三時半ごろ外出。スーパー行き。きょうもやはりジャケットは必要ない。無印良品の茶色いシャツと、ブルーグレーのいつものズボン。午前中は曇っていたが、このころには陽射しが出ており、雲なしのじつに晴れ晴れとした青空とはいかないものの、ひかりの色はそれなりにあって空気もあたたかい。アパートを出ると右手へ向かい、すぐに抜ける口から対岸へ。左を向けば西空の太陽が視界にまぶしく、上方は白光で埋められて、前方、T字の突き当たりの一軒にある車はあたまの角に太陽をちいさくうつして放射しており、もっと手前、こちらの間近で道路を渡った年かさの男女ふたりのうち、眼鏡をかけた男性の禿げ頭にも車のボディほどではないが白さが乗ってつやめいている。ふくまれた骨材のおかげでアスファルト上がいたるところきらきらと粒でひかる。T字の横断歩道を渡ると豆腐屋の横から細道へ。おとといよりも風があり、近間の庭木がふるえるが、肌寒いというものではない。路地のとちゅうで白髪の婦人と年若の婦人が立ち話をしており、高齢のほうが、ずいぶん仲が良い、仕事のことでお互いわかる、似たようなこともあるみたいで、弟も兄に相談するし、兄のほうも弟に相談するし、などと穏和な口調でしゃべっていた。若いほうがこちらの接近をみとめてはなしあいてにちかづき道をあけたそのうしろを通っていき、手の指を伸ばしたりしながらしばらくすすんでH通りに出る。左折。歩道を行き、横断歩道まで来ると信号待ちで立ち止まった。対岸の右のほうには寺の敷地に立っている木が二本みえて、こずえの葉叢がじつにあきらかにみどりしており、薄青い空を背景に風にさわさわかたまりで揺らいでいるのをながめているうち、信号が変わっていたので渡って店に入った。耳におぼえのある、たぶんJackson 5かなんかのゆうめいな曲がながれていたが、ヴィブラフォンなんかもふくんでちょっとジャズっぽいアレンジになっていた。豆腐とか小松菜とかキノコとかヨーグルトとかもろもろ購入。荷物を整理して退店すると横断歩道が青だったので渡ろうと踏み出せばもう点滅してしまうので大股でちょっと急ぎ、そこの口から裏へ。まえに小学生の子どもふたり、男子と女子を連れた母親らしきひと。じきに右手の一軒の前から声がかかって、同級生の子の親で知り合いらしく、歩きながらあいさつを交わしている。家のほう、玄関前のスペースとして車なんかを置けるよう固められたそこに女児といっしょに立っている女性が、Yちゃんは児童館に行きました、とか言っていた。道に日なたはあり、その一軒もふくめた右手の家々が三角形の陰を降ろして、ところによっては対岸まで日なたを切りこみ食っているけれど、四時前でまだこんなもんかと、あかるい部分をおおく感じた。公園の縁に立った楕円形の植込みから目にとめられないちいさな鳥が飛び出して一気に上昇し、向かいの家の木にうつった、とおもえばおなじ軌跡をもどって植込みのなかにまた入りこむ。抹茶っぽい緑がみえた気がしたので、たぶんメジロじゃないか。鳥の声がよく聞こえる時季になった。細まった路地を行くあいだもカラスが一匹鳴きながら頭上をバサバサ飛んでいき、見上げれば屋根の向こうで合流したらしく五羽くらいが一気にあらわれて、編隊をつくって鳴き交わしながらべつの方向に飛び去っていく。きのうきょう、布団のなかにいるあいだにもカラスの声がよくしているなと聞きとめていた。出て車道を渡り、また家々のあいだへ。足は無為を知るものの鷹揚さになっていながら同時に軽く、後ろの一本が地を蹴る感触とか、足首の曲がり方とかがスムーズだ。この路地には、正面に抜けたところの公園から飛んでくるのだろう、桜の花びらがまだたくさん散りばめられてあり、といってすきまがおおきいので道路が感染した疱瘡めいている。公園ではきょうも子どもたちが遊んでいた。入り口では一輪車にまたがった女児がひとり、スロープの脇にある銀色の細い手すりにしがみつきながら一輪の扱いを練習していた。アパートは間近である。太陽はいま雲にかさなっており、左手からながれてくるあかるみにふれてさほどの熱さも横顔になく、日陰にはいって風が通っても涼しいくらいで寒くなく、体感にあまり違いがない。アパートにもどって簡易ポストをあければ市議会議員のチラシがはいっていたので、片手に持って瞥見しながら階段をあがり、部屋に帰った。