2014/1/9, Thu.

 九時半に起床した。米、納豆、野菜スープ、菜っ葉とハムと卵を炒めたものを食べた。特に仕事から帰ってきて着替えたあとや風呂に入ったあとなのだが、ほとんど全身がかゆいといってもおかしくはないほどで、かゆみ止めや皮膚炎にういて検索してインターネットを逍遥していたらあっという間に十二時を過ぎていた。昨日買ってきたユースキンIは評判も上々のようで、実際使ってみてもかゆみ止めとしての効果が実感できる。部屋にはもうひとつ、あかぎれなどに効く黄色のユースキンAもあるのだが、これは祖母が常用していたもので床の間の机の上にいつも置かれていた。オレンジのふたを開けて手指に塗っていた祖母の姿を思い出す。
 Joshua RedmanCompass』を流しながらホメロス/松平千秋訳『イリアス』第四歌を読み、ガルシア=マルケス『族長の秋』を冒頭から七頁音読した。こんなにもすばらしい文章がどうやったら書けるのか。Bill Frisell『East / West』を流し、G・ガルシア=マルケス/高見英一他訳『落葉 他十二篇』を二四〇頁まで読んで午後二時をむかえた。
 晴れたり曇ったり空が忙しい日で、正午過ぎには陽射しが出てきたのでタオルをベランダに出したのだが、家を出るころには白雲が空一面を覆っていた。母が図書館に行くついでに送ってくれるというので貴重な運動時間を自らなくしてしまうのはまずいと思いながらも怠惰に負けて昨日と同じく車に乗った。帰りもちょうどよく電車の時間に合ったので徒歩をとらず、いよいよもって運動不足が極まっている。人間は歩かなくてはならない。
 マフラーをつけなくても余裕でやりすごせるような暖かい夜だった。電車が止まる寸前に一瞬の沈黙があった。人声も機械音も絶えたその瞬間には一日を終えた人々が放つ倦怠だけで車内が満たされた。刹那ののちには低く響く駆動音が復活し、点灯したドア横のボタンを押すと無機質な音が響いて扉が開き、静寂と密閉は破られ、よどんだ空気とともに疲労を顔にまとった人々が夜闇のなかに吐き出された。
 夕食をとって風呂に入ったあとに窪田章一郎『古今和歌集』(角川ソフィア文庫)の仮名序のみ読んでから日記を書いた。