図書館で打鍵の合間に、小腹を満たすためにテラスに出て食事をした。午後五時の、少々肌寒くなった空気に、格子柵に絡んだ植物の葉が揺れ、視界をいくらか遮るその隙間から、円形歩廊を行き交う人々の姿が下方に見え、空は薄青く曇っている。向こうの駅で電車が入線してくるのを首を伸ばして眺めながらサンドウィッチを咀嚼しているその時間に自分が、純然たる自由を感じていることにふと気づいた――テラスにはほかに誰もおらず、目の前の、館内の学習席にはちらほらと人が就いているけれど、あいだに挟まれたガラスには自分の影やこちらの空間が淡く反映してなかの様子は見通しにくく、伝わってくるのは外から立ち昇る町音のみで、見下ろす先の人々も草の柵に阻まれて明瞭には見えず、多彩な表情と複雑な内面を備えた主体としての人間と言うよりは、自動的に歩き回る人形の往来のようで、そのように作業からも離れ、ほかの人間からも切断されてただ一人に画された空間で一歩引いて風景を眺める具合になったのが、何にも繋がらずそれそのものとしてほとんど純粋に自律した時間の充足らしきものを招いたらしい。