2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

2017/6/28, Wed.

木の下にも、暖気の漂って身に触れる曇りの昼下がりだった。空は大方白く、雲も厚く思えたが、綻びに青さがちらほらと見えてもいたようで、坂を抜ければ薄陽が眼前に浮かぶ。離れた電線で声高に、曲線的な鳴きを上げている鳥を、画眉鳥らしいと聞いてから表…

2017/6/27, Tue.

靴を履いて玄関を出る間際に、密閉された車に長く乗って酔った時のような疲労感が、鼻筋から眉間のあたりをかすかに通った。気付けば身体も、微熱ほどですらないが熱を持っており、四肢の先に頼りないようなぶれを感じる。その肉体を外の空間に慣らすように…

2017/6/25, Sun.

道を前から、風が滑ってくる。通りがかり、下方から昇って一瞬耳に触れた沢音と、肌を包む風の湿った柔らかさに、確かに雨が落ちてきてもおかしくはない気配を覚えた。高い降水確率を新聞の予報に見ていたが、玄関で傘を取る気にはならず、今更戻る気もなく…

2017/6/24, Sat.

窓から覗く空気の日影に色付いて、部屋内にも暑気が入ってわだかまる夏の風情に、この陽のなかを歩いて行くのはと怯んでいたところが、昼が下るといくらか雲が掛かって和らいだ。三時過ぎの坂には大きな葉鳴りが渡り、吹く風は厚いが重みはない。しかし途切…

2017/6/23, Fri.

仄かに陽の色の窓にあるなかで起き、枕の上に就いて瞑目しているそのなかで、風が一度、窓外に膨らんだ。カーテンをすり抜けてその裾が肌に触れてくるのが、起き抜けの、まだ暑さの移っていない身体に爽やかだった。その後の日中は蒸し暑く、服を脱いで肌を…

2017/6/22, Thu.

モニターに向かい合っていると身体が温みを帯びて蒸し暑い曇天で、夕方に到っても雲は晴れず、出ると前日の水気がまだ残っているところに、気温が上がって染み出したものか、湿った植物の匂いが大気に混ざっていた。木の間の坂を上るあいだは正面から風が走…

2017/6/21, Wed.

目覚めると、雨の響きのなかにいた。枕に腰を乗せ、瞑目して耳を寄せるうちに宙を走る雨音の拍車を掛けて迫るのに、耐えるようにしていたが、じきに音がほぐれたようになって空間に沁み、耳にも馴れたなかから、救急車の音が薄く伝わってきた。雨はなかなか…

2017/6/20, Tue.

昼下がりに到ると淡い雲が出てきて、陽の色味がやや抑えられ、粉っぽいような明るさの南窓だった。久しぶりに三〇度まで上がるらしく、シャツを着るとそれだけで、肌に触れる布地の感覚が煩わしいような夏日である。木の下の坂を行くあいだから既に汗が滲み…

2017/6/19, Mon.

覚めた窓は白く満たされていたが、じきに晴れに移行し、久しぶりに気温も高くなった日で、温めた豆腐を食えば肌着の下の肩が熱を溜める。それなのでシャツを脱いでアイロンを扱ったあと、仕事着になって出た夕刻、木蔭の坂を行くあいだは空気の軽さ柔らかさ…

2017/6/18, Sun.

玄関を出ると、夕刻に、雨がぱらぱらと落ちはじめていた。身一つならば気に掛けるものでないが、紙袋に詰めた本を見れば、繁くなった場合にそれらを守る術がないのは難儀で、傘を持つか少々迷ったが、持てば持ったで荷の多さが煩わしく、募るまいと根拠なく…

2017/6/17, Sat.

風が吹いている。道には降りて来ず、林の高く、梢のあたりを流れて揺らすそのさざめきのなかに、雨の予兆をかすかに感じ取るような気もする暮れ方である。とは言えすぐには、おそらくは今日中には降らないだろうと思われた。街道に出ても、道端の旗は絶えず…

2017/6/16, Fri.

起きた時から窓辺の空気が柔らかくほぐれており、午前はそのまま晴れていたはずだが、二時頃、ヘッドフォンを頭につけてモニターに向かい合っていると、いつか葉を打つような響きが耳に混ざりだし、背後で急な雨が始まっていた。ざっと一挙に盛り、雷も遠く…

2017/6/15, Thu.

窓辺にいると、川の気を思わせる涼しさがカーテンの隙間から薄く入ってくる夕べだった。外に出ても空気は軽く、そのなかを抜けて行くのに、何らの抵抗もなく肌に添う。昼を過ぎるあたりまで曇っていたようだが、いまは晴れ間があり陽射しが通って、街道の二…

2017/6/14, Wed.

午前には窓の外に陽の色も見え、空気に爽やぎが込められてもいたが、正午を越えて昼が下りはじめたあたりから曇りだし、外出の頃には窓が褪せていた。坂を抜けると暖気が雲を通ってくるようで、天を閉ざされた大気が温むなかに、それでも時折り風が走って軽…

2017/6/13, Tue.

薄い雨が淡々とした調子で、室内に音も伝わって来ず、降り続き、鼠色に霞んだ空気の薄暗い日だった。午後三時半、外に出れば、シャツの上にベストをつけていても、いくらか肌寒いような様子だった。鶯の声が林から膨らんで、濡れた大気のなかによく響いて抜…

2017/6/12, Mon.

風がなくとも、涼しく、軽い空気だった。夕刻に到り、曇天が割れて晴れ間と陽射しが現れていた。影の定かに浮かびあがる暖かな西陽のなか、街道を渡り、背後に目をやって雲の裾に光る太陽を眩しがってから前に向き直ると、先ほどから鳴きを落としていた燕の…

2017/6/9, Fri.

道に出た夕刻、薄緑に染まった楓の横で、正面を走ってきた風の内に植物の匂いを嗅いだ。坂にはまだ多少距離があったが、その入口を通ってすぐ脇の、伐採された斜面の樹々の香りが乗ってきたものと見えた。傍まで来ると、かえって香りは立たずに消える。鵯が…

2017/6/8, Thu.

午前から正午付近までは曇りがちな空だったが、昼下がりから陽の色が出はじめて、四時頃には山の近くに低く浮かんだ雲が青さのなかで、溶けかけの氷のように稀薄に貼り付いていた。自宅の傍の坂を縁取る林では、しばらく前から伐採を行っていて、出かけて通…

2017/6/7, Wed.

起きた窓の外に風が多く、川の響きに混じって遠くから近くからさやぎが立ち、カーテンが円みを描く。梅雨入りと言う。出かける頃になっても風は続いており、坂の入り口に掛かると林が厚い響きを籠らせてよく騒ぐ。出口近くに立った木も、風にやられて葉を振…

2017/6/6, Tue.

窓から流れこんでくる涼気が、起き抜けの肌にやや寒い曇天だったが、日中には、アイロンを手に持ちながら上半身を晒した格好になっていた。三時半を迎えて出た道は、さほど蒸すでもなく、ベスト姿の身体に馴染みの良い大気の質感である。雲は場所によって青…

2017/6/5, Mon.

鴉が、声を遠くに向けて朗々と渡らせるのでなく、間の抜けたような調子でしきりに鳴き立てている夕べだった。ともすれば拍車が掛かって喘ぎのようになりかねない、妙な鳴き方だった。空気は、さらさらと流れて涼しく、肌に安い。街道まで来ると、東の地平に…

2017/6/4, Sun.

流氷のような雲の、空に広くこびりついて浮かんだ昼下がりだった。湿り気は薄く、上り坂を抜けて受けた涼気に、これでは汗もかかないなと思ったところが、直後、にわかに道が色づきはじめ、街道に出る頃には足もとに影も弱く浮かんだ。風は気紛れで、東から…

2017/6/2, Fri.

風の厚く、多い日で、寝覚めてからしばらく窓辺に留まっているあいだ、葉を擦りながら渡っていく気流の響きが、ガラスの外の空間を賑やかに満たしている。上空でも流れるものが雲を掃き払ってしまうのだろう、空は明るく、夕刻に近づいても、食卓から見た窓…

2017/6/1, Thu.

ベッドに腰掛けて新聞を読んでいると、背後の窓先でぱちぱちという鳴りが始まって、カーテンをめくれば、雨が落ちてきている。ベランダの洗濯物を取りこみに行けば、空は雲間に水色が細く覗いて、近間の瓦屋根も明るみを淡く跳ね返すさなかの降り出しだが、…

2017/5/31, Wed.

湿り気の多くて、室内にいても肌が汗を帯びる曇天だが、三時頃に外に出ると、風は走る。絶え間も少なく、繰り返し流れるのに、林の樹々がさざめきを宙に返す。普段とは違って駅に向かわず、車で運んでもらい、町の南側、四車線を満たす風切り音の騒がしいバ…