実家の居間にはソファがある。ベランダに続く西窓と外が宙である逆側の窓を結び、南窓から北へまっすぐ線を引いたと仮定して、ちょうどその交差部あたりに炬燵テーブルが置かれている。ソファはその横、ベランダ側に置いてある。テーブルの長辺を左右とも少しはみ出すくらいの大きさだ。母親がここに座ることは少ない。と思ったが、夜、父親が寝室に下りて以降のひとりの時間には、腰掛けるというよりも、身を縮めてもたれかかるようになりながらこの上に乗っているのを、白湯を注ぎに上がったときなど見かける気がする。見ているのかいないのかよくわからないテレビがたいてい、点いている。食卓の椅子に座っていることもよくある気がする。父親がソファに座ることも少ない。両親はふたりとも、夕食の際にはソファではなく、炬燵テーブルとのあいだの隙間に座布団を置いて尻を乗せる。大体において朝の九時頃、父親は朝食を済ませたあとに新聞をゆっくりと読んでいるらしい。いつまでもだらだら読んでて、あんなにじっくり読まなくてもいいのに、と母親が文句を垂れているのを聞いたことがある。そのとき父親はソファに腰掛け、テーブル上に新聞を広げて前かがみになり、時には片肘を膝の上につきその手で顎を支えながら、読んでいる。そのソファの下に、円形の体重計がしまわれてある。たぶんオムロンのやつだったと思う。今日の出勤前、午後五時に至る直前に、それを引き出して乗ってみたところ、五一キロちょうどだった。このあいだ人生ではじめて四〇キロ台まで落ちてしまったが、そこからはひとまず脱出した。職場では最近もっぱら、臙脂色のタートルネックセーターを着ている。塾の先生をやっていそうな格好だとじぶんで思う。先月あたりはジャケットを羽織っていたけれど、もはやその時季でなし、いまはブルゾンを上着にまとって仕事のあいだはそれを脱ぐので、上はセーターだけになる。するとずいぶんと細く貧弱に見える。身長はちょうど一七五センチくらいである。野球部の中高生だったら、このひとなら喧嘩しても勝てるな、と思うだろう。