between Kyiv and Moscow, recognising Donbas autonomy. The failure of both sides to implement Minsk is the cause of the present collapse, but it cannot become the cause of some wider European conflagration.

Serious talk is now known to be taking place on how to reach Putin, thrashing demented in his isolated citadel. He apparently listens to almost no one, but he does listen to China’s Xi Jinping and a tiny circle of rich cronies. It is obscene that peace in eastern Europe should depend on such people. But they must be reached. That is the true failure of European diplomacy over the past 30 years.

  • 八時半ごろに身を起こした。覚めたのはもうすこしまえ、おそらく八時になっていない時点だったろう。保育園の門があいたり、保護者と園児が登園してあいさつをしたりしているのを耳にしながら、布団のしたで胸や肩や腕などをさすったり、横を向いてすこし深呼吸をしたりしていた。胸まわりをさすって肋骨をやわらげておくのはなんか良いかもしれない。からだを起こすとカーテンをひらき、レースはかけたままにして、首をまわす。天気は白い曇りである。きょうは晴れないようだ。路上を行く車のおとにときおり水気がほんのすこし混じっているようにも聞こえたが、それは気のせいだろう。しかし雨をおもわせないでもない、寒々としたいろあいの白さではあった。ただし空気じたいはそう冷たくも感じない。身を起こしたさいに鼻の穴がちょっと詰まっている感じがあって、これはたしかに花粉の時期のそれだとおもった。きのうも、室内にいてもときどき目がかゆかったり、鼻水がすこしまえよりも出るようになっていた。さくやストアに行ったさいにアレグラFXを買えば良かったというか、レジまえにならんで待っているときにも棚のほうをみやってそういえばとそうおもったし、ひとつまえのひとも買っていたようだが、またこんど。ティッシュで鼻のなかを掃除し、いちど立つと水を飲んで、すぐにまた布団のしたに帰った。そうしてChromebookでウェブをみたり日記を読んだり。一年前の記事はウクライナまわりの情報をたくさん読んでいて、それらをすべてあらためて読んだのでけっこうながかった。国連の場をつたえた記事の文中で、〈Nebenzya, who had spent weeks deriding western states for their “hysterical” warnings of impending invasion, pivoted to argue it was not actually a war that was getting under way, but a “special military operation” to protect the people of the Donbass.〉とか、〈At that point, Nebenzya quickly closed the meeting, claiming that Russia’s aggression was not directed at the Ukrainian people, but against what he called “the junta that is in power in Kiev”〉という情報を読むと、あらためて、ほんとうに恥知らずな連中だな、このひとはじぶんが言っていることをほんとうに信じていたんだろうか? とおもう。本気で信じていたにせよいなかったにせよ、どちらにしても絶望的なわけだが。
  • 九時四七分だったかで離床。掛け布団を端に寄せ、座布団や枕もそちらにあつめて敷き布団をたたみあげる。シーツもそろそろやばい。だいぶ洗っていないので埃やゴミが。洗わないまでも、せめて晴れている日に干すか、そとに出してはたくくらいはしたほうがよい。というか晴れていなくてもはたいてゴミを散らすには問題ないのだから、きょうやっておいたほうがよい。というわけでいまやっておいた。時刻は二時で、保育園は昼寝の時間でしずまっており(そろそろ終わるはずだが)、ちょうどしたの道にだれもとおらなかった。空は一面の白さがどこまでもつづいていて、遠くのほうには水っぽい気配もわずかに混ざっているようにみえ、陽の色はなかったが、それでもやはり空気に冷たさは感じない。
  • 背伸びをしてからだを左右にかたむけ腰の両側を伸ばしたり、腰じたいをまえに突き出してうごかしたり、あと腕振り体操もちょっとやったりしてから、九時五八分から瞑想。一〇時二三分までだったからちょうど二五分。まあわるくない。ちょっと聴覚が明晰にすぎる気もしたが。おとを聞くというより聴覚じたいを聞くというか、あるいは空間を聞くみたいな感じになる。機器にヘッドフォンをつないでつけたり、あるいは音源によっては無音部にサー……みたいな響きが聞こえるとおもうけれど、それと似たような感じで、聴覚野じたいが、あるいはそこの壁までのあいだの空隙じたいがはらみもっている響きがばくぜんと聞こえるような感じで、それはたぶんじっさいにはパソコンとか冷蔵庫とかその他の製品がごく微弱な音波を発していて、それが聞こえているか、それが壁に反射する響きが聞こえているようなことではないかとおもうのだが。いずれにしてもその響きに注意が向きすぎると、聴覚や精神の衛生にはあまりよくない。
  • 食事。米を炊いておかなかった。さくばん食べ終えたあと、釜を漬けたままにしておいたのだった。だからまずそれをかたづけて、温野菜は順当につくり、あとはきのうストアで買ったチョコレートのはさまったデニッシュ。そしてバナナにヨーグルト。食後はウェブをみてだらだら。一時間くらい経つと寝床にうつってさらにだらだら。ふくらはぎや太ももをよくほぐして身をやしなう。そうして一時四〇分くらいに立つと水を飲み、きょうのことをここまで記して二時二〇分。脚をすみずみまでほぐすとやはりからだは相当楽で、皮膚のあたたかさとかふくらみとかが明確にちがうし、ゆびもしずかにかるくうごくが、だからといって左首すじや左肘付近の引っかかりがなくなるわけではない。腕振り体操もやったほうがよいだろう。あと、書きもののまえに米を炊きはじめておいた。二合だとすぐなくなってしまうので、こんかい二合半にしておいた。
  • いま午後一〇時で、ようやっと一七日、つまり一週間前の記事をしあげて投稿。どうもやはりなかなか書けませんな。ぜんぜん追いつかないのはもうしかたがない、やはり身をやしなうことを優先しつつ、その日書ける範囲で書いていくしかない。まだどうしても打鍵していて左腕とか背中とかがいやな、うっとうしい感じになってやりづらいし。それでもだんだんと、だいぶましにはなっているはずだ。ごろごろするのはやはり大事だ。ごろごろしながら脚や背面をやわらげるのが。ごろごろしているあいだにやる気があれば本も読めるし。