きのうの外出。三時半ごろだったろうか。かっこうはいつもどおり、茶色いシャツ、青灰色のズボン、藍色もしくは紺色のジャケット。道に出て左折。前方、公園のあたりで自転車の婦人ふたりが立ち話をしている。右を向いてそこにある路地のなかをのぞけば陽射しがあかるいので惹かれて折れた。この細道をとおったことはほとんどない。はじめてではないかとすらおもったが、さすがにそうではないはず。一軒の門構えの足もとにビール瓶なんかを入れそうな古びた箱が置かれている。きょうは木曜で、燃えるゴミの回収日だ。この箱にゴミ袋を入れて出しておいたんじゃないか。すすむともう一軒、二階のベランダで棒に布団を二枚ならべて干してある家があり、そのベランダのそとがわ、宙に浮かぶ長方形のようになっている壁が西陽を受けてめっぽうあかるい。細めた目に何色ともなかなかつかないけれど青さをみたようにおもいながら数歩行けばベランダの正面にいたり、角度が変わって変色したそのいろは真紫だった。ずいぶんはっきりとした紫色で、ぜんたいにラメがふられたように点々ときらめいており、かえりみてもあたりの家並みのなかでひときわ色がつよい。おもてへ。といってもここはまだ幅狭の車道。車が来なければ容易に渡れる。北側にうつって左を向き、足もとを見下ろしながら無為を知る者の歩をおくりだしていると、時を経た赤煉瓦っぽい色やその他の色をしたタイル状の歩道の地面に骨材の粒がきらきら浮かび、じきに影がかぶさってきた。右側はSの、そこそこひろめの駐車場に面している。そのフェンスの影で、歩道の幅いっぱいを埋めるくらいにななめにたおれている。格子状になっている細い線のいっぽんいっぽんとおなじ細さのすきまとのととのったならびがうす青く、そのしたで粒は変わらずこまごまとひかり、ときおりフェンスのちかくに立っている草の影もひょっこりあらわれて、風にふるふるかたちを乱すが、格子の線のほうはすこしもうごかない。すばらしかった。
 雲のたいして見られない晴れやかな空だったが、裏道で日陰にはいれば風がまだやはりけっこう冷たい。コンビニのさき、北に向かう道だ。日なたをもとめて端に寄る。左側に駐車場。その向こうの西南の空に太陽はひらいて、ならんで停まっている車のあたまやらガラスやら鼻のうえやら角ばったところにちいさく凝集した純白球の分身がいくつもたたずんで、歩をすすめるにあわせて左から右へ、射手が放射口をゆっくりうごかしたように車体をすべっていく。出口ちかくで右の奥から、じゃあいまから笑っちゃいけないゲームね、いえーい、という声が聞こえた。小学生。たぶん女子。やや気だるげで盛り上がりを欠いたはじまり。出るときょうはそのままスーパーに行くのではなく、ちょっと遠回りしようとおもい、横断歩道をわたってすすみ、ほしいひと! と友だちのまえに仁王立ちした男子がグミかなんかの小袋をかかげている児童館のまえを過ぎ、踏切りを越えて草の空き地沿い。草の緑があまりにもみどりしていて目をおどろかせた。もうこんなに青いのかと。土地の端にたくさん生えている細長い葉っぱの草も、野菜めいてもしゃもしゃした感じの草も、もうすこしなかのほうで地面をおおく埋めている草たちも、みんなまったくおなじあざやかな緑だ。ここも寒い。日なたのある北側にうつる。病院の古ぼけた管理棟が向かいに来ると影がおおきくてつつまれるが、そこを抜ければ駐車場沿いはまた日なただ。平行四辺形の白い板がわずかなすきまをあいだに入れつつはめこまれたような歩道になっている。駐車場とのあいだに草木。褪せた薄緑の葉叢が振動している。端まで来ると右に折れて、そちらがわの縁にもおなじ、水気をまったくかんじられない砂っぽいような薄緑色のこの草がしばしば植わっている。とおくから見ると薄色だが、ちかくにみるとやや白っぽい縁のなかはもっと濃い緑に埋められている。