2017/7/5, Wed.

 陽の色の窓に見えて、爽やかな空気の流れるなかに起きたところが、午前が尽きるにつれて曇り空となり、モニターを前にした肌にいつの間にか汗をかきはじめている。出かける直前には雨が始まって、ざっと流れてすぐに衰えはしたが、大気の気配の定めがたさに、昨日は余計な荷物と払った傘を今日は持つことにした。坂から遠くに見下ろす川は前日の雨に増水し、土色に濁りながらそのなかに、黄緑の感触を僅か混ぜてもいる。街道では久しぶりに、燕が曲線を描いて宙を駆けるのが見られた。見上げれば雨雲が淀んでいるが、離れた空は色が薄く、明るいような暗いような、しかし歩くうちに陽が出て影の浮かぶ時間もあって、傘を使うことはなかった。
 帰路、夜の路地を行っていると、大きな風が走って久しぶりに涼しさというものを感じさせるようで、頬に寄せて続くのに軽い恍惚感らしきものが滲む。解放の感覚に浸ってゆったりと行く脚に、荷物だと思っていた傘の杖つく音がこつこつ添って、そのリズムさえもが心地良いようだった。どこにも属さず何をもせずただ脚を動かしているだけの、どこかからどこかへ移り渡っている歩のあいだの宙吊りこそが、自分にとっては自由というものを如実に感得させるらしい。またすぐに、どこかに止まってしまうのだが、いまこの時ばかりは、と風を浴びていた。