晴天に誘われて南窓に寄り、外を眺めた。空は澄んで動きなく、近所の屋根には白さが水溜まりのようになっている。風が流れて、下草やら梅の木の貧相な残り葉が揺れるのを見ていると、視界の隅で何か動きが生まれて、そちらに目を移せば眼下の家の、土汚れで埃っぽくくすんではいるが突端は薄白く濡れた瓦の上を、落葉が一枚、小動物めいた動きで滑って、軒まで届かないうちに停まる。ふたたび風が吹いても、転げ踊るのは雨樋のなかに入った葉のみで、先の一枚はうまく逃れて、むしろ瓦の内側のほうへ押し戻されたりする。落ちないか、と注視していると、風の鳴りから遅れて音もなく、空中に落葉が群れて、視界の外から舞い現れた。目前を浮かぶ一つに目を寄せれば、くるくると横に回りながら飛ぶそのさまは両側に向けて翅をひらいたようで、芸もない比喩の反復だが、いかにもささやかな昆虫めいている。ほかのものたちも銘々の飛び方で宙を辿り、遠いものはいくつも屋根を越えて、川沿いのほうにまで渡って行ったようだった。