2017/4/6, Thu.

 往路。午前には旺盛な陽があったが、昼過ぎから雲が広がりはじめて、あたりが薄鈍色と化した午後五時である。それでも最高気温二〇度とあって、風が流れても肌寒さは微塵もなく、今年初めてストールを巻かずとも済んだ。空気の暖かさのために一挙に湧いて活発化したのだろう、細かな羽虫の群れがそこらじゅうに湧いていて、道行きに終始ついてきて、視線をどこに向けても宙を飛び回るものが目に入り、顔や服に触れないまでも常にそのなかに包まれているような状態である。街道沿いの古家を過ぎると、小公園の桜もさすがにもう花開きはじめており、空中に薄紅の絵の具を粗く点じられた風情だった。風は丘から鳴りが立つほどではないが、時折通って、近場の木々の葉群れを撓ませ、そよぎを道に添える。家を発ったころはまだしも青さが残っていた雲も灰色に落ちて、あたりが鈍く沈んだなかで寺の枝垂れ桜は色艶が足りないが、桃色を塗られて上から下へと流れており、ほとんど緑しかない森の木々を周囲にそこだけいくらか明るんでいた。