20240921Sat.
- 八時半頃夜歩きに。無地の青い綿Tシャツを着る。部屋を出る。階段を降りる。ポストを開ける。(……)駅のほうにあたらしく建つ大型マンションのチラシが入っている。こんな市内で家賃最低ランクのワンルームアパートに住む人間など、なんらかの事情持ちか、稼ぎのたいしてない貧乏人に決まっているのだから、そんなところに豪奢で高そうなマンションの広告入れて意味あると思ってんのか? といつも思う。道に出る。左に足を向ける。公園から球を打つ音。滑り台の付近でうごめく影がある。ぱこん、ぱこん、と小気味良い音が響いている。テニスの練習と見る。影がひとつしかない。あいてとなるはずのうごめきがない。ボールはあやまたず返ってきて音がつづく。紐でくくりつけられているのか、ひとりで練習できるようになっているらしいなと見る。福祉施設の前を過ぎていく。リーリーいうタイプの虫の音はとぼしい。エンマコオロギが何匹もピヨピヨ鳴きをあげている。空気の感触に雑味がないなと感じ当たる。空は一面曇っている。だからといって湿っぽい感じもない。ことさらに涼しさがつよくもなく、ぬるくもなく、ちょうどいいあんばいの質感。と思っているところに、一滴鼻に落ちる。進みながらあたりの庭木が雨を受けはじめた気配をほのかに発しているのを感じ取る。わざわざ濡れるのもなんだし傘を取りにもどるかといちど振り向く。様子を見ることにしてふたたび進む。南の車道沿いに出て左折。少し行くと向かいにコンビニがある。団地マンションの右半分はコンビニの背景に立っている。光の列は三種類ある。白、黄色、ややぼやけて四角い感じの白。横断歩道に来る。左に折れてとりあえずアパートの間近に行くのもよかったが、盛りそうな気配でもないし、と前に進む。車のライトや街路樹かたわらの街灯をじっと見る。雨線が見えない。左手には(……)の敷地が続く。黒い柵の向こうに草花が鬱蒼と茂り立っている。ピンクのオシロイバナや、名のわからないオレンジ色の花がある。柵の隙間からはみ出している草や花がいくらでもある。何か月か前には隙間を通してだだっ広い敷地の空間が見通せて、遠くに据えられた真っ白な建物がヴィルヘルム・ハマスホイの絵画めいていたが、と思う。いまは低木や背の高い草の密度にさえぎられている。進むといくらか見通す隙間のある一帯になる。こちらも草は伸びていて隙間は乏しい。このあたりでは柵の土台のコンクリートが大きくなり、柵部分はちょうど頭の横くらいの高さになっている。左を向いていると音声が聞こえてくる。顔をふればゆったりした服を着た女性が右前から来ている。そのひとのもとからなにかアニメ声の音声が発される。すれ違ってまもなく交差点に当たる。左折する。敷地の東側を北上する形になる。境は隙間のない仕切り板だがその上からいくらかなかが見える。首を後方に曲げれば南の団地マンションも見える。遠くから見たほうが興だと思う。風がある。途切れる瞬間があまりない。ことさらつよくならないほどよい涼しさ。しかし歩いてきたからか、雑味のない大気の感触は失われている。北東の角まで来る。胃液感がややある。打鍵するとおそらく腹が痛くなるだろうからやらないほうがいいのだがと思いながらも帰ったら記すあたまになっている。横断歩道を渡ってそのまま北へ進む。右手の向かいは学校。その門のあたりから、顔大きくなったでしょとか聞こえてくる。二七キロですよ、とか答えている。子どものことかなと思う。子どもではなく、女性が犬を連れている。道は住宅街のあいだを北に抜けるひとすじである。簡便らしく、車通りが多い。たびたび過ぎていくので端に寄る。車に混じって自転車もこちらのすぐ脇を通り抜けていく。あたりには保育園だか幼稚園や、歯医者や、英会話教室もある。いくつ目かの交差部分で左折。東西にまっすぐ伸びる何本かの筋にはだいたいのところ住宅しかない。西に抜けて行き当たり、左に折れる。そのまま道沿いに行けばアパートの向かいに出ることを知っている。道沿いに進み、アパートの向かいに出る。渡る。入る。ポストからマンションのチラシを取る。階段をのぼる。部屋に入る。明かりをつける。チラシを折りたたんで紙袋に捨てる。青い綿シャツと黒のズボンを脱ぐ。肌着とハーフパンツに着替える。ChromebookをひらいてNotionに2024/9/21, Sat.の記事をつくる。文を書く。九時三四分になる。思ったよりも腹が痛くならない。