2022/9/27, Tue.

それでカフカの「本当の意志」はどうなのか? フェリーツェにあてた終りごろの手紙(一九一七年一〇月一日)で、彼は自分のなかに戦っている二つの存在について語っている。この二つのものの戦いが彼なのであり [﹅5] 、その戦いのなかで自分は滅びるだろう…

2022/9/26, Mon.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●66(「エロディヤード」; Ⅲ 聖ヨハネの讃歌) その超自然の停止が 上げた太陽は 直ちにまた落ちる 白熱して あたかも椎骨の中で 暗闇が戦慄しながら ひろがって一つに融合するのを 私は…

2022/9/25, Sun.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●60(「エロディヤード」; Ⅱ 劇; 乳母) 貴女の寵愛の財宝が待つ神が異常に 和し難いものであり、神自身哀願者である ということは、暗い恐怖心からでなければ 想像出来ない! (……) い…

2022/9/24, Sat.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●56(「エロディヤード」; Ⅱ 劇; エロディヤード) 私の髪は人間の苦悩を忘れさす 香りを放つ花でなく、黄金でありたい、 香料の残忍な光の中でも、鈍い薄明の中でも、 金属の不毛の冷寒…

2022/9/23, Fri.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●52~53(「エロディヤード」; Ⅰ 序曲) そしてすぐにその紅色の薄暮が 後ずさりする肉体の蠟を貫くだろう! 薄暮ではなく紅の日の出だ すべてを終らせる最後の日の出だ。 人々はもうそ…

2022/9/22, Thu.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●51~52(「エロディヤード」; Ⅰ 序曲) 彼女は時々混乱して 悲痛な予言を歌った! なめし皮の小姓が給仕する食事用寝台は 亜麻布でなく、役にたたなく修道院的よ! 夢をひそますあの懐…

2022/9/21, Wed.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●48~49(「エロディヤード」; Ⅰ 序曲) この独特な舞台装置の室 [へや] は、 戦争時代の栄華、色ざめた黄金、 かつては古代色の雪の白さであった その壁掛は真珠母の光沢があり(end48…

2022/9/20, Tue.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●47~48(「エロディヤード」; Ⅰ 序曲) 乳母 (呪文) 廃滅して、その恐ろしい翼が、その驚きを 写す廃滅した泉水の涙の中で、裸の黄金の 羽で深紅色の空間を打ち 一つの暁は羽の紋章と…

2022/9/19, Mon.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●45~46(「詩の贈物」(Don du Poème)) 夜明は、香料と黄金に焼かれたコップを通して 凍った、ああ! まだ曇った窓ガラスを通して 天使のようなランプの上になげられた。 ヤシの木だ…

2022/9/18, Sun.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●43~44(「施物」)(Aumône) この財布をとれ乞食よ、君は欺し取らなかった 乳房を貪る老いた乳のみ子よ、一枚一枚の銭から 君の弔 [とむらい] の鐘をしぼり出すために。 この貴金属か…

2022/9/17, Sat.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●33(「あの苦い休息に厭き……」(Las de l'amer repos)) また賢人の唯一の夢にみられるような死の 静かな落着で私は若々しい風景を選びましょう それを私は再び茶碗の上にぼんやり描く…

2022/9/16, Fri.

西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)●31~32(「あの苦い休息に厭き……」(Las de l'amer repos)) 私はかつて一つの栄光のために自然の青空の下 薔薇の咲く森の美しい幼年期を避けたが 私の怠惰がその栄光を傷つけるあの苦…

2022/9/15, Thu.

すべて要約された精神は―― 私達がそれをゆっくり吹いて 幾つかの煙の輪にするがそれが また他の輪の中へ消えて行く時 ――一本の葉巻か何かを証明する それは物知りらしく燃えている 灰がその輝く接吻の火から(end126) 少しでも分離されるならば 同様に抒情…

2022/9/14, Wed.

碑 一周忌――一八九七年一月 北風に吹き流される黒い巌の怒りは 信仰者たちの弁護があっても止まないだろう この人たちは何か原罪の宿命を祝福するかの 如く人間の罪悪中に原罪の類型を探すのだが。 山鳩が鳴くとしてもここではいつものように その無形の哀悼…

2022/9/13, Tue.

エロディヤード そう、孤独に花咲くは自分のため、自分のためだ。 巧妙に目を眩 [くらま] せられたどん底に無限に 埋もれた紫水晶の庭園よ、君は知る。 原始の土地の厳しい睡眠の中に 君の古の光を守る未知の黄金よ、君も知る。 純粋な宝石のような私の眼が…

2022/9/12, Mon.

病的な春が悲しくも追放してしまった 冬を、静朗な芸術の季節、透明な冬を そして陰鬱な血液が支配する私の存在の中で 無気力な長い欠伸となってのびている。 古い墓のように鉄をめぐらし締めつけられる 私の頭蓋の下では白い黄昏も生温くなったろう そして…

2022/9/11, Sun.

月は悲しむ。天使は涙を出して 夢み、指に楽弓、かすんだ 花の静寂に死にそうなヴィオロンを すすり泣き花冠をすべる ――それは君の最初の接吻の恵みの日。 殉教者になりたい私の夢想は 物知りらしく悲しみの香りに酔った、(end15) 後悔も苦い後口さえもな…

2022/9/10, Sat.

人が皆、軽蔑の唾を彼等の顔へふきかける時 価値もない、また雷に祈 [いのり] をささやく髭 [あごひげ] にすぎない これらの英雄たちはおどけた不安につかれ 滑稽にも街燈で首を吊りに行く。 (西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九…

2022/9/9, Fri.

ありがとう、新しい年はわたしにとても親切だ。つまり、言葉がわたしに向かって、形となって湧き起こり、舞いながら飛んで来るということだ。どんどん年老いていくにつれて、この魔法のような狂気がますますわたしを包み込むかのようだ。奇妙で仕方がないの…

2022/9/8, Thu.

夜になると、わたしはコンピューターに向かうこともある。そうでなければ、無理をしたりはしない。言葉が浮かび上がってこないかぎり、じっとしていればいい。何も閃かなくてコンピューターのそばに近づかないこともあって、死んでいるのかただ休んでいるだ…

2022/9/7, Wed.

ほら、『我が心』はあの頃そのもので、それは奇妙な時で、その時わたしは若くすらなかった。そして今、わたしは七十二年生きてきて、工場やつまらない仕事から何とか抜け出そうとずっと頑張っていたようなものだ。今も書くことはいっぱいあるように思え、言…

2022/9/6, Tue.

わたしは駆け出しの作家だという思いにずっと囚われ続けている。そこではかつての興奮や驚きが甦る……素晴らしい狂気だ。あまりにも多くの作家たちが、このゲームにしばらく参加しているうち、熟練しすぎ、用心深くなりすぎてしまったとわたしは思う。彼らは…

2022/9/5, Mon.

確かに、わたしはあなたたちが創作や作家たちをどんなふうに捉えているのかわかる。わたしたちは対象を見失ってしまっているようだ。作家たちは作家として有名になりたくて書いているようだ。何かに極限まで追い詰められて彼らは書いたりはしない。パウンド…

2022/9/4, Sun.

書くことはわたしたちが何年もかけて日々どうなっていくのか、その結果にしかすぎない。自分が何をしたのかが指紋のようにくっきりと映し出され、逃れようがない。そして過去に書かれたものなどすべて無意味だ。何が大切なのかと言えば……次に何を書くのかだ…

2022/9/3, Sat.

わからないよ、A・D、自分がどうやってやってこれたのかよくわからない。酒にはいつも救われた。今もそうだ。それに、正直に言って、わたしは書くことが好きで好きでたまらなかった! タイプライターを打つ音。タイプライターがその音だけ立ててく(end269)…

2022/9/2, Fri.

わたしはロマンチックになっている、確かに。かつてこんな女性を知っていた、とてもきれいだった。E・パウンドの恋人だったこともある。彼は『詩篇/Cantos』の中のある節で彼女のことに触れている。さて、その彼女がある時ジェファーズに会いに行った。彼の…

2022/9/1, Thu.

わたしが何を言おうとしているのかといえば、幸運が巡ってきても、それを真に受けるなということだ。二十代で有名になったりすると、それに押しつぶされないようにするのは至難の技だ。六十歳を過ぎて少しだけ有名になったとしても、うまく対応することがで…

2022/8/31, Wed.

書くことがわたしにとって務めになったことはこれまで一度もなく、たとえまるでうまく書けないとしても、わたしは書くという行為そのものやタイプライターが立てる音、仕上げることが好きなのだ。そしてたとえうまく書けないとしても、決して無駄にはならず…

2022/8/30, Tue.

(……)わたしが思うにミラーが引き起こした問題は(彼のせいではないが)、頑張って自分の作品をせっかちに(早めに)出してしまい、それゆえそれが正しいやり方なのだとほかの人たちに思わせてしまったことで、そこで半人前の作家の大隊が押し寄せてドアを…

2022/8/29, Mon.

(……)立派な態度などくそくらえだ。そんなものはわたしとは縁がなかった。わたしは酒を飲み、女とやって、酒場で気が触れ、窓ガラスを叩き割り、自分の本音をとことんぶちまけ、生きてきた。わけなどわかるはずがなかった。わたしは今も必死で取り組み続け…