きょうはあさに雨が降っていたが、一時くらいにはやんだ。カーテンの白さの向こうにひかりの白さがうすくかさなる昼だった。二時二〇分ごろ歩きに出た。無印良品で買った煉瓦色と黄土色の中間くらいのシャツに、なじみのブルーグレーのズボン。うえはモッズコートではなくジャケット。藍色の。道に出ると太陽は雲にかかりながらも空にあらわれて白く、まるく、陽射しもたしょう通りに降る。南へ。空はすっきりしきらず、淡い水色のうえ、輪郭線をうしなってかたちを囲いきれない雲がいくつもいくつも乗って同一面になじんでいる。公園の端で右に折れる。右側にならぶ家々のうち、一軒のまえに赤いあたまの小さ木がある。やたらと赤い。薄桃色もわずかにみえて、それがはらりとはなれてすべったので、梅とわかる。ちかくまで来ると、おおかた花は散って、花びらの中央に位置する真っ赤な残りものだけがたくさんついている。花柄というので合っているのだろうか。水気をなくした赤だが、つよく、ことによるとまだ艶で、キノコのような毒々しさへと印象が転じかねない。路地を出ると左右の車に会釈をしながら渡り、左にながれてコンビニの角。DUSKINの車が止まっており、ちょうどエンジンをかけだした。過ぎてきょうも車道沿いではなく裏道にはいる。ジャケットだとまだ風がつめたい。首もとが寒々しい。手も冷えている。H通りまで来て右折。歩道を北へ。小学校の横を過ぎる。道路の向かいは工事をしている。ヘルメットをつけた女性警備員が、自転車で来た年配の女性に、自転車の方、歩道のほうへ! と声をほうっていた。東西にまっすぐながい通りにあたると右に折れる。寒い。ここに陽のさしこみはない。もとは犬猫なんかの美容院みたいな店だったらしい建物が、値段の表示だけおもてのガラスにのこして、なかは暗い残骸となっていた。始末の最中で、ヘルメットをかぶった作業員がみえた。すすんでいくと公園がある。横をとおっていると、すぐ右にちょっとあつまった木立のなか、一本のもとにハトがおり、その目のまえに実のようなものがやたらとたくさん、水たまりのようにひろがっていて、ハトはしきりにつついている。さかいをはさんですぐそばをとおっても反応せず、つつきつづけている。木から落ちた実かとおもったが、あんなに集中するはずがない。ほかの木のもとにも見当たらない。だれかが撒いたらしい。公園をすぎると右に湾曲しながらはいっていく横道がある。団地に接している。サザンカか寒椿かわからない低木がまだ赤い花をつけている。歩道は道路からすこしもりあがった段になっている。アスファルトのうえに、ふたつのものが落ちている。ひとつは茶色の紙袋。もうひとつは、とおいうちはちいさなおもちゃの車輪のようにみえた。あるいていき、横まで来ると、喫茶店でコーヒーなんかを入れて出す蓋付きの紙コップだとわかった。黒い蓋のぶぶんが真正面からのぞむと車輪のようだったのだ。コップぶぶんは黄色だった。裏道に合流して南に向かう。沿っていけばアパートに出る。とちゅう、真っ青な自販機と二股の木と、褪色したビリジアンの古い階段と青いビニールシートのかかった車庫的な建物がひとならびになっていて、すごくちぐはぐな家があり、なんだこのちぐはぐさ、すごいなとおもったけれど、疲れてもうめんどくさいので詳述はしない。