三時五五分だ。スーパーへ行ってきた。雨が弱く降っている。部屋を出ると通路の端、階段のまえから手を宙にのべる。たしかに降っているのでちょうど閉じたとびらへともどり、靴箱の戸にかけてある傘を手に取る。階段を下りて道に出るとさっそくひらいて右へ。路地の出口から向かいへ渡る。左折して布団屋などのまえを通る。足取りはゆったりとして、からだにも安定感があった。つきあたるT字の横線の信号は青だったが、車がないので、横断歩道をすこしずれた位置でゆうゆうと渡る。豆腐屋のまえを過ぎて左折すれば道の向かいに公園がある。奥の一辺に沿ってならんだ梅は紅梅と白梅の合いの子めいた半端な赤みを雨に濡らして、あまり赤というかんじでもない。明度とぼしくにぶった代赭色などにちかいかもしれない。花が映えないのでうしろの家々なんかとあまり差を生まず浮かばずみえる。空が白曇りで湿った大気のうすくらいいろあいのせいもある。時刻を二時間ほどはさきどりしているたぐいのあかるさ。敷地端で道の目のまえにある白梅はきちんと白さを提示している。先日の夜の静止ぶりよりもわずかかたむいて、枝に乗った花にもすきまが生まれた気がする。いくつかの群れにわかれた繭のならびだ。すすむさきで電線工事をやっている。整理員が赤い棒をあやつって車の進行を管理している。道の左端をこちらは行って、電柱のうしろのすきまを抜ける。小学校の敷地のまえにちいさめのクレーン車が二台出張って、それぞれ首を伸ばしたさきの籠にヘルメットの作業員をひとりずつ載せていた。右側の籠の頭上には浜辺に立っているパラソルのひとり版じみた青い覆いがやや貧相な裏側をさらしている。H通りにあたる角で左に曲がる。小学校は下校のころだ。ランドセルの女児三人がまえを行く。横並びなのでこのさきの歩道を埋めそうで追い抜かすのがめんどうだとみる。それで歩道の入り口からわかれている裏の細道にはいった。障害者の就労支援をするような団体の建物があり、ちょっと目をやるとなかで車椅子のひとがなにか手作業をやっていたようだ。まもなく右手の一軒の二階から白衣の女性がばたんと出てくる。すこしいそいで階段をおり、一階のとびらにはいっていく。歩道に沿ってならんだ店店の裏手にあたる。建物は裏からみると黄土色の、二階が三角形のいくらか家っぽいかたちをしている。質感は古い。よどんだあかるさの路地でいきなり白衣に白帽のひとがあらわれたのですこし目をひいた。ここはたぶん歯医者だとおもう。路地を抜けて右折すればおもてに合流し、渡ってスーパー。まいにち外出する口実をつくるために必要なものをすべては買わない。そのほうがリュックサックも袋もかるくて楽だ。