10680字。この小説、おもったよりもながいというか、書くのに時間がかかる。こんなに描写するつもりなかったのだけれど、なんかやってしまう。描写をしたくて文を書いているようなにんげんなのでしょうがないが。文章としても書き込みすぎだし、象徴的っぽい形象とかも詰め込みすぎでしょという気もするのだけれど、それでいいやとひらきなおっている。おもいついたことぜんぶ書いてやれと。
さきほど四時まえくらいにスーパー行き。とにかくおおかぜ。ただ天気は抜群にいい。公園前で右手に曲がって細道を行くと、右側の家のまえにひとつ低くちいさな木があって、それがかぜにやられてぶるぶるふるえつつ、陽光をも受けて葉叢のいたるところに銀色を、もとのいろを剝がしてそのしたを露出しているように貼りつけていて、青みをちょっとふくんだみどりじたいもひかりのために希薄化しているが、過ぎてから反対側をみるとそちらはふつうのみどりいろにおさまった平常の顔をしている。ちいさな道路をわたる。左へ折れる。左手、わたってきたほうをみると路地出口の角のキンカンの木もかぜにのしかかられるようにしてちょっと上下しながら(おさなごに背後から飛びつかれてその重みにぐらつくおとなみたいなうごき)無数の実の黄色をふるわせている。太陽に敵はない。頭上一面、とおくまで青さにみちみちて雲はみつけられず、かぜだけはとにかくはげしいがそれでさむいというほどでもなく、やばいな、ロマン主義詩人になってしまうタイプの日だとおもった。建物の横を過ぎて角のコンビニの駐車場にはいるとそのとたんにまずとまっている車の屋根と鼻面のところに凝縮している純白がまぶしく、その起源である太陽も上方のまぶしく、ひかりが宙をなめつくしているから視界ぜんたいがまぶしく、すれちがった婦人がつれていたちいさな白犬のからだも輪郭をよわめて大気とのさかいを透きとおるようにしている。これと似たテーマの描写は「塔のある街」のあとのほうで出てくる予定。