2017/10/29, Sun.

 雨に降られた日中だったが、夕食のあとに散歩に出ると、降りの痕が濃く残っていながらも既に止んでいた。夜空に雲の白さがはっきりと浮かび、斜めに引きちぎられたその間には群青色も明瞭に注いでいる。西の月は雲のなかにありながら明るさを妨げられることがなく、黄に緑に赤の三色を備えて精妙な暈が、映写幕を持ってむしろ大きく露わに広がるその空では、雨後の風の名残るようで雲の流れの素早くて、天体は白さのうちを右下へとどんどん潜っていく。
 濡れた路面の街灯を受けて硬質に発光している上を踏んで行き、小橋に掛かると沢の勢いは先日の投票日、台風の寄せていた夜ほどでないが、左右から異なる響きの膨らみを浴びせてくる。ひと気の洩れない裏道を通って緩い曲がり目で見上げると、広がった雲が裏から照られて妙にくっきりと映っている。夜空に溜まった灰白色の、密度の差で縁のみ僅かに軽い色となっているその微妙な違いがよく見て取られ、内のほうでも段差が明確に示されているその質感の、CGのようだと言うか、かえって紛い物めくようでもあり、そのなかを見え隠れする月のまるで巨体の目のようだったのが、抜け出てくると白々とまっさらに映える上弦月だった。
 街道に出ると車の流れる音を受けながら来た方角へ戻って行き、ふたたび裏に入ったところで首を曲げれば、先ほどまで青みの露わだった夜空がここでは真っ黒になっている。籠めるでもなく浸すでもなく厚み深みと言うも当たらず、ただ純粋性そのものとして露呈したような黒の色のその鮮烈な何もなさの真ん中に、星など排されて月だけが嵌まって輝く絵図だった。