毎朝のことで、何度も覚めては寝付いて睡眠が長くなるのだが、面倒なのでその仔細な展開は追わない(と言うか、もはや良く覚えていない)。最終的にはまた正午過ぎに床を抜けることとなった。一一時台後半の覚醒にも、油断するとまた眠りに落ちかねないような感じがあったが、身体を丸めて深呼吸をしていると、腹の筋肉がへこんだり前に戻ったりするその動きで意識が確かになってきたのだった。布団から出るとベッドに腰掛けてちょっと息をついてから室を抜け、洗面所で嗽を行いトイレに入って用も足したあと、戻って瞑想に取り組んだ。深い呼吸を繰り返して一九分、一二時四〇分で区切ると、上階に行った。(……)台所に入ると前日に作った味噌汁と餃子も残っているので、汁物は措いて、ひとまず今はこれを食べることにした。薄暗い曇天の日で、米をよそるために炊飯器を開けても、釜のなかが蔭になる。諸々温めて卓に就き、新聞を寄せると、一面は当然、前日の夕刊に続いて北朝鮮が発射したICBMについての記事を載せている。「北ICBM 高度4000キロ超 過去最高 「新型 米全土射程」」というその記事と、そこから隣に接した「「ICBM絶対許さない」 トランプ氏、首相に伝達 来日時」という記事、あとは国際面から、「独大連立 交渉前に溝 メルケル与党閣僚 SPD反対案に賛成」という記事を拾って、ひとまずそこまでとした。
日中のことは割愛し、五時過ぎに移ると、自室を出て廊下を通り階段まで行ったところが真っ暗で、明かりを灯すまで何も見えないその暗闇の感触がやや印象的だったようで、よく記憶されている。上階に上がると食卓灯を点け、窓のカーテンをそれぞれ閉めると麻婆豆腐を作ることにした。小沢健二『刹那』をラジカセから流して作業を進め、完成させると下階に戻った。しばらく遊んでから六時を越えると、早々と食事を取りに行った。ものを食べるあいだ、テレビは親方が同席した日馬富士の引退会見を放映しており、日馬富士に寄せられた質問に対して親方が横入りし、答えなくて良いと制した振舞いを取り上げて、苛立ちが先に立っているように見えるなどと分析が述べられていた。
その後、九時半から書き物に入って、二五日の記事を進めた。途中、どこかで切ろうと思っていたところが、三時間、仕上げるまで続けてしまった。二五日が完成しても五日分、日記が現実の生活に遅れていたわけだが、あまり急ぎ、必死になって取り組む気にもなれなかったようだ。そのあと、午前一時前から音楽を聞いた。少しずつつまみ食いをするようにして色々と聞き、一時間半の長きに渡った。
- Bill Evans Trio, "All of You (take 1)", "Detour Ahead (take 1)", "Waltz For Debby (take 1)"
- Art Tatum, "Tea For Two", "St. Louis Blues", "Tiger Rag", "Sophisticated Lady", "How High The Moon"(『Piano Starts Here / Gene Norman Presents An Art Tatum Concert』: #1-#5)
- Charlie Parker, "Now's The Time"(『Bird At The Hi-Hat』: #1)
- Bud Powell, "Wail"(『The Amazing Bud Powell, Vol. 1』: #2)
- John Coltrane, "Giant Steps"(『Giant Steps』: #1)
- Fabian Almazan, "Rhizome"(『Rhizome』: #1)
- Muddy Waters, "Streamline Woman"(『Muddy "Mississippi" Waters Live』: #1-4)
- Brad Mehldau, "River Man"(『Live In Tokyo』: #2-8)
- Nina Simone, "I Want A Little Sugar In My Bowl"(『It Is Finished - Nina Simone 1974』)
Art Tatumのこのアルバムは、一九三三年に録音された彼の初めてのリーダー・セッションの四曲を含んでいる。なかでは特に"Tiger Rag"が評判のようだが、確かにこの演奏は相当に頭がおかしいなと思われた。
三時半前まで読書をしてから床に就き、例によって仰向けに静止しながら深呼吸をしていると、心臓に意識が寄って少々痛みはじめた。胸の鼓動のほうに吸い込まれるようにして、精神の志向性が収束しはじめ、それとともに不安が湧いてきそうだったので姿勢を横に変えて気を散らした。横向きになっても痛みは多少感じられたようだが、この日の生活のことを思い返しているうちにうまく寝付けたらしい。