職場を出て駅前を回りながら、ロータリーの真ん中に向けた視線が、気早にクリスマスムードを演出しようと言うのだろう、刈りこまれた植込みに配された電飾を見つけて、以前から光っていたはずだが、ここで初めて気付いたようになった。きらきらと光ってはいるが、田舎町に相応しく小さなもので、聖夜の陽気さを呼び寄せるというよりは、むしろ侘しさを強めているようで、そこに仄かな叙情味が生じないでもない。月は東寄りの高みに浮かぶ、満月である。裏道の途中で坂を渡ってから、振り向いて見上げると、薄雲に覆われて表面の起伏を失ったそれは、夜空にボタンが留まっているようで、その静止を起点に漣めいて雲がゆるゆる流れて行く動きが窺われる。自宅近くの裏に入って、視界が広がったところでまた見上げると、月は雲から逃れていたが、発光が強すぎるためか、雲に隠されずとも表面はつるつると金色に浸っており、窪みが視認できなかった。光のために夜空は藍色を露わに湛えて、その上に稀薄な雲が、上下に搔き乱されて中途半端に磨いた窓のようになっていた。