2020/3/1, Sun.

 ナチの活動家はユダヤ人への憎しみをあらわにし、一九三〇年代初頭の選挙運動において、より人心を引きつけるテーマがあるのは戦術的に考えても明らかだったのに、そんなときでさえ反ユダヤ主義がナチのプロパガンダからはずれることはけっしてなかった。ナチの演説家は、いわゆるユダヤ人の犯罪、あらゆる領域に広がる悪影響、「堕落と生来の下劣さ」について、声高に非難した。ナチの演説でほかにもっと優先すべき事柄があるときですら、反ユダヤ主義と一般的な人種主義者の思い込みは、イデオロギーをまとめる糊の役目を果たした。しかし、ナチが政権を掌握できた一番の理由は全ドイツ人が心の底に抱いていた激しい反ユダヤ主義をうまく引き出したからだと断言するのは、第二次世界大戦中に起こったことを考えればわからないでもないが、おそらく誤りだろう。
 (リチャード・ベッセル/大山晶訳『ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い』中公新書、二〇一五年、43~44)



  • この日は一日中、だらだらと過ごしたのみで、大したことはやっていない。日課は夜に三〇分ほど一九日の記事を綴って完成させたくらいだ。
  • 二時頃、窓外から猫の鳴き声が聞こえたので窓辺に寄ると、声の主が家の南側、窓のすぐ下を通りかかるところだった。ガラスを開けると猫は途端にこちらに目を上げて見つめ返してくる。なかなか綺麗な顔立ちの、明るい茶色の体毛をした猫だった。手を動かしたり舌を鳴らしたりしてしばらく注意を引きつけていたが、じきに猫は身を翻して一段下の通路に入り、こちらを時折り見やりながらも歩き過ぎていき、隣家の敷地に入って隠れた。太陽の光が滑らかに通って空気は明るく、猫が通過した地面の上には梅の樹から剝がれた花びらがたくさん散り伏していた。
  • 六時頃から夕食の支度。米がなかったので新しく磨いで炊飯を始め、玉ねぎと卵の味噌汁を作ろうとしていると母親が帰ってきた。チキン南蛮と春巻を買ってきたと言う。おかずはそれで良いとして、玉ねぎを切り分けて鍋で煮て、粉の出汁や椎茸の粉や刻み昆布なども加え、野菜が柔らかくなると味噌を溶かして最後に卵を溶き落とした。