ふうけいしゅう
くるまのなか ふろんとがらすに、つぶがぶつかりだす かぜにほうこうをうしないうずをまくむし ゆきだ、とこえがあがる あまつぶをこえないおおきさに、たしかにしろさをもっている あたればまもなく、じわりときえる あとにいろはない。
こうえんのはじにうめのきがある ちいさな あめのひだった わさんぼんのほのかなあまみをはらんだしろが、つつつ、とならんでえだをうめている ゆらぎなく あめにおされず、つちにひかれず、しずかにとまっている かさなるように、かたわらに、もっとちいさないっぽんがあでやかなあかをよせている。
としょかん、となりあうたいいくかんから、けんどうのひびき たけのかたなでたたきあうおとやながくのびやかなこえ、こえたちが、ざわめきのくもでかべからもれる かん、というよりは、としょしつとみえる、ちいさなとしょかん ぜんごからはさむたなははいいろ、むきしつに かうんたーのほうから、ほんをよみとるきかいおん、つづくぱそこんのしすてむおんがきこえてきた きおくをよぶおと ちゅうおうとしょかんには、もはやないおと。
うすぐもり ひざしというほどのものもなし にしのそらにばくぜんとくも、はいいろとあおをまぜあってひろく、ふちだけしらんであかるみをさす でんしゃないはやまからかえるひとでいっぱい おおくはこうねん こうすいとあせとよるとしなみの、なんともいえないふくざつなにおい すないろのはだのいこくのだんじょ、かたいめをしたおとこのひょうじょう、するどいまでにりりしいしせんがまわりにむけられさまよっている。
みちのうえ ときのとまったようにあおいそらからひざしはそそぐ かぜとれいきをちゅうわする はてにまちなみ うえにもりあがりしたはまっすぐたなびいたくもひとひら、ぼうしめく、まちのずじょうに ゆきからひとつきがたった しらさごはみちをさった じゃりのまじったかたまりはいえいえのかげにしつこくなごる それをかきだしてみちばたへ、ひなたのなかへ、おとすひと。
しょうぼうしゃが、いくつもいならんで、ざつみなしのあかにかがやいている、たてもののよこ、にんげんたちは、すばやくうごき、うごきをからだにおしえこんでいる、いそしんでいる、ちゅうがっこうのまえからめをやる、とおくのそらははればれと、ふしぎなほどにひろくわたっている、ひこうきぐもがうまれない、はずがない、としょかんはほんをかりてでる、おちてきたたいよう、はじっこにまぶしくて、めをふせている、かえりのでんしゃ、ひかりがさしこんで、ゆかにかげがけいせいしている、せんろはゆったりまがっている、しへんけいがかたむきをかえ、かげはゆっくりじわじわうつる、いえやきのかげがかさなってすべる、とき、かたちはかたちでなくなっている いちじかんまえにあるいたみちででんしゃをながめたそのみちを、こんどはでんしゃからながめている。
へやのべっどからたちあがる かおをしたにむけたとき、こげちゃのいろこいふろーりんぐのゆかが、すこしだけちかくなる みぎてに、つるつるしたしろさのほそながいてーぶるがある そのしたにせんがおちていた たけぐしがある、とおもった かーてんのすきまをぬけてきた、ひかりのきれはしだった。
こうえんのかどにあたるじゅうじをみぎにおれる あさのあめがきえたそらに、りんかくせんをおとしたくもが、そこらじゅうなじんではれがあわい うすびかりがある みぎにならぶいっけんのまえ、みちとのさかいにあかいきをみる ひくいあたまがこまかくあかい ぴんくもわずかあり、うめとみる くうかんのなかのまちがいのように、ひとつぶふたつぶ、そのいろがふよりとながれる ちかくにみると、もうほとんどちりきって、はなびらにかこまれていたまんなかだけがのこっている はなびのもえがらめきしわしわとかわいた、おいらくの、あざやかなべに すぎてから、いちどかえりみる。
としょかんをでて、しょうがっこうへ ぐらうんどのすみ、こどもたちが、あかやきいろのごむのばっとでぼーるをたたく さっかーぼーるも、あしでたたかれる おおよそにじゅう、さんじゅうのあいだ すがたさわがしく、こえはかんだかくひろさにまぎれ、きえていく いしだんのうえにしろかべはひかりをまとい、おくじょうのさき、もりのきたちが、てんでにのぞく もんをまがってせんろにそった みぎてにでんしゃ、うごきだしたりとまったり きかいのおと、あなうんすのこえ、ひるさがりのしろいしずけさ はんたいがわのもんのそと、なのないくさのとちのはじ、うめのきいっぽん、ともしとなって、ももいろ、くれない、どちらをもはらむ はなをみあげたひとみのせんがえだのあいだをすりぬけて、うらやまへむかうにんげんのかげをきときのすきまにのぞきみる せんろをわたればまたほそいみち むかいからいぬ、ちゃいろのふさふさとした せんろわきのくさをかぐ かいぬしがひきはなしてもまたすぐにかぐ ふみきりが、ふたついっぺんになりだした よっつのおとがびみょうにずれあうふおんなわおんのひびきゆらゆら、でんしゃごとごとそのなかをいく ひとはとぼしい まどのうちにはひかりをみたしたすいそうのみどり、おもてにはかがみにうかぶ、あたりのいえいえ。
うらからおもてへ あかしんごうにとめられる かどにめをふれば、ぱんじーのかだん きいろやむらさきのはな、もうしおれて、ひらかずちからなくうなだれ、そのうしろにたってなまえふめいのしらないうえこみ、あかやももいろをさかせてまだらにあざやかである おおがらのとらっくがめのまえをまがってぎりぎりいうとき、たいようをわけられたにびいろがぎんいろのまぶしさとなる やきとりやのとなりのとちにしょべるかー がれきをみると、なにがあったか、もうわからない。
としょかんの、そと あおくそまっている、そらが、いちめん はだかのはれではない、もやになったあいまいなあお たいようはぼやけながら、いばしょをおしえる たよりなくとけたひかり そのした、やまのちかくで、もやはとぎれる やまはそらのあおよりあおい ひらいたすきまにくもがあかるく、そこだけしろく、うずをえがきだす。
(2024/3/7, Thu. - )