2023/2/17, Fri.

  結晶

 ぼくの唇に お前の口を探すな、
 門の前に 異郷者を、
 目の中に 涙を。

 七つの夜だけもっと高く 赤が赤へとさまよう、
 七つの心だけもっと奥深く 手が門を叩く、
 七つの薔薇だけもっと遅く 泉がせせらぐ。

 (中村朝子訳『パウル・ツェラン全詩集 第一巻』(青土社、一九九二年)、82; 『罌粟と記憶』(一九五二); 「逆光」)



The Ukrainian president, Volodymr Zelenskiy, will be the opening speaker on Friday at the three-day Munich security conference as the west faces urgent calls to speed up ammunition production and supplies to Kyiv in the face of mounting fears that Russia is planning a new offensive. The conference is expected to be attended by more than 100 world leaders, and diplomats, including the US vice-president Kamala Harris, and the event will be seen as a key test of the west’s resolve to fight out a grinding, prolonged, expensive war.

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Finland’s parliament will vote on 28 February to approve the necessary legislation that will allow the country to eventually become a member of Nato, Reuters reports the Finnish parliament’s head of foreign affairs committee said on Friday.

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Facebook allowed exiled Moldovan oligarch Ilan Shor with ties to the Kremlin to run ads calling for protests and uprisings against the pro-western government, even though he and his political party were on US sanctions lists.

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Russia launched a total of 36 air- and sea-based cruise missiles, guided air-to-surface missiles and anti-ship missiles at Ukraine overnight into Thursday, according to Ukrainian officials. At least 16 missiles were shot down by Ukrainian forces, the air force said. Among them, air defences in the south downed eight Kalibr missiles fired from a ship in the Black Sea, the officials said.

Zelenskiy has ruled out giving up any Ukrainian territory in a potential peace deal with Russia. In an interview with the BBC, Ukraine’s leader said conceding land would mean Russia could “keep coming back”. Zelenskiy said a predicted spring offensive had already begun but he believed his country’s forces could keep resisting Russia’s advance until they were able to launch a counter-offensive.

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Russia’s defence ministry said Ukraine had returned 101 prisoners of war to Russia following talks, state-run media reported. Andriy Yermak, head of the Ukrainian president’s office, said 100 troops and one civilian had been returned to Ukraine. Nearly all had been defending the southern city of Mariupol before it fell to Russian forces, he said.

Russia has “definitely changed tactics” by using decoy missiles without explosive warheads and deploying balloons to fool Ukraine’s air defences, according to a senior Ukrainian official. The goal of the decoy missiles was to overwhelm Ukraine’s air defence systems by offering too many targets, Mykhailo Podolyak, an adviser to Volodymyr Zelenskiy, told Associated Press on Thursday.

  • 往路。天気はきのうとおなじく無雲の晴れで、時刻は四時台。ふだんとはちがう道を取ろうという気になり、アパートを出ると右に路地を抜けて、(……)通りのほうから西に向かった。ちいさな公民館的施設を脇にそなえた公園の向かいには駄菓子屋があって、小学生がそこから出てきて道を横切り、公園にはいってなかまと合流する(公園縁の裸木が宙にひろげる枝ぶりのすきまは水色に満たされている)。地元ならまだしも、こんなところでも昭和の文化がまだ生きているとは、とおもった。(……)通りに当たると右に折れて小学校まえを行く。薄汚れたタオルがいちまい、歩道のとちゅうに落ちていた。そうして幹線と言ってよいのだろうか、最寄り駅の北側を東西にまっすぐ伸びる道路に出て、この時間ならまだひかりが射しこむのではと北側に渡って西進するところが、おもいのほか路上に日なたは生まれない。南側の建物がどれもけっこう高いから、太陽のすがたがさえぎられてしまうのだ。(……)通りとの交差地点まで来て横断歩道に止められて、左をみやればゆるく曲がりながら南下していく道路のむこうで、ビルが側面に(というのは車道に面したほうということで、そちらが西にあたるのだが)いっぱい西陽を受けてあかるませており、たいしてこちらからみた正面にあたる一面はまったくの陰となっている。そのくっきりとした明暗の分かれ、かつ日なた面のまっすぐでまっさらなあかるさによって、ビルの四角四面性や切り立ちの感覚が強調されるようだった。交差点まで来て止まるその直前には、対岸の建物のあいだに一部のみへこみがあって、そのなかに太陽がぽっかりはいって顔にまぶしい十数秒があったが、横断歩道まえではそれもかくれてしまう。空はやわらかに晴れ渡り、きのうのように不安はおぼえず、むしろすっきりとして落ち着いた気分だった。
  • 駅まで三〇分ほどしかかからなかったので、さいきんはあるくのがはやくなってきている。交差点を渡ってすすむ(……)通りは歩道沿いに飯屋なりなんなりいろいろな店屋がならんでいて、いろんなのがあるなあと横をたびたびみやったり、看板をみあげたりしながらあるく。やがて駅ビルである(……)の側面が、わずかにカーブする道のむこうにあらわれはじめ、すると太陽のひかりはその巨大な面にもびしゃっと投げかけられており、集束した白いかがやきが歩につれてだんだんと視界のおおくを占めていき、目をほそめさせるのだが、人類が生まれていらい文明がビルというものを知るまではこうした光景もなかったのだよなあとおもった。もっとも、岩壁などがそのかわりになってはいたのだろうが。原始のひとびとも切り立った壁面に巨大なひかりが衝突するさまにときに出くわし、目をうばわれていたのだろうか。
  • その(……)の側面まえをとおって駅へ。とちゅう、道端に若い男(かたほう金髪)がふたり立ってひかえており、通行人を観察するようにみていて、女性が来ると歩み出てチラシかなにかを渡そうとしていたが、詳細は知れない。美容室か?
  • 外出するまでは都立高校の数学の過去問を確認していた。寝床にあってはChromebookで、食後の机にあってはもうひとつのパソコンで。二〇二二年度、二〇二一年度と予習したがけっこうむずかしいわけですよ。とりわけ大問2いこうの各大問のさいごの問いは。じぶんの実力では初見でぜったいに解けないと断言できる。こんな手順おもいつく中学生ほぼいないでしょとおもうのだが、ただこんかいやっていておもったのは、たとえば大問4の平面図形のパートの最終問題などは、解への道すじをかんがえるというよりは、とにかく手をうごかしてこことここはおなじで、こことここは相似で、とわかる情報をかきあつめて、そうしているうちにつながるぶぶんや解へたどりつけるかもしれない道すじがたまさかみえてくるかもしれない、という感じだろうなと。あとは大問3や大問5も同様だが、五年分とか一〇年分とか解いていればだいたいこういう感じかなというパターンはつかめるだろう。大問3の最終問題は、とりあえずこたえるよう指定されているものを文字に置いて、それがだいたい座標のかたほうになっているので、関数式に代入して座標を文字式化してしまい、その他の座標も条件にしたがって文字式で置き換えたあと、そのなかから組み合わせて方程式にして解ける方法をさがす、という感じ。数学が得意だったり、偏差値の高い高校を狙う生徒たちは一〇年分解いたりとか、あとは似た問題の載っているテキストとかで演習しているのだろう。そうすればまあたしかにわりと解けるかなという気はする。
  • ちなみに数学の予習をしたのはこの日当たる予定だった(……)くんと(……)さんがどちらも数学の授業で、かつこのふたりは優秀なほうだから各大問の最終問をのぞいてはおおかたできるだろうというわけで、最終問を確認するのだったらとうぜん見ておかなければならないし、それいがいの問いでもやはり理解しておかなければこころもとないというわけだったのだ。二〇一八年度も、出るまでにぜんぶはみられなかったはずだが確認しておいた。というのも(……)くんは数学の授業が残り二回で、こちらとしては最新二〇二二年度と二〇二一年度をもういちどあつかうのがよいのではとおもっていたのだが、授業計画としては二〇一八年度をあつかうことになっていたので、ほんにんに聞いてみて一八年度をやりたいとなったらそちらにも対応できなければならないと、それでそっちもみておいた。で、じっさい一八年度をやりたいと言ったので、やはり準備しておいて正解だった。備えあればうれいなし。予習をきちんとやらないにんげんがどうしてひとにものをおしえることなどできようか? 会社はそれをもっとシステム的に厳格にするべきだとおもう。人件費の面でそうもいかないのだろうが。しかし、生徒をまなばせるだけでなく、講師にも勉強させてなにがしか知識をつけさせたり、良いおしえかたをかんがえさせたり、実力をみがかせたほうが良いではないか。教育事業のくせに自社の講師をそだてるという観点からの取り組みが希薄なのではないか。企業の社会的貢献というかんがえを知れ。生徒も講師も社員もおしなべてまなび、そだつことをめざすというコンセプトの教育事業会社をだれか設立しろ。
  • 行きの電車で(……)に着いたあと、すぐには降りず、数分だけだが手帳にメモを取っていた。ひさしぶりのこころみ。それもよい。帰りの電車内でも同様。勤務についてはめんどうくさいしよくおもいだせないのでだいたい省くが、(……)
  • 授業後、(……)さんに声をかけられて、翌日土曜の会議でこういうことをやろうとおもっているのだがと相談された。新年度のマニュアルというか、方針を決めるようだったが、新年度からは教材構成がまた変わり、(……)はそのままだけれどなんとかいうサブ教材があらたに出てくるのと、家庭学習用の教材も登場するという。あと「(……)」なるもの。サブ教材はまあしょうじきそんなにというか、出番があんまりなさそうというか、サブをつかうまえに基本はまず(……)ひとつを確実にせえよというのがこちらのかんがえなので、そうおもっていると、(……)さんもそのへんおなじかんがえか、あるいは汲み取ったようで、ふたつつかう必要ないですか? みたいなことを聞いてきたので、ひとつでいいんじゃないかと回答した。家庭学習用の教材というのはまたそれとはべつに冊子があって、もうそれに書きこませるかたちだという。あるいはノートをつかわせてもよいのだろうが、いずれにしても家庭学習をするにもべつにわざわざ新教材をつくる必要はないというか、そこは本質的な問題ではないはずで、そもそも生徒たちが家庭学習をみずからやるようなモチベーションをもたないという点こそが本質なのであって、新教材によってそれが解決できるかというとこころもとない気がする。まあ書き込み式のほうがやるには楽だというのはあるのかもしれないが、ただ家庭学習をなぜするかといったらとうぜんながら勉学における理解度や実力をあげたり、知識を習得したり、テストで良い点数を取ったり成績をあげたりすることが目的なわけで、冊子をいちど書き込んでやっただけでそれらの目的が充分に満たせるかといったらそんなはずもないとおもう。書き込み式の冊子でひとまず習慣がつくのだとしたら、それはよいかもしれないが。ただ、「やった感」で終わってしまう例もおおく生まれてくる気がするのだ。そもそも古来、勉学において教材をいろいろもちいるというのはたいていのばあい愚者の選択であり、教材がふたつあろうが三つあろうがそれらをじゅうぶんに活かせなければ実力と成長につながるわけがないのであって、基本的には、じぶんに合った教材をひとつえらんでまずはそれを隅までまなびたおせ、そこから吸収できることをもれなく吸収せよというのが、賢人のおしえる鉄則だったはずだ。それは大学受験時のはなしだが、中学校段階のふだんの勉学でもことはおなじである。ひとまずはメイン教材を隅まできちんと解けるという理解度や実力をめざすべきではないかということで(というかぶっちゃけたはなし、学校の教科書とワークでもそれなりの実力をつけるにはじゅうぶんなはずで、わざわざ塾が教材を用意してそれをつかう必要などほんとうはないはずなのだ)、それができない実力の生徒がほかに教材を用意されたところで、活用できるキャパシティをもっているわけがなく、どれも半端になってしまうに決まっているとおもう。だから会社がこういう新教材をつくるというのは、こちらの目からすると、売らんがための方策というか、本質的な点から目をそむけてなんとなくばくぜんと新味のあることをやってみたというだけのことで、そのなんとなくの新味に引かれて顧客のほうもなんとなく新教材を買ってくれるということを狙っているようにみえる。仮にもバイトさせてもらっている企業のことをめちゃくちゃけなすけれど、要はおためごかしの半端なしごとのようにしか見えず、真に生徒や保護者のことをかんがえて案じた方策のようにはじぶんにはどうもおもえない。だからといってべつにこちらのなかにオルタナティヴがあるわけではないのだが、すくなくとも生徒らはなんで家で自習しようとしないのかという、そこの理解を欠いてはこの問題の解決など望むべくもないはずで、それはたんにめんどうくさいやる気がでない勉強したくないという動機上の理由から、家庭環境的に家のなかで自習がやりづらいとか、部活やその他の活動などで意外といそがしくて余裕がないとか、個々人によってむろんいろいろあるはずだろう。そのへんの調査をアンケートなどでまずはおこない、情報をあつめなければ有効な対処のしようなどあるはずがないのであって、いちおうちゃんとした企業のはずだから教材開発部(という部署なのかどうかすら知らないのだが)だって家庭学習用の新教材をつくるまえにそういう調査をやらなかったのか? とおもうのだが、そのへんは不明だ。ただ仮にやったのだとしたら、その情報を現場であるわれわれのほうにもながして共有するべきだとおもう。それを参考にしながらこっちはこっちで個々の生徒にたいしてできることがいくらかあるはずなのだから。というか本社側がそういうことをやっていようがいまいが、うちの教室でも独自にそういう調査・聞き取りはするべきだとおもうし、じっさい授業中にたしょう聞いたり、あと室長が面談で聞き取ったりはしているが、それらの情報が職場内にうまく共有され、講師らがそれにもとづいておのおのはたらきかけをするようなことになっているかというと、じゅうぶんそうはなっていないわけで、なんにせよとにかく手を打つための情報が不足しているという印象。
  • (……)それもこちらにはよくわからないというか、そんなんでモチベーションあがる? やる気になる? ということで、そもそも勉学とは、もちろん他者とともにまなぶ、だれかに教えてもらったり教えたりする、そうした共同的な側面をはらむものでありながらも、しかしやはりその多くの時間と根本のぶぶんではじぶんがじぶんとしてひとりでおこなうべき営みではなかったのか。「友だちと勉強をする」と言って図書館や家庭にあつまった子どもらが、おおくのばあいけっきょく勉強などたいしてしないことは日常の風景がつねに証明しつづけているはずで、もっとも通有的な言い方をあえてするならば、勉学とはそもそも孤独なおこないであり、それこそ「じぶんじしんとのたたかい」であったはずで、その孤独と向き合うことをこそおしえずしていったいなにが教育だろう。まなびの共同性(それは制度的なものや歴史的なものもふくむ)はおのおのがその孤独をなじみぶかく知り、それに親しんでいるからこそ成り立つものなのであって、おのおのがおのおののたたかいをたたかっているということをたしかに知っているからこそ、勉学という営みにおいてあいてを尊重してたがいに協力できるのではないか。とまあそのような大仰な言い分は措いても、(……)
  • その他いちおう、手帳にメモされたことがらはあるのだが、めんどうくさいのでそれらは省略する。