Trav’lin Light訳してたのだけど、おどろいたことに、travel lightで「身軽な装備で旅行する」みたいな意味なのだ! マジかよ。完全にこれは漂泊する光ということだとおもって、そのイメージでいいなあいいなあと感動していたところが、ふつうに旅するということだと世俗感が出て一気につまらなくなる。単に恋人に去られて失恋の旅に出るだけじゃん。クソみたいにつまらん。詩的情緒が霧散してしまう。この曲の歌詞のいいところは、恋だの愛だの悲しいだの嬉しいだの、ついでにいえばキスだのハグだの、そういったラブソングにつきものの感情語や恋愛行為がいっさい書きこまれていないところで、心情面はtrav’lin’ lightのイメージにたくして暗示的に集約させたもんだとおもっていたのだ。男に去られてどうだのこうだの直接書かない禁欲性とひかりのイメージによって、あまりにもシンプルで慎ましいことば選びにもかかわらずゆたかに醸し出される情緒に、つまり詩的情感のゆたかさとそれを表現することばのほのかさが同居しているところに感動して泣いていたのに、ただ旅するだけじゃ成立しなくなる。まあふつうにダブルミーニングだとおもうので、おれはあくまでひかりのイメージにこだわるぞ。そっちのほうがぜったいおもしろいしいい曲になるはず。took my heart awayという定番のフレーズも、ひかりは当然こころなんか持っていないわけだから、こころを取り去られてひかりになるという接続が無理なく成立する。また、I’m free as the breezeとも言っているわけで、ひかりと風はともにかたちを持たずにながれ浮遊するものとしてイメージできるから、相性がよく、I’m travelin’ lightをひかりとして考えても問題ないだろう。根拠はあるのだ! だいいち、so from today / I’m travelin’ lightで、今日から身軽に旅路に出るわってなんだそれ! そんなわけがあるか! 進行形はごく近い未来の確定した予定とかこれからなんかする意志とかもあらわせるので、たしかにそういうふうにも読めはするのだ! I’m coming.が代表例だ! だがこれはそうではない! 旅路には出させん! ひかりとして漂わせる。