2017/7/7, Fri.

 洗濯物を取りこもうとベランダに出ると、光線が肌に強く、染み入るようで、陽の色に明るく照らされた眼下では、緑が絶えず緩く揺らいでいる。このなかを歩いて行くのはさすがに骨折りだと、出かける母親の車に同乗させてもらい、医者の間近で降りた。身を包む液体めいた陽射しの大層厚くて、途端に肌が粘りはじめる。それでも晒されて道を行くうちに、暑気の身体に馴染んで軽くなってくるような感じがあった。
 診察は五分程度で終えて薬も貰って出たのが三時過ぎ、陽はまだ旺盛で、目を細めて睨むようにしながら行く線路脇、低く植え並べられた名も知らぬ草の、無装飾に葉茎を突き出して濃緑に調ったものがてらてらと光を溜めて、まるでプラスチックで組み合わされた模型のように映った。図書館に入って作業を進めているうちに、五時に掛かると大窓を塞いでいたカーテンが上がって行き、現れた外の景色はまだまだ明るく暑気もいくらか残っていそうだが、風は走っているようで、コンビニの外に立てられた旗が悶えるように震え、ぼさぼさと乱れ繁った街路樹の枝葉が下から煽られてうねる。階上まで繋がっている大窓は首を傾けて目の届く端まで一面、薄雲混じりの穏和な青に満たされて、窓は南に面しているので夕陽は見えないが、空に流し込まれたような白さを背にビルの輪郭が滑らかに象られているその境を見つめていると、光の感覚が目に強く、逸らして眺めた南の果てには丘陵が、ちょうど顔の高さでほとんど上下もせずに、なだらかに空の下端を縁取りながら淡い陰影を施されていた。
 それからしばらくのち、休憩がてら水分を摂りに行くことにして席を立ち、西窓の彼方に剝き出された夕陽を見ながら階段を下り、入口外の飲食スペースで柑橘類のジュースを飲んでからなかに戻ると、陽はやや低くなっており、奥の階段口から照射された朱色が濃厚に、油をぶち撒けたようにしてフロアに流れている。人が階段を下りて来ると、床の上に傾いでそこだけひらかれた暮れ色の矩形を影が埋めるようにして、しかし埋めきれず、人はまだ階段を踏んでいるのに驚くほどに長く伸びてこちらの目の前にまで届くのだった。自分の顔もいま赤く染まっているなと思いながらそのなかを通り、席に戻って書き物を始めたところがうまく行かなかった。閉館まで時間も少ないのに記事が二日分残っているのが焦りを呼んだようで、二日前だと記憶も薄くなって容易に掴めず、作文が空回りに終わって退館した宵、月は東の満月で、星も見えず暗いが滑らかに冴えた夜空に暈も作れず、ただこちらの歩みに応じて刻々と角度を変じながら両側に突き出す光線を、放つと言うよりは上から次々と被せられるようにして輝いていた。