2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

2017/3/31, Fri.

往路。雨さえ降っていないが寒々しい、灰色の午前一〇時である。とは言え、もはやコートを纏うほどの冷気はない。坂を上って行くあいだ、この日も左右の木の間から鶯の音が何度も膨らみ、また左の林からは画眉鳥だろうか、酩酊して鳴き散らしているような声…

2017/3/30, Thu.

往路、家を発って道路の上に立つと、道の隅から隅まで陽の隈なく敷かれて実に暖かい快晴で、同様に晴れた二日前よりもさらに朗らかなようで近所の屋根も艶めいている。坂を抜けて行くと、あたりから鶯の音がしきりに立って木の間に響く。風が吹けば涼しさが…

2017/3/28, Tue.

往路、陽光の張られて屋根のいくつか白く塗られた午前一〇時だが、風がよく流れる大気の感触は冷たい。坂を行く途中に、木々の向こうから鶯の音が立って、伴った膨らみの感じからすると、川向こうから響きが渡って来ているのではないかと思われた。坂を抜け…

2017/3/27, Mon.

正午前に家を出た。寒々とする雨の日で、坂を行くと木の間を抜けてくる川の音が、前日来の降りで増水しているためだろう、普段より確かに厚い。傘を持つ右手も、本の入った小型鞄を胸に寄せて抱えた左手も、どちらも風のなかに露出して、冷え冷えと芯にやや…

2017/3/25, Sat.

散歩がてら買い物に出た。四時半である。薄鈍色に染まって寒々しいような風合いの大気だったが、気温はそれなりにあって、風が流れて林の高い方では、いくらか古色の混ざった細長い竹が撓って葉を鳴らしていても、道の上のこちらには冷たさはない。家の周辺…

2017/3/24, Fri.

往路。一度春の空気の軽さを味わってしまったために身の回りを包むコートの厚みが野暮ったく思えて、ジャケットとストールのみで出たのだが、この夕方はそれほど春めいたものではなくて、風が冷え冷えといくらか肌寒い気候だった。空は隈なく白く詰まって、…

2017/3/22, Wed.

往路、雨降りの一日を挟んでふたたび気温の上がったこの日も、コートを纏わずに出た。いかにも春めいた二日前ほどの暖かさではなく、風がよく吹いて木々を鳴らすなかを歩いて行くと、頬が少々冷えるようだったが、陽射しがそれを中和してくれた。太陽は高く…

2017/3/21, Tue.

往路、朝から降っている雨が、弱まらず強まらず単調な勤勉さでまだ続いている。坂を上れば傘で狭まった視界のなかの、足もとに自ずと視線が落ちて、空を包む索漠としたような白さをアスファルトが吸って、歩みに応じて途上に広がっていくのが映る。空気はや…

2017/3/20, Mon.

往路、春分らしく、コートの必要ない暖かな夕べである。空気が動かなければ肌に触れているのもわからないほど馴染みの良い春気で、風が来ても快く涼しいばかりの軽さだった。空は雲が形なすのではなく液体のようにして全体に溶けて希薄に白いその裏に、水色…

2017/3/19, Sun.

九時前から散歩へ出た。外気に触れずに一日を終えるのが勿体なく思われたのだ。夜気はまだ、顔にややひやりとするようだった。町の下部から昇ってくる川音が、坂に入って右手に並ぶ木々の前を過ぎるあいだ、その一本ごとに確かに遮られて一時遠のくのがわか…

2017/3/18, Sat.

往路、飲み会のための外出で、時刻は既に七時半、宵も満ちて行き交う車はヘッドライトを、上下に激しく、四角いように拡大して、その上からさらにこちらの瞳に線を伸ばしてくる。裏に入ると、ちょうど夕食に向かう頃合いで、外出先から帰って来る車といくつ…

2017/3/17, Fri.

往路、まだコートを纏わなくては肌寒いような曇りの夕刻で、坂を上って行けば風が渡って周囲の木々がざわめくのに、目が細まる。道の軽く湾曲するあたりの、左手から張り出した斜面に生えた低木をちょっと見上げた瞬間、空を背後に黒く塗られた枝のなかから…

2017/3/15, Wed.

往路、玄関を出た途端に、空気の冷たさが身に触れる。引き続く曇り日の、前日と同じ三時半だが、一日前よりもはっきりと陽が洩れて、路上に影が浮かび上がった。街道に向かっていると、背中は薄陽が乗って仄かに温もるが、正面からは風が来て、身体の前面と…

2017/3/14, Tue.

往路の空気はぬるめで、道に湿りが残っていたが、西の、白さの薄くなった箇所に陽がかすかに溜まって、曇って平坦な空気の調子もほどけはじめていた。街道前の角でガードレールの内に生えた紅梅は、少し前には衣のように隈なく身につけていた花をだいぶ散ら…

2017/3/13, Mon.

二時過ぎに外出。空の曖昧にぼやけた曇り日だが空気は明るめで、風が顔に触れても、寒さに結実する数歩前に留まっている――と思いながらしかし、街道に出て正面からひっきりなしに流れる東風に、顔や胸のあたりに持続的に当たられていると、やはり冷え冷えと…

2017/3/12, Sun.

四時前に家の前の掃き掃除に出た。絶えず動いてやまない外気のなかに身を置けば、それだけで、屋内の停滞にこごった気分がふっと改まるような感じがする。道先には傾いた陽の手が淡く伸びて路上に触れており、こちらの玄関先は北側で、陽の手はここまで入っ…

2017/3/11, Sat.

昼前、ものを食いながら南の窓外を見やると、乾いた陽の色が粉っぽく舞って、風が吹いているようで家並みのあいだを走る電線が、上下に軽く撓むその上を応じて影が左右に行き来する。緑のなかに煌めくものがあるのに視線が奥に進んで、一体何が光っているの…

2017/3/10, Fri.

新聞の予報では一三度まで上がるとか言って、確かに室内にいても空気に多少のほぐれが触れられなくもないが、底にはまだ冬気の混ざって足先の冷える日である。夕刻五時の往路の大気も顔に少々固めだった。午前は綺麗に晴れたがその後雲が出て、いまも東の途…

2017/3/9, Thu.

往路。なかなかに冷たい空気の、この日も続いた夕刻である。街道前で道が表と裏に分かれる箇所の紅梅の木は、散りはじめているようで、一瞥して僅かではあるが、これまでよりも色が淡く、枝を囲む嵩が減っているのがわかった。昼には薄雲が湧いて窓の外の陽…

2017/3/8, Wed.

味噌汁のために白菜とモヤシを鍋で茹でているあいだに、夕刊を取りに玄関を出た。午後六時過ぎである。ポストに寄るとそこから見上げた空は青さが露わで、しかし曇りも僅かあるらしく、なかに左下の欠けた朧月が東寄りに掛かっている。新聞を持って振り返る…

2017/3/7, Tue.

外出、三時半頃である。往路、家を出た途端に、冴え返った空気の辛さが頬に染みる。雨は消えて、雲はまだ多いが、南の方から陽が浮遊してきて雨跡のまだ残る路上に薄く宿っていた。青から黒さの抜けきっていない空と林の、暗めの色調の背景を横切って、ちょ…

2017/3/6, Mon.

往路、曇天。雨の気配がなくもないので、傘を持った。気温はそれほど低くはない――出る前に風呂に入ったためだろう、肌の温もりが服の内に籠もり留まって柔らかく、露出した顔や傘を持つ手に触れる冷気も表面を撫でるばかりで、芯には侵入してこない。空気が…

2017/3/4, Sat.

米を研ぐ手に上から当たる流水にそれほどの冷たさが含まれておらず、長時間晒されていても、多少ひりつきはするものの、内の骨にまで食いこんで軋ませるようなあの麻痺が始まらないのに越しつつある冬の過ぎ行きが現れている。

2017/3/3, Fri.

ベランダに出ると、空気が緩く、肌に触れる陽射しの柔らかさにも春の感が立つが、洗濯物を取りこむあいだに風が動くと温もりが涼しさへと転じ、さらに吹けばやはりまだ冷たさが残る。畑を囲む斜面に低く生えた梅桃[ユスラウメ]の、手指をやや湾曲させながら…

2017/3/2, Thu.

往路、雨降りの日である。肩口は上着に守られて温もるが、外気の摩擦が鼻先に強く、冷たい。街道との交差点の脇の、ガードレール沿いに生えた紅梅は、枝を端から端まで膨らんだ花に装われて堂々と、揺らがずに静まっていた。表通りに出ると、風の動きが活発…

2017/2/28, Tue.

往路。空は坂に沿って並ぶ木々の毛細血管めいた枝振りをその上に黒く刻印されながら、軽い水色に広々とひらき、低みではそのまま和紙の淡紫に移行している、晴れた晩冬らしい夕刻である。コートの下の身体の方には冷気がさして伝わって来ないが、真正面から…