あと明確な変化としてはあれだ、今回、実家で新聞を読むことができた。いままではどうも、やはり文字を追うのがすこしつらくて、読む気にならなかったのだ。たいへんひさしぶりにパレスチナまわりの情報を見たり。実家の新聞は読売である。これはちょうどきょうの車中で父親が言っていたことには、こちらの一個下にH.Kというやつがいて、家はM駅の前の坂を下ってすぐの右側なのだけれど、そのKの父親のHさんがSにある読売の販売店の店長だかやっているらしく、そのつきあいでずっと読売で、さいきんも更新したらしい。それで土曜日に実家に来たとき、玄関に衣料用液体洗剤の化学的な緑色の袋がいくつも置かれてあった。これは契約更新のお礼みたいなものらしく、たぶんほんとうはもうこういうのは駄目なんだとおもうが、田舎だからまあいいだろう。ちなみにむかしは一時朝日をとっていた時期もあり、あれはなんだったのかよくわからない。ついでにふれておくとTのA家の新聞はむかしからずっと東京新聞だ。
読売の日曜版は作家が書いた一文にまつわって各地をとりあげる連載を載せており、これはけっこうおもしろい。今回はドナルド・キーンだった。日本細見(一九八〇年)から。香川県高松市の栗林公園というのがとりあげられていた。「りつりん」と読む。園内に一三〇〇本だか松があって、そのうちの一〇〇〇本いじょうだかを職人が手ずから世話して調えているということで、この園を評して「一歩一景」ということばがあるという。おお、とおもった。こちらが道をあるいているときの実感にもいくぶんか即す。ちかくの屋島山上は観光地で、たしかそこになんとかいう、明治大正あたりの農村生活を家とか道具とか、たとえば楮づくりのそれとか、あと「かずら橋」という橋とかを再現した一帯が七〇年代にできたらしく、ドナルド・キーンはこれを魅力的だと評価していたという。「やしまーる」という展望施設みたいなものも二年前だかにできたとのこと。