例によって一二時までだらだらと寝坊する。上階に行くと母親が食事を取りはじめているところだった。こちらも冷蔵庫から前日の天麩羅の残りを取り出し、電子レンジで加熱する。そのほか、米・大根の味噌汁――味噌汁には珍しく生姜の風味が感じられたので訊いたところ、出汁と間違えて生姜の粉を入れてしまったということだった――南瓜のサラダなど。新聞はめくってはみたものの、特段興味を惹かれる記事を見つけられなかった。食事を取ると食器を洗って片付け、それから抗鬱剤ほかを服用する。そうして下階へ。母親はまもなく、「K」の仕事に出かけていった。
コンピューターを起動させ、前日の記事の記録をつけ、この日の記事もEvernoteに作成すると、一時直前から読書を始めた。ハンナ・アーレント/ウルズラ・ルッツ編/佐藤和夫訳『政治とは何か』である。外は湿った軽い雨降り。窓を閉ざして、FISHMANS『Oh! Mountain』を背景にして、胸のあたりまで布団を掛けてクッションに凭れ、脚を前に伸ばしたり曲げて膝を立てたりしながら読み進める。さすがに一一時間も床に留まっていただけあって、眠気に刺されることはない。二時過ぎ頃だっただろうか、上階に人の気配が生まれた。重そうな、ゆっくりとした足取りからして父親である――今日も早く帰ってくるらしいということを母親から聞いていた。三時に至ると読書を中断し、風呂を洗いがてら顔を見に行くことにして部屋を抜け、階段を上がるとソファに就いて本を読んでいる父親に、おかえり、と小さな声を掛けた。そうして浴室に行って、風呂を洗う。久しぶりに浴槽の外側の壁、そして入り口の扉の際にあたるあそこは何と言えば良いのか、扉が閉じる時に接触する下端の部分も洗っておいた。そうして室を抜け、台所に出ると冷蔵庫から菓子パンのホットドッグを取り出し、電子レンジで三〇秒温める。夕食には鯖をハーブと混ぜて焼いてくれとのことだった。鯖の場所を確認したりしながら加熱を待ち、終わるとなかのものを取って下階に下り、コンピューターの前に座りながら食べた。その後しばらく、Bill Evans Trio『The Complete Village Vanguard Recordings, 1961』(Disc 3)を掛けながらだらだらとした時間を過ごしたのち、Antonio Sanchez『Three Times Three』を流して日記の作成に入ったのが四時ぴったりである。二〇分少々で前日の記事及びここまでのことを仕上げた。
YさんとTwitterでやり取りをしながら――何をしたのだったか。何かしらのことをして、五時半頃になると上階へ夕食を作りに行った。まず最初に、フライパンが汚れていたので、水を汲んで火に掛けた。手帳を持ってきて眺めながら沸騰を待ち、まもなく湯が沸くと零して、キッチンペーパーで汚れを拭う。そうして綺麗になったフライパンに油を引き、ローズマリーを散らしてから鯖を投入した。皮を下にしてこんがりと焼いていく。合間に、大根・胡瓜・玉ねぎを洗い桶にスライスして溜めた。それを笊に上げて食器乾燥機のなかに置いておき、さらに水菜を用意したのだが、袋にさっと茹でるようにと書いてあった。生でも良かろうと思ったのだけれど、一、二本生で食ってみると、ちょっと苦味と言うか、妙な風味のようなものがあとから感じられたので、茹でることにして、鯖を焼き終わったあとにもう一つフライパンを準備して、短く茹でた。それも別の笊に上げて、先ほどの野菜とともに食器乾燥機に並べて置いておき、あとは味噌汁は昼間の残りがあるので、これで支度は終わりである。こちらが台所で立ち働いているあいだ、父親は一貫してソファに就いて本を読んでいたが、支度が終わって居間に出ると、ありがとうと小さな声で礼の言葉を掛けてくれた。そうして下階に戻った。戻ったあとは確か、T田のクラシック選集を背景にしてだらだらとした時間を過ごし、七時半頃まで怠けたと思う。
食事へ。米・鯖のソテー・大根や水菜のサラダ・大根の味噌汁である。テレビは貧困生活をしている子供に対する学習支援の取り組みについて報じていて、そのなかで支援を受けている子供の一人が、本音を漏らしたといった感じで、自分が住んでいる家のことを、こんな場所は家ではない、小屋だね、小屋、こんなところが家だったら絶句だね、と言っていた。その「小屋」という言葉選びがやはり少々衝撃的で、印象に残った。
その後、入浴。長めに浸かって、散漫な物思いを巡らす。T田から先日、来年大阪で暮らすことになりそうだからルームメイトにならないかと誘われたのだが、もしそのような生活が実現したらどのような暮らしになるだろうかと想像していた。そうして上がり、下階に戻って、八時半から「記憶」記事の音読。この復習も最近では面倒臭くなってきて、ここ一週間ほどは取り組んでいなかった。一項目につき二回ずつ読むのも面倒臭くなってきて、この日は大方一回ずつで済ませ、一一五番から一二六番まで。やらないよりはやった方がまだましだろう。
その後、九時半から読書、ハンナ・アーレント/ウルズラ・ルッツ編/佐藤和夫訳『政治とは何か』を読み終える。それから何をしようか迷った。本を読み続けるには気力が少々足らないようだった。また、読むとしても次に何を読むか、ムージル『特性のない男』の続きを読む流れに復帰するか、それとも翌日図書館で何かを借りてきて読むか、そのあたりが決断しきれなかったので、しばらく床に臥して目を閉じ、掛かっていたLeopold Stokowski: New Philharmonia Orchestra『Tchaikovsky: Symphony #5; Mussorgsky/Stokowski: Pictures At An Exhibition』の演奏に耳をやった。T田はこのチャイコフスキーの交響曲第五番の演奏は、第二楽章がいわゆる美しいクラシック音楽のなかでは最高峰だと言っていたが、こちらは豪壮なメロディの第一楽章の方が好きかもしれない。音楽が流れるなかで、本を読むのではなくて手帳を読み返していたが、そうしているうちにいつの間にか意識を失っており、気づけば一時を目前としていたのでそこで就寝した。
・作文
16:00 - 16:22 = 22分
・読書
12:54 - 15:07 = 2時間13分
20:33 - 20:51 = 18分
21:32 - 23:10 = 1時間38分
計: 4時間9分
・睡眠
1:00 - 12:00 = 11時間
・音楽
- FISHMANS『Oh! Mountain』
- Bill Evans Trio『The Complete Village Vanguard Recordings, 1961』(Disc 3)
- Antonio Sanchez『Three Times Three』
- 『Classical Music Selection』
- Dominique Visse; Ensemble Clement Janequin『Janequin: Le Chant Des Oyseaulx』
- Leopold Stokowski: New Philharmonia Orchestra『Tchaikovsky: Symphony #5; Mussorgsky/Stokowski: Pictures At An Exhibition』