2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

2022/11/30, Wed.

(……)今朝、起床前非常に不安な眠りのあと、ぼくはたいへん悲しく、悲しさのあまり窓から身を投げるというのではないけれど(それはぼくの悲しさにとってまだ元気がよすぎることだったでしょう)自分をちびちびとこぼし出してしまいたいくらいでした。 (マ…

2022/11/29, Tue.

最愛のひと、ぼくを引受けてください、ぼくを支え、まどわされないでください。日々はぼくをあちらこちらと投げ交わします。あなたがぼくから決して純粋な喜びを得ることはないだろうということ、それに反し人が望みうるかぎりの純粋な苦悩を得るだろうとい…

2022/11/28, Mon.

ぼくの義弟についてまた書きます、マックスについても、レーヴィについても。なにについて書くかは結局ぼくにはどうでもいいことなので、ただ一語一語でもってあなたに、最愛のひと、かかわりをもつと思えることにだけ価値があるのです。(……) (マックス・…

2022/11/27, Sun.

二晩続けてよく書くことには、もう長いあいだ成功したことがありません。なんと不規則に書かれた塊りになることでしょう、この長編は! 最初一度書きおえてから、死んだ箇所になかばでも生命をふきこむのは、なんと困難な仕事、あるいは不可能な仕事となるか…

2022/11/26, Sat.

ぼくの最愛の子よ、終りました。より良い時間の見通しが生まれ、まずまずの満足感がきざしはじめました。時折ぼくは、こうした無縁の人々から解放されるためには、犠牲が大きすぎるということはない、妹を犠牲にしたってかまわないという感じがします。もち…

2022/11/25, Fri.

いや、もう書き続けるには本当に遅くなりました。ぼくが今晩散歩で見つけた一ヘラー銅貨を同封するだけにしましょう。ぼくはなにかを嘆いていました(ぼくが嘆くことのできないようなことは絶無です)、不満な気持でなにかを強く踏みつけ、爪先で鋪道を探る…

2022/11/24, Thu.

哀れな、哀れな最愛のひと、ぼくが愚かしく書きなぐっているこの惨めな長編小説を、どうか読まなくちゃならないなどと感じないでください。小説がその姿をどんなに変えることができるか、恐しいくらいです。重荷が車の上に載っておれば(なんという弾みでぼ…

2022/11/23, Wed.

ぼくらは自分の不安を交換し合っているような気がします。今日はぼくが不安な人間でした。あなたがそれでもぼくの手紙を受取ったかどうか、知りたかったのです。今日一日のうちに、次の瞬間があなたをぼくのところに連れてこないなら、もうその瞬間に堪える…

2022/11/22, Tue.

(……)しかしぼくはぼくの問いに対して明瞭すぎるくらいの答えが、すべての面から、だから現実面からも独立した答えが欲しいのです。だからぼくはぼくの問いもあんなに明瞭すぎるくらいに提出したのです。だから答えてください、最愛の女生徒よ、先生に答え…

2022/11/21, Mon.

今晩八時にまだ床についたまま、疲れてもいず、元気でもなく、しかし四方八方で始まった大晦日の祝祭に意気銷沈させられて起き出すことができなかったとき、ぼくがそんな悲しい気分で、犬のようにうち棄てられて横たわり、そして友人たちと晩を過すこともで…

2022/11/20, Sun.

あなたのお母さんがあなたに対してそんなに暴君的であるという点はよく理解できません。他のすべての点では彼女のことは大変よく分ります。あなたは自活しているのだから、うちのなかで、ぼくの知るかぎりただ家事を手伝っている妹さんに対しても、特別な地…

2022/11/19, Sat.

(……)ぼくは出かけなくちゃならない、ちょうど親戚の者たちがひどくやかましい声を立ててやって来たのです。家はふるえ、ぼくは見られず聞かれないようにして玄関の間から逃出します。あなたと一緒だったら! あなたのためなら、ぼくは階段を下りるのさえ静…

2022/11/18, Fri.

(……)――以前、ずっと前に、手紙が来なかったとき、ぼくは書きました、ぼくはもう手紙を期待しない、すべてはおわりだ、と。今日ぼくは言います、手紙を書くのは中断するとしても、ぼくらはお互いに非常に近しくして、手紙を書くのが不必要であるばかりでな…

2022/11/17, Thu.

それではごきげんよう、少女よ、少女よ! あなたに良い日曜日、優しい両親、おいしい食事、長い散歩、澄んだ頭脳がありますように。明日またぼくは書きものを始めます、ぼくは全力で突っこみたい、書いていないと、ぼくは(end175)自分が強情な手で生から押…

2022/11/16, Wed.

(……)ぼくはあなたの悩みにあなたとおなじように関わっているのです。あな(end170)たののどが痛むとき、ぼくもそうだというのではありませんが、そうきいたり予感したり、心配するだけで、そのためぼくもぼくの流儀でおなじように苦しむのです。そしてさ…

2022/11/15, Tue.

しかしお願いですから、最愛のひとよ、どうか卒直に答えてください、一体これはどうしたのですか? あなたはぼくに決して病気ではないと書いてきましたが(ぼくはそのことを尋ねたことは全くなかった、あなたの頬や眼から健康は見てとれるのだから)そのあな…

2022/11/14, Mon.

(……)もう三時半です。ではごきげんよう、ぼくの最愛のひと。いや、あなたとだけ居ることを、ぼくはあなたが思っているようには考えませんでした。なにか不可能なことをぼくが望むとすれば、ぼくはそれを全体的に望みます。つまり全くひとりで、最愛のひと…

2022/11/13, Sun.

(……)そこで、ぼくらの考えと心配を単純化して、つぎのように言いましょう、彼女は手紙を読み、彼女だけでなく妹さんも読んだかもしれないと。妹さんの電話での受け答えは、少くともあなたの説明に従うと、ぼくにはあまりにも簡単で疑わしくひびきます。だ…

2022/11/12, Sat.

あなたの今日の速達の手紙は落着いていますが、その落着きを信じていいのでしょうか? ぼくはお手紙をいわばあらゆる角度から読み、それに疑わしいところが見出せないかどうか調べました。悩みと疲れのあとで突然現われた元気と快活さをどう受取ったらいいの…

2022/11/11, Fri.

(……)壁のすべての写真(ベレー帽をかむった一人の男性の分を除いて)の上にあなたを探し、さしあたり三つだけ見つかりました。正しければ、保証してください。まちがっていれ(end161)ば、そのまま信じさせておいてください。(……) (マックス・ブロート…

2022/11/10, Thu.

ああ、最愛のひと、ぼくの敬虔さは全く別の方角におしやられているけれど、今日のお手紙にたいしては、神にひざまずいて感謝したくなります。あなたのためのこの不安、あなたのいない部屋々々に全く無益にいるというこの感情、限りなくあなたをこんなにも必…

2022/11/9, Wed.

(……)この写真に、最愛のひとよ、あなたは慣れることができるでしょうか? この人間はあなたをまだキスできるのでしょうか、それともキスしないで署名しなければならないのですか? しかし結局のところ写真はまだ我慢できますが、人間自身が現われたら? ――…

2022/11/8, Tue.

(……)最愛のひと、われわれが本当に会ったとき、ぼくがいまのようにあなたと別れがたくなったとしたら、ぼくが手紙であなたに与えた苦しみは、ぼくと実際につきあう苦労に比べれば些細なことだったということがお分りになるでしょう。(……) (マックス・ブ…

2022/11/7, Mon.

あの晩から、お客がしたあなたの不幸な恋についての問いまでは、なんと遠いことでしょう! そして紅くなるのは肯定なのですから、この場合紅くおなりになったのは、あなたがそれを知ってはいけないかもしれませんが、次のことを意味していたのです――「そう、…

2022/11/6, Sun.

どうか正確に、あなたが元気なのかどうか、書いてください。あんな頭痛! あんな涙! あんな神経過敏! 最愛のひと、ぼくは幾度でもお願いしますが、ちゃんと寝て、散歩なさい。そして、ぼくの手紙を読んで、ぼくの不注意から取り除けなかった非礼な箇所が近…

2022/11/5, Sat.

(……)ぼくはいま前の文章を書いたとき、まっすぐ上の方を自分が見たのに気がつきました、あなたが上の方にいるかのように。あなたが上にいなくて――残念ながら実際はいるのですが――このぼくのいる下にいてくださったら、いいのですが。それはほんとうに低い…

2022/11/4, Fri.

(……)ぼくは両親をいつも迫害者と感じてきました。一年前まではあるいは彼らに対して、世間全体に対してと同様、命のない物とおなじように無関心だったかもしれませんが、いまわかったように、それはただ抑圧された不安、心配、悲しみだったのです。両親と…

2022/11/3, Thu.

ぼくへの母の愛情は、ぼくへの彼女の無理解とまったく同じように大きく、この無理解から愛情へと移行する無遠慮さは、あるいはさらに一層大きいものであるかもしれず、ぼくには時々まったく理解しがたいものです。 (マックス・ブロート編集/城山良彦訳『決…

2022/11/2, Wed.

またも私が書くのはお答えではありません、問いと答えはそれが思うままに縺れさせておきましょう。(……) (マックス・ブロート編集/城山良彦訳『決定版カフカ全集 10 フェリーツェへの手紙(Ⅰ)』(新潮社、一九九二年)、85; 〔労働者災害保険局用箋〕〔…

2022/11/1, Tue.

(……)しかし『感情教育 [エデュカシオン・サンティマンタル] 』は長年の間、ぼくにとっては、二、三人もいないくらい近しい人間とおなじように親しい間柄でした。いつ、どこでこの本を開こうと、はっとぼくを驚かせ、心を奪いました。そうしていつもぼくは…