三時前に外出。前日に続く晴天で、まだ陽だまりも広く、道を縁取った石壁の上から張り出している木々のその影が、路上に騒ぐ。裏通りを抜けて街道に出れば、一面に広がった日なたのなかで、肩の上に心地よい熱が乗って、汗ばんでくるくらいの温暖さだった。素早く宙を渡る鳥の影が、道や家壁の上を、水面を伝う波紋のようにして、瞬間過ぎ去っていく。表から一本裏に入ったところに覗く、中学校の校庭の端に並ぶ桜は、花を過ぎて萼の赤茶色と葉緑が混淆しており、鮮やかな華やぎの担当は花水木のそれに交替される頃合いである。小公園を過ぎざまに覗いてみても、地には褐色が砂のように散り敷かれている。裏に入って丘を見やれば、少し前は萌えはじめの薄緑と冬を越えた常緑樹のまだ深い色とが明暗の断層をくっきりと作って、森の中途に黴が湧き混ざったかのような不均衡に映らなくもなかったが、緑の摺り合わせがいくらか進んで、まだしも均整が取れてきたようである。同じ色合いの地帯や、同じ一本の木のなかにも、褐色が混ざったり淡かったりと、一口に緑とは言いながらも実に多様な色彩の変化が含まれて、細かく組み合わさっているなかに、高いところで桜の薄紅がほんの少しだけ残った一片があり、低みではまだ枝の露わないくつかが、芽生えたばかりでやはりほかとは違って黄味の強い若葉色を先の方にくゆらせていた。