2022/12/11, Sun.

 (……)自分がどんな状態か、自分自身のなかからどうして分るでしょうか。この嵐のような、または輾転とする、または泥沼のような内奥こそぼくら自身であり、しかし言葉がぼくらの内から駆り出される道程、ひそかに進展する道程において、自己認識が白日のもとにさらされ、そしてその自己認識が依然としておおい隠されているとしても、やはりぼくらの面前にあり、すばらしい、または恐しい眺めを呈します。だからぼくを、最愛のひと、ぼくが最近内部から送り出したこの厭わしい言葉に対して守ってください。あなたはすべてを洞察し、それでもぼくを愛し続けていると言ってください。ぼくは先だってラスカー=シューラーとシュニッツラーについて傷つけるようなことを書きました。どんなにぼくは正しかったことか! しかし二人は、ぼくが横たわる低い地面の上を、なお天使の姿で飛び去っていきます。そしてマックスの賞讃ときたら! 彼は元来ぼくの本をほめているのではないので、この本は現に存在し、そうしようと思えば、その判断は再審査できます。しかし彼がほめるのは何よりもまずぼくのことで、だからそれこそなににもまして笑止なことです。一体ぼくはどこにいるのか? だれがぼくを再審査できるか? ぼくは、ぼくという支離滅裂なこの構造物のなかに突込むという目的だけのため、一本の力強い手が欲しいのですが。しかもそこでぼくが言っていることは、決して厳密にはぼくの意見ですらなく、決して厳密にはぼくの目下の意見でさえありません。ぼくが自分のなかを覗きこむと、非常に多くの不明瞭なものがなお混淆しているのが見え、そのため自分に対する嫌悪を正確に理由づけることも、完全に引受けることも決してできません。
 (マックス・ブロート編集/城山良彦訳『決定版カフカ全集 10 フェリーツェへの手紙(Ⅰ)』(新潮社、一九九二年)、278; 一九一三年二月一八日から一九日)



  • いま四時半。出かけるまえ。つくった煮込みうどんを食っているところ。うまい。きょうはなんだかからだが緊張気味で、体内のすじがほうぼう硬くこごっているような感じ。きょうもまた天気がよくてまっさらな快晴だったので(三時くらいから一気に一面の白さに転じたが)、シーツを洗い、掛け布団もちょっと干した。離床が一〇時半ごろで、日照の終わりまでそこそこ余裕があったので。これからうどんを食い終えたら、身支度をして(……)へ向かう。
  • 一年前もちょうどきょう会う(……)くんおよび(……)とあつまっていて、池袋の演芸場に行っていた。落語とか講談とかをなまでみたのはそのとき一回きり。演者それぞれについていろいろ書いていて、よくおぼえてんなあこいつとおもった。引きたい気もしたが、おおすぎるので、再掲はしない。代わりというわけではないけれど、そのまえに昼食で行った「(……)」という洋食屋のなかのようすを引いておく。このあいだ一一月二五日だったかに引いた(……)内の空間描写もそうだが、過去のじぶんの空間記述はちょっとへんというか、やはりよく見てるなあとまずおもうし、バランスよくえがきだそうとかいうあたまが感じられず、ある種の執拗さがみえるようで、なんか特殊な感じがする。とくに幾何学的にというか、わざわざ図形を出してこまかく説明しているあたりが執拗で、これは描写というタイプの空間構築ではない。まさしく説明という感じ。たしかレーモン・ルーセルの文章がそういう幾何学性をもっと極端におしすすめたものだったはず。

(……)そうして入店。扉の位置は四角形の俯瞰図でいって左下の角で、そこにはちいさなレジカウンターもあり、室内はまんなかあたりからややL字型に(レジにちかいほうを起点とすると右に伸び、壁際でみじかくうえにひらく)厨房がもうけられ、そのまわりをかこむかたちで木目調のカウンターテーブルがひろがっていた。席はそれだけ。たぶん全部で一五席から二〇席ほどだったのではないか。われわれは下辺にあたるならびについた。厨房をはさんだむこう、ガラスのさきに見える店のそとはそこもビルかなにかのなからしく、ゲームセンター的な雰囲気がかんじられるような空間がのぞいていたが、よくわからない。厨房がL字型に折れてうえへ(つまりこちらの位置から見て奥へ)すこしだけ伸びて端までたっしているので、テーブルは円環を完成することなくとちゅうでとぎれており、やや楕円っぽい長方形の線の右下からうえの半分くらいまでは欠けていることになる。背後すぐの壁にハンガーが用意されてあったのでコートを脱いでそこに吊るした。椅子はスツール型のもので、テーブルのしたにものを置くスペースなどはない。それなのでバッグは足もとにじかに置いておいた。こちらや(……)くんがコートを脱いだりしているあいだに(……)がまとめて注文。厨房で立ちはたらいているのは三人の男性で、左側にいたのが見たところではいちばん若く見えたがそれでも四〇代か五〇代くらいかとおもわれ、右側の上辺スペースにはふたりおり、ひとりは店主だろうとおもわれる老齢のひと、もうひとりはひとりめとそう変わらないがすこしだけ年上ではないかと見えるひとで、白い帽子の端からのぞくみじかい髪が白っぽくなっていたので、やはり五〇代くらいではないかとおもわれた。店主は七〇代程度と推定。ほか、給仕や会計の役として、店主のつれあいだろうとおもうが年かさの婦人がおり、店内を行き来して水をはこんだり、そとの客を呼び入れたりしていた。コックの男性はみないそがしく、顔を伏せ気味にしながらつねにからだをうごかして料理をこしらえている。店主のまえにはコンロがあり、意外とおおきくはないフライパンにかるい調子で材料がほうりこまれて火が立ちあがったり、彼がおおきなエビを二本まとめてぶらさげるようにつかみあげ、それもフライパンにいれて揚げたりするのをながめた。上辺にある調理台のうえやその付近にはカゴメのトマトケチャップの赤い缶、ペンキ缶じみておおきなそれが、あるものは上下ただしく、あるものは逆さになっていくつも置かれてあった。


     *

  • (……)くんと(……)と合流したのは五時半過ぎ。道中のことはわすれた。(……)駅の待ち合わせスポットであるレリーフのまえに行くと(……)くんのみおり、立ち尽くしているかれのもとへ手をちょっとあげながらちかづいていき、たがいにうなずきかわすのみで声を発さない謎のあいさつの交換がなされたあとどちらからともなく笑みをこぼす。(……)は実家からもってくる荷物がおおいのでさきにもう貸し会議室に行っているとのことだった。それで出発。南口へ。携帯にうつしだされた地図をみせてもらったが、あああのへんだなというのがわかる。なんか買っていったほうがいいかなというので、とちゅうにセブンイレブンがあるよとつたえて駅舎を抜け、南へ。高架歩廊から階段を下り、ロータリーからまっすぐ伸びる通り沿いにモノレールの線路下をすすむ。交差点にいたるとコンビニがあるので入店。(……)くんは会議室の設備がどんなものかわからない、お湯とか沸かせるのかと疑問して、スープなんかを買いかねて、けっきょくおにぎりとコーヒーのみ買っていたようだ。こちらは家でうどんを食ってきたし飯を食う気はなかったが、なにか甘いものでもというわけで、ドーナツをひとりひとつ分、三つと、苺風味のピュレグミを買った。そうして退店すると角を曲がり、しばらくすすんだところにある信号の地点((……)のあるあたり)から路地にはいってさらに南に推移する。いま来た(……)通りはそのまままっすぐあるいていけばほぼ自宅アパートのあたりにいたるからよく通っているが、そこからわざわざこっちまではいったことはないなと口にする。じきに会議室のはいっている建物に到着。外観はボロいアパート。たぶん会議室として貸されているのはわれわれがつかった(……)号室ひとつきりなのだろうか? あるいはほかにもあるのかもしれないが、会議室ではないべつの利用法をされている部屋もあるようだった。外気に面した階段をカツカツのぼっていきながら、この開放性、とおもった。そうして部屋について(……)くんがインターフォンを鳴らし、(……)が応じてドアをあけてくると郵便でーすとかれが言ったのに乗っかって、お届けものでーす、サインいただけますか? とか口にしながらはいる。室内はまあふつうの一室で、靴脱ぎ場の左には靴箱があり、そのなかにはスリッパがたくさん用意されていたのでそれをつかう。その横、床にあがったところの脇がちいさな水場で、ここにルールとか注意書きの紙が掲示されていた。退室するまえにこれを確認、みたいな項目とか。右手はトイレで奥にすすむと室となり、テーブルがひとつ用意されていて、その脇にはホワイトボード。水場の横、戸口から見て通路の左側だが、室と通路の境目あたりにあたるそこにはちいさな長机があり、(……)の荷物はそのうえに載っていた。こちらもリュックサックをそのへんにおろしておき、テーブル上には甘いもんを買ってきたと言ってドーナツとグミをならべる。席取りはこちらが戸口側の右席、(……)が左隣で、(……)くんが向かい。右手にはホワイトボードがあり、奥は窓があるけれどカーテンは閉めている。正面右側の角にはエアコン。
  • そういった空間で九時までひたすらはなし。(……)それでさっそく(……)が、(……)はなしはじめるのだけれど、まもなくなにかのおりにこちらが余談をさしはさんで、そういえばまいにち起きたときに一年前の日記読みかえしてんだけど、去年もちょうどこの三人で会ってたわ、どこに行ったかおぼえてる? ときくと、(……)はすぐにおもいあたったようだが(……)くんはちょっと間を持った。しかしけっきょくかれが池袋? と正解を口にして、それでおのおの記憶をちょっと口にする。(……)くんはマジックジェミーの名を言って、(……)は神田蘭さん、と一年前のこちらが個人的にはきょう見たなかでいちばんだったとえらそうにも評価していた講談師の名を発する。あとあれおぼえてる、「(……)」で泣いたの、とにやにやしながら横に向けてかなしい記憶を喚起させたり、池袋駅から店まであるいているあいだのはなしとして、髪を染めようかなとおもったのだけれど調べてみるとやはり髪質にわるいみたいだし、染色しているひとをみてみてもたしかにけっこうパサパサしていたりしてあまりよくなさそうなので、染めずに髪の質をたかめていく方向でかんがえることにした、とか言っていたらしいとつたえる。すると、ああそうか、そうそう、そんなことかんがえてた、あれから一年か、そうすると今年は髪染めたから、あたらしいことに手出したな、と返る。髪を染めたと言っても(……)のそれはかなり暗めの茶色という感じで、あきらかに染めているというよそおいではないが。


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  • (……)
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(……)

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  • 九時をむかえて会議室を出て、駅のほうに行き、(……)の広場のテーブルについて(……)がもってきた枕を貸してもらうという一幕もあったが、あとそのまえに小便がしたくてふたりを置いてややいそいでセブンイレブンに行ったらトイレが清掃中であいておらず、しかたなし、出るとちょうど青だった横断歩道をわたって向かいのFamily Martに行って難を逃れ、イレブンの横にいたふたりのところにもどってくると(ちなみにそのころは雨がすこし降り出していて、ふたりは傘を差して空間をわけあっていた)、え、どこにいたの、瞬間移動してきたのかとおもった、とおどろかれたという一幕もあったが、このあたりもう割愛。枕のはなしをしているあたりでは、なんかやはり緊張が背から来てからだを内側からつきあげるような感じが生じており、そこそこ吐きそうな感覚になっていたのだけれど、一五日現在の洞察では、これはやはり空腹などで体温が低くなって、筋肉が収縮し、柔軟性を失って、全般的に緊張が増したり(緊張とは収縮現象そのものであろう)、もしかしたらなんか神経とか内臓とかが刺激されたり、よくない配置になったりしているのかもしれない。たんじゅんなはなし、からだを芯まで、かつ末端まであたためるのが肝要なのではないかと。だからほんとうはやはりある程度の負荷をもった運動習慣を身につけたほうがよいんだよな。ジョギングとか。しかしウォーキングならず散歩にすらときおりしか出る気にならない無精者である。出ればおもしろいのだけれど。


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  • 「ことば」: 40, 31, 9, 24, 32 - 35
  • 「読みかえし2」: 601 - 609, 610 - 612
  • 2021/12/11, Sat. / 2014/4/15, Tue.


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Damian Carrington Environment editor, “Global health at mercy of fossil fuel addiction, warn scientists”(2022/10/25, Tue.)(https://www.theguardian.com/environment/2022/oct/25/global-health-fossil-fuels-climate-oil-gas-food-energy-cost-of-living(https://www.theguardian.com/environment/2022/oct/25/global-health-fossil-fuels-climate-oil-gas-food-energy-cost-of-living))