とりあえずいっぽん書けたので、つぎの小説まではすこし間をあけたい。本を読みたい。「塔のある街」を書き出していらい、まったく読んでいなかったので。ようやく「ポルトガルの女」を読みすすめることができる。きょうの宵前から実家に行く。実家にはパソコンをもっていかず、文も書かない。なにも書かないその時間が大事なのではないかとかんじている。「塔のある街」は13000字あたりから気が急いてしまった。はやくさいごまで書きたいという、あたまのなかにあるものをかたちにすることのおもしろさと、はやく終わらせたい、解放されたいというようなきもちが両方あったとおもう。実家滞在をもういちどはさんで、来週にもちこしたほうがよかったかもしれないとおもっている。つぎの小説はもうすこしゆっくり書きたい。
 いまあたまのなかにある小説のアイディアを、ばくぜんとしたものもふくめてメモしておきたい。


「五つの聖なる物語」
・「塔のある街」: もうやった。
・「Black Is The Color of My True Love's Hair」: 忌み子であり砂漠の王である「彼」と「彼女」の愛の反復譚。
・「孤独のなかの神の祝福」: 男女逆転世界でのセンチメンタルなミュージシャンもの。「赤目」と「青目」として人種差別もからむ。各人物の回顧的な独白と、「あたし」の一人称による過去の物語が交互に配置される。
・「おそろしきうみをたたえよひとら」: 海辺の村。なにもおもいついていない。
・「魔法使いのさびしい目つき」: 魔法使いになる試練を受けるか受けたあとの少年の手記。山のうえの城塞都市を舞台にしたい気がする。下界からのぼってくる勢力とずっと抗争している。


・「埋立て通りはきょうも快晴」: 四分の一ギャルがいろいろなことをプチ批評する。
・「夜のひとみは千のかがやき」: けわしい山のうえで牧場をいとなんでいる一家の子どもふたりのうち、弟が、あたまのなかに声が聞こえるといって脱走し、兄がそれを追いかけていったさきでいっしょにホタルの群落に遭遇する。かなり短いはなしでいいとおもっている。
・「ワン・ナイト・ファックネス」: 監禁された地下室でSly & The Family Stoneのレコードを爆音でながし、そのビートにあわせて性について語ることでオーガズムにたっする気弱な元下っ端外務官僚のひとりしゃべりが一晩中つづく。ロシア古典文学のパロディ要素をすこしだけ入れたい。


・「ふうけいしゅう」: 全篇ひらがなのみで風景描写をするだけの断片集。


・魔女のやつ: 『族長の秋』をじぶんなりにやりたいやつ。
・二人称「きみ」のフリーター小説: 店長にたてついて本屋をくびになったばかり。ヴァルザーをやりたいやつ。
・全篇ひらがなで句読点もなくしてなんらかのながい歴史を語るやつ: フィリップ・ソレルスが句読点をまったくなくしたたしか『楽園』とかいう小説を書いているらしく、それの日本語版みたいなこころみだとおもう。生きているあいだにできる気がしない。


・落語家の語り口でやる私小説
・「わたくし」という一人称で飄々としたユーモラスな語りをやることにより、私小説の「私」が歴史的にせおっているような気がするまじめさや深刻さの重力をかるくするこころみとしてのわたくし小説。
・『ヨコハマ買い出し紀行』の雰囲気でウルフの語りをやりたいやつ。
・一人称をまったくつかわない、世界に溶け込んでいるかのような淡い語り口の、しかしそこに人物としてたしかに存在している語り手の視点でやる学園物(青春小説?)。離人症的な感覚?