2017/2/19, Sun.

 正午前に外出した。路上があまりに明るく、アスファルトにしろ道沿いの木々にしろ、地に伏して崩れかけた落葉にしろ、見るものすべてが光を含んで、大気そのものが輝かしく白っぽくなっているような日だった。そのような快晴ではあるが、鼻筋に触れる空気には、幾許かの固さが戻っていた。街道に向かうと、家と林の合間から覗く道の上を、流れて行くものが遠くに見える――マラソン大会の日なので、ランナーたちが大挙して街道を埋め尽くしていたのだ。ほとんど誰も原色に近い強い色合いの運動服を身につけ、時折りなかには滑稽味を狙った仮装をしている者も見られる、その色とりどりの集団が、低い響きを道いっぱいに敷き詰めながら走って行く横を歩いた。沿道には、ちらほらと見物人が立って時折り声を掛けていたが、空気は静かで、走る人々の足音と息遣いだけがそのなかで浮かぶ。走者は歩道のほうまではみ出すほどで、邪魔にならないよう道の端に寄らなければならなかった――行く手を見ても道の先まで、色片の組み合わさった波の、ゆらゆらと小さくうねるのが一面に続いている。そこで、途中で裏道に退避し、中学校の横手に出た。あたりには誰の姿もなく、表道の響きも伝わって来ず、雲を忍びこませる余地なく淡青にひらけた空のもとで校庭の、萌黄めいた色調の淡緑をほんの僅か含ませた砂が一面に低く敷かれ広がって、空と向き合いながら停止し、静寂に浸っているのがなかなかに美しかった。静けさのなかで、屋上に立った旗柱と思うが、風に金具が揺れて当たるらしく、時々に高みから金属音が立って降って来る。道を行っていると、吹奏楽の音が聞こえはじめて、初めはちょうどその横を通り過ぎている中学校の窓のなかで練習に励んでいるのだと思ったが、そうではなく、表通りの方から響いてくるらしかった。家々の合間からそちらを覗くと、もうランナーの大波は過ぎたらしく、路上が開放的になっていたので、そちらに戻った。高校へと続く細道の入口あたりで、そこの学校の吹奏楽部だろう、制服姿の若者たちが各々楽器を持って並び、走者を鼓舞する演奏を披露しているのだった。もう走っている人々は過ぎて行ったのに、そのあとからも音を鳴らして周囲を活気づけていた。道を渡って、ドラムソロの賑やかな音を背後に裏通りに入った。頭上は清らかな青さに隈なく浸透されきったその静止ぶりのあまりに、奥から音が鳴り伝わって来そうなほどに晴れ渡った空である。飛行機雲が何本も、ほつれて太くなりながら軌跡を描いているのが唯一その上に存在する動きで、そのなかの二本が交差して十字を描く瞬間もあった。