洗濯物を取りこもうとベランダに続くガラス戸の前に立つと、部屋の内にいる時点で既に光線が抜けてきて目に眩しく、また大層温かい。戸をひらいて境の付近に留まりながら、吊るされたものを引き寄せているあいだも温もりは同じだが、外に踏みだしてひらいた大気のなかに入ると、さすがに肌の上を流れていくものがそれなりに冷たかった。陽はだいぶ高くなったようで、林の樹冠とのあいだを純白に埋めてひらきがあった。
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往路。裏道を進む途中に、左右に(それは南北の方向であるが)走る坂道が挟まっている。横断歩道を渡りはじめると、向かいの、ふたたび続く細道の角に置かれた南西向きのミラーに、四時前でもまだ陽が映りこむほどに日は長くなって、下り行く落日が空いっぱいにひらいているのが上端のほうに反映している。それで渡りながら足もとを見下ろすと、斜めに傾いだ坂道の上に楕円形が投影されているのを、過ぎて道に入っても振り向き目をやった。鏡の縁が本体よりも強く光を弾くのだろう、円周は光の色が強く、凝縮されており、間延びした卵のような形に路上を区切って、そのなかはアスファルトの色味を乱すほどではないが、それでも薄衣めいて気体として立ちそうなほどに稀薄な光が被せられていた。