昼を回って外出。好天。目の筋肉の伸ばし甲斐があるほぼ雲なしの水色の空。太陽もひらく甲斐があろう。
 南の車道沿いからコンビニを過ぎて路地の途中、創価学会の駐車場の端、緑樹がつやつや葉に光滴を乗せている。駅そばの踏切りで止められる。右手をあおげばマンション。青空にそびえてはっきりしている。最上階付近に洗濯物が多い。どんなものとも見分けられないが、色があかるい。壁はチョコレートクリームみたいなもったりとした焦茶色である。各部屋のベランダはそこに刳り抜かれた長方形のへこみであり、上下左右にそれらがたくさん並んで整然たるさまは、かなり巣という感じを受ける。人間の巣、という感じ。
 電車が消えて渡れば空き地。全域刈られて土地がひろい。茶色の気配をわずかに残したクリーム色っぽい褪せた白さの枯れ草や茎が一面を埋め尽くしている。断裂した血管がばらばら撒き散らされたように、歩みに応じてかわるがわる、そこここが細いかがやきとなる。
 光あるうちに光のなかを進めというわけで、基本日蔭を避けて日なたに惹かれ、適当にうろうろ歩く。病院裏は建物の影が濃い。道路をわたって駐車場の周りを行く。南側に高いものがないのですべて日なた。スタッフなのか入院患者か、それらしいだぼっとした服を着たあんちゃんが煙草をふかして立っている。吸うためにひとのいない場所にやってきたふう。肩身が狭そう。
 北側の路地を東へ戻っている最中、じぶんの靴音が妙にはっきり聞こえるようになったと気づく。歩いてからだがあたたまったためかと思ったが、まもなく音が鈍くなる。塀の前を通っていたからだとわかる。塀というか、造宅中の土地があって壁に囲われている。HEBEL HAUSの文字。All For Your Long Lifeとも書かれていたはず(たしか)。英字は横向きで縦にしるされている。つまり左が文字の下側にあたる。
 路地の左右の家並みの壁があかるく覆われているのを見るだけで、なにがしか美の感覚を得る。どれもきれいだ。全面日なたなのもよし、電線やそばの建物の影が乗っているのもよし。影が薄くても濃くてもよし。ただ全部日蔭となっているのはあまり惹かれない。やはりどこかに切れ目がほしい。