碑
一周忌――一八九七年一月
北風に吹き流される黒い巌の怒りは
信仰者たちの弁護があっても止まないだろう
この人たちは何か原罪の宿命を祝福するかの
如く人間の罪悪中に原罪の類型を探すのだが。山鳩が鳴くとしてもここではいつものように
その無形の哀悼は多くの雲の襞をもって
明日の円熟した星を圧迫するのだ
その星の輝きは衆生を白く照らすだろうが。今しがた私らの浮浪人からはずれて
孤独にかけめぐるヴェルレーヌを誰が探すのか
彼は草案の中にかくれている――(end121)浅瀬だと非難を受ける死を
口もつけず一息に飲みほしもせず
ただあっさりうなずいて死をつかむヴェルレーヌよ。(西脇順三郎訳『マラルメ詩集』(小沢書店/世界詩人選07、一九九六年)、121~122; 「碑」(Tombeau)全篇; 訳注: 「「巌」とか「雲」は正統キリスト教を象徴する。」)
八時ごろにいちど覚めたけれど、なかなかからだをはっきりさせることができず、うごきづらく、つぎに携帯をみたのは八時四〇分くらいだった。そこから膝を立てて静止したり、腹や胸や脚をさすったり、だんだん起床に向かっていき、九時二〇分ごろ起き上がった。ゆめをけっこうたくさん見たようだったが、よくおぼえていない。紺色のカーテンをあけると曇り。空によどみも見えるくらいの曇天だったが、午後一時現在だとたしょう薄陽がカーテンに浮かぶときもある。洗面所に行ったりうがいをしたり、水を飲んだり蒸しタオルを顔に乗せたり。それから寝床へもどる。昨年のものと二〇一四年のものと日記を二日分読み返すが、とくに引いておきたいことはない。去年は(……)くんと通話してかれが書いた小説について聞いたりしており、一四年のほうは祖母の法要を終えて翌日だが積もった大雪の始末をしてからだを疲れさせている。読みかえしにつづいてモーリス・ブランショ『文学空間』もすこし読みすすめた。マラルメの「イジチュール」についての論述がつづくがどういうことを言っているのかだいたいわからない。核心部分、すなわちれいの自由意志的な死と主体にかかわることのない純受動的な死というはなしはいちおうわかって、品を変えつつそれをくりかえしているようなものだが、逆にいえばわかるのはそこだけで、その中核にもとづいて周辺に展開されるもろもろの記述はとらえがたい。読みながら太ももをよくほぐして、一〇時四〇分ごろからだを起こす。脛の側面とか足首のあたりを揉んでから椅子にうつって瞑想。しかしやはり左足がしびれて二五分くらいしかつづかない。きのう四〇分弱も座っていられたのはなんだったのか。とはいえ感覚はわるくない、まえにくらべると起き抜けからからだはかるくやわらかいし、座っていてもちからが抜けていく。肌をなめらかにして、しびれた左足をさすって麻痺を散らし、そうして食事へ。水切りケースに置いてあったパック米の空容器を鋏で切って戸棚内の袋に捨て、まな板と包丁、それに大皿を取ると野菜を切りにかかる。まな板は洗濯機のうえに置き、大皿はその左手の冷蔵庫のうえ、電子レンジのまえのせまいスペースに置いている。昨晩買ったキャベツをあらたにつかいだし、半分に切ったものの葉を剝いで細切りに。その他豆腐、サニーレタス、トマト。サニーレタスもリーフレタスもきのう行ってみるといぜん税抜で一五八円だったのが一七八円にあがっていたのだが、そのぶんなのかまえよりすこし嵩がおおきいような気はする。トマトは行った時点ではもうあまり良いのがのこっていなかった。ごま油&ガーリックドレッシングをかけ、そのほかツナの手巻き寿司一本や、メンチにナゲット。ウェブをみながら食し、食器を洗い(メンチカツなどにつかった木製皿だけは漬けておいてあとで洗った)、そうすると一二時半前だったとおもう。きょうは二時ちょうどくらいの電車で行かなければならず猶予はないが、やっぱり音楽聞いて心身をやしないたいなとおもったので聞くことにして、碧海祐人 [おおみまさと] 『夜光雲』をえらんだ。二〇二〇年一二月リリース。メロウそのものみたいなポップス。四曲入りのミニアルバムでぜんぶ聞いたが、二曲目と四曲目がより好みか。いま余裕がないのでこまかな感想はあとで書けたら。Bill Evans Trioの"All of You (take 1)"も聞いたがやはりすごい。クソを垂れてからここまで記すと一時一二分。
*
そのあとはワイシャツ一枚にアイロンをかけ、身支度をしてもう出るよう。一時四五分ごろに出発。部屋を出ると通路端から雲をまぶされた空に水色がみえ、あたりが晴れているのがわかる。階段を下りて道に出てみても路地には日なたが敷かれていて、そのなかを家の影がところどころ四角く突出している。すすんで公園ちかくに来ると園内をみとおしたさき、隣の建築現場から、淡い雲をかけられた空を背景に青緑色のクレーンが高々と伸び上がっているのが目をさそい、先端から垂れ下がったしたには黄色いフックがわずかに揺れて、公園内では滑り台に子どもたちが群れて遊び、こちらが通る縁の道には姉さんぶったような雰囲気の女児とまるこめ頭の男児がそれぞれ自転車に乗って、風がこずえにひびきを吐かせるなか、黄色やら黄緑やら老いてかわいた色の落ち葉が散らばったうえをあいまいにうろついていた。あたまを揺らす木にも濃緑のなかで黄色の点がおりおりのぞいている。陽射しは暑く、夏が一時出戻ってきたようなありさまだ。右折して西をむいても風呂にはいっているような漬けられかた、家のまえで鉢植えされているナスが、実はもうみえないが紫色の花をしなびたようにのこしているのをみやりながら路地を抜けて、渡るとまたはいった。すすむうちに先日も聞いたのだが、野良の白猫が無頓着な顔をしている小公園のそばで、どこか手近の家からリコーダーらしき合奏による旋律が漏れ出してきた。じっさいにそこで演奏しているのではなく、たぶん小学生の発表会かなにかを録った映像でもながしているふうにひびいたが、そのメロディにおぼえがあって、これ"心の瞳"じゃないか? となまえがあたまに浮かんできて、旋律はわかりやすい冒頭部分ではなくてもう終盤だったが、さいごにいたってまたメイン部分にもどったので、やっぱりそうだと確定できた。それでその後、「心の瞳で 君を見つめれば/愛すること それが どんなことだか わかりかけてきた」という冒頭部分をおもいおこしながら行ったのだけれど、これをじぶんが知っているのは中学校のときの合唱祭の選択曲のひとつだったからだ。じつになつかしい。合唱というのはすばらしい、文化のきわみである。合奏ももちろんよいけれど、声をあわせて歌うことはつねにいつだってすばらしい。じぶんは高校時代も文化祭より合唱祭のほうが好きだった。高一まではそうでもなかったが、高二になったころにはそれまでのギター練習やバンド活動によるものだろう、音感がきたえられていたので、それで俄然おもしろくなった。合唱祭、もういちどやりたいとおもうくらいだ。今後そういうグループに参加するのもよいかもしれない。(……)くんがなんかやっているらしいが。アパートだと歌をうたえないのがつまらないところだ。たまにはひとりカラオケにでも行ったほうがよい。
(……)駅に着くとホームから階段通路にはいり、反対側のホームへ。からだはやわらいでいるので腹のあたりをさぐっても緊張感はほぼ見当たらない。まったく変化がないとはいえないが、自己観察の習慣をもった者でなければぜったいに気づかないくらいのものだ。ホームにはいってすすみ、止まって立ち尽くすと、携帯とイヤフォンを出して、きょうはFISHMANSの『男達の別れ』でもながすかと決めた。冒頭をはぶいて"ナイトクルージング"からにしてしまったが、夜の語を冠した曲にもかかわらず、FISHMANSのこういう浮遊感は陽のかよってあかるく暑いが風もながれてさわやいだ、このときのような昼間にもよく似合う。目のまえの線路上では上下に二本セットでとおった電線のとちゅう、線のあいだを縦につないだ金具がひかりを凝縮させていて、目をこらせば風のうごきや熱のゆらぎでも大気中に見えてきそうな、そんなあかるんだ宙をながめながら、またそのあとは目を閉じて頬に涼しさを感じながら電車を待った。まもなく来る。乗ってつかの間、(……)で降りるときょうも乗り換えに間があるからひとつさきの口まであるき、そこから上って六番線へ。下りていくころには"なんてったの"がはじまっており、これもまたさらに昼下がりのあかるさに似つかわしい曲で、立ち尽くして瞑目に聞きながら乗り換え電車を待った。そのまえに(……)行きが来たときには、こちらの横にカメラをかまえた鉄道ファンがいて、やってくる電車の鼻面を待ちむかえており、こちらもその背や電車の正面を見つつ、ファンにとってはやっぱり電車によってそれぞれ表情があるんだろうなとおもった。さらにしばらく待つと(……)行きがやってきて、そのときには目をあけて来るのを視線でむかえていると、けっこうゆったりとした調子で入線してきて、車体側面のオレンジ色のラインのなかにはホームがうっすら白く映りこみ、まえを向けば待っているこちらや他人のすがたも影となって、ガラスや扉のへこみを難なく通過しながら車体上をながれていく。乗りこむと席はあまり空いていないので角へ。手すりを持って目を閉じ、立位に静止しながら音楽を聞いたりからだの感覚を受け止めたりする。緊張がやはりまったくないわけではなく、先日と同様で、問題はないがヤク二錠のちからがなければもっとめんどうなことになっているだろうというのがわかる。一錠でも行けなくはないのだろうが、すこし苦しくなるかなという印象。(……)だったかで目をあけると席が空いていたので座ったが、その後はやはりだんだんねむくなってきて首が折れた。(……)でもうイヤフォンをはずしてしまい、目を閉じながら到着を待つ。電車内でうごかずに過ごしてきたし、きょうも勤務前にちょっとあるいてからだをあたためておくかというわけで、周辺を一〇分ほどひとまわりした。街道から駅前にもどるとちゅう、角のてまえで右を向けば、奥にあるビルに大口ひらいて穴があけられており、距離はあるのにその粉塵か、こちらの顔のそばにもちらちらただよい過ぎるものがあって、マスクをはずしていたのでおもわず吸いたくないなと反応した。駅前のビルがついに解体途中で、角を曲がって脇を行けば白い壁がもうけられて権利とか法関連の表示があり、なかにはいっていた喫茶店の入り口も立入禁止の文字がみられて、上り階段になるその通路がいかにも暗く、荒涼とみえる。このビルはむかし、こちらが子どものころは(……)で、ポケモン金銀が発売されたとき(たしか小六だったか? とおもったが、調べてみると九九年だから小四のときだ)に、とうじ実家の向かいの木造屋に住んでいた(……)といっしょに(だったとおもうのだが)朝の開店前にならんで、開くと同時にいそいでゲーム売り場にエスカレーターをのぼっていったおぼえがある。しかしそのときはけっきょく買えなかったのだったか、それかなぜかほかのものに目移りしてべつのソフトを買ったんだったか、そんな記憶もあるがよくおぼえていない。
勤務。(……)
(……)
(……)
(……)
(……)
―――――
- 日記読み: 2021/9/14, Tue. / 2014/2/15, Sat.
―――――
Vivian Ho, Martin Belam and agencies, “Russia-Ukraine at a glance: what we know on day 203 of the invasion”(2022/9/14, Wed.)(https://www.theguardian.com/world/2022/sep/14/russia-ukraine-at-a-glance-what-we-know-on-day-203-of-the-invasion(https://www.theguardian.com/world/2022/sep/14/russia-ukraine-at-a-glance-what-we-know-on-day-203-of-the-invasion))
Zelenskiy said about 8,000 sq km (3,100 square miles) have been liberated so far, apparently all in the north-eastern region of Kharkiv. “Stabilisation measures” had been completed in about half of that territory, Zelenskiy said, “and across a liberated area of about the same size, stabilisation measures are still ongoing”. Ukraine now has set its sights on freeing all territory occupied by invading Russian forces.
*
However, the frontline in eastern Ukraine is approaching the borders of territory claimed by the self-proclaimed pro-Russian separatist Luhansk People’s Republic (LPR) according to Andrey Marochko, a senior LPR military commander.
*
Russia has probably used Iranian-made uncrewed aerial vehicles in Ukraine for the first time, Britain’s defence intelligence said on Wednesday, after Kyiv reported downing one of the UAVs – a Shahed-136 – on Tuesday. The device is a “one-way attack” weapon, the MoD said, and has been used in the Middle East. The shooting down of the drone near the frontline in Ukraine suggests that Russia is using the weapons as a tactical weapon rather than a strategic one targeting military installations deeper into Ukrainian territory.
*
Von der Leyen also sent a strong signal over European Union expansion, saying the European Union is not complete without Ukraine, Moldova, Georgia and western Balkan countries. “You are part of our family, you are the future of our union. Our union is not complete without you,” she said.