2020/3/3, Tue.

 一九三三年一月三〇日に誕生したヒトラーを首相とする連立政府において、国民社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)は少数派だった。ヒトラー自身を除けば、入閣したのはわずかふたりにすぎない。内務大臣ヴィルヘルム・フリックと、無任所大臣およびプロイセン内務大臣ヘルマン・ゲーリングである。閣僚の大多数は、保守派か政治色の薄い人々だった。カトリック系右派の政治家で、ヒトラー政府の実現に役立つ人脈を持っていたフランツ・フォン・パーペンは、副首相となった。特記すべきは、パーペンが高齢の大統領パウル・フォン・ヒンデンブルクとの仲立ちを務められるのは自分だけだと思い込んでいた点である。ヒトラーが必要とする有事立法をヒンデンブルクの同意なしに成立させることはできないと踏んでいたのだ。
 (リチャード・ベッセル/大山晶訳『ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い』中公新書、二〇一五年、54)



  • 食事を取りながら新聞に目を落とすと、一面の下部にある編集者のコラム的な小欄で、中国原産の植物であると言う木蓮に言及しながら、折しも「中国原産」のかなり迷惑なウイルスが世界中を騒がせている、とか何とか書かれてあって、この表現は危うくはないかと思われた。
  • 入浴。換気扇が空気を取りこんでは吐き出す響きが浴室内に満ちており、そのなかに時計の秒を刻む固い音が重なって浮かんでは沈む。気温は高めらしく、露出した上体に空気の流れが触れたとてひやりともしないが、かと言って汗を大量に搔くほどでもなく、肌の上を流れてくすぐるものは少ない。
  • 風呂を出ると父親が声を掛けてきて、明日草履を買いに行こうと言うので了承した。何時に起きるかと訊くのにわからないと答えると、一時に行くようなつもりで午前中に起きろと求めるので、まあ用事があれば起きられるだろうと楽観的に応じた。